シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

桜美林中学校

2022年02月掲載

桜美林中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.グローバルな現代社会で生き抜くための国際的視点を問う問題

インタビュー1/3

まずはこの問題の出題意図を教えていただけますでしょうか?

高下先生 この年のこの問題に限ったことではないのですが、本校の社会科で大事にしていきたいこととして、「今の社会で生き抜く力」を身に付けさせたいという思いがあります。小学校でいろいろな学びをしてきた子どもたちが、本校に入学したのち「社会を生き抜く強くたくましい人間」になってもらいたいと考えていますので、国際的な視点、他国や異文化を尊重する姿勢を身に付けていってほしいと考えたことが根底にあります。

中学受験において、子どもたちはさまざまな知識を身に付ける努力をしていると思います。ただ、知識の習得はとても大事ですが、将来社会を生きていく、国際社会に足を踏み入れていく可能性がある中では、心の成長やコミュニケーション能力といった「人としての部分」がとても重要になります。この問題においては、遣唐使の行き先の知識を知っていることはとても大事ではありますが「人間としてどういった性格や資質が求められるのか」について考えてくれると嬉しいな、という思いがありました。

遣唐使については日本人なら必ず習う問題だと思いますが、これまでこの設問のような切り口で考えさせられたことはなかったと思います。

森先生 試験での解答に関して、一面的なアウトプットだけではなく、様々な形式を取り入れることで、柔軟性を見ようとしています。現代社会を生きていくために、一つの方法だけを身につけても対応していくことは難しいと思います。いろいろな方法を身につけ、それぞれに合った方法で対応していくことが求められます。答えが一つとは限らない問題も出されています。それらを通して、樹が大空に枝を伸ばしていくように、受験生が自分の考えを広げていってくれるといいなと考えています。

社会科主任/高下 耕平先生

社会科主任/高下 耕平先生

ハイレベル・マニアックな解答は期待していない

高下先生 遣唐使とは何か、という基本的事項を学んでいる生徒は多いと思いますが、諸外国の情報を入手しにくい時代に、外国へ飛び込み国と国との間に入りながら「大役を背負う人間にどのような力が求められるか」という部分を聞きたいと思いました。どのような力があればよりよい交渉や外交が出来るのか、ということを考えてほしかったですね。小学校6年生なので、書いてくる内容にハイレベルでマニアックなところは求めていません。むしろ大人にはない柔軟な発想、新鮮な意見が聞けるのではないかな、という期待も含めて出題しています。

ここ数年出題される問題を見ていると、どの問題にも必ずスパイスが入っていると感じます。こうした問題において、子どもたちは何かしらの答えを書いてくれているのでしょうか?空欄は少ない方でしたか?

高下先生 学校説明会でも、「自由に書く問題があるので、自分の思うところを素直に書いてほしい」というメッセージは伝えています。そういうこともあってか、大人が思いつかないようなものだったり、模範解答として考えていなかったりするような「子どもの視点だからこういう意見が出てくるのか」というものはありますね。

どのような解答があったのでしょうか?

森先生 記述の問題答案は、その問題を作った人間が必ず目を通す形になりますが、解答としては「外国語が自由に話せる人」「外国文化に詳しい、関心のある人」、「勉強熱心の向上心のある人」といったものが多かったです。作問者として期待した「自国も相手国も相互に尊重できる人」、「正しく堂々と振る舞える人」、「命がけで使命を全うしようとする勇気ある人」などといった解答も見受けられました。

高下先生 「遣唐使というもの自体を知らない」「文章が途中で切れている」「よく分からない文章になっている」ものはNGとしていますが、当然遣唐使として派遣されていた人間がどういうキャラクターだったのかは私たちにも分かりませんので、内容面で×になっているものはありません。ただ、異文化・未知の場所で、場合によっては我々が優位になるための外交を進めていくために、どのような人間性を持っていれば叶え得るのか、という視点で捉えてもらうことが大切ではありましたね。

受験生はあれだけの分量の参考書やテキストに出ている知識を頑張って覚えているわけなので、遣唐使についてのシンプルな知識を問うような問題のほうが、子どもたちからすれば「やったことが出た」という感覚にはなるのかな、と思いますけどね。

期待された解答を見ると、ここでは人柄や性格を書いてほしいという思いがあったのですよね?

高下先生 今の小学生は、これから中学・高校・大学と成長していく中で外国人と接していくことも多いでしょうし、そこで必要となるコミュニケーション力は、この時代も今の時代もそれほど変わらないのではないかと思います。だからこそ今の子どもたちに考えてほしいと思った問題かもしれません。

桜美林中学校 チャペル前広場

桜美林中学校 チャペル前広場

社会性・話題性のある内容の問題を取り入れる

ここ数年は最後の問題が記述式というか、社会との接点を意識させるような問題が多いですよね。

高下先生 そうですね、最近はそのような傾向にあります。小学校が終わって塾に行って、という日々が続いている子は多いと思いますが、そういった子の目にも飛び込んでくるような話題性のあるものを題材にできれば、という思いはありますね。

中学校でも「これってどういうこと?」といった感じで発問したりする授業が多いのでしょうか?

高下先生 現在もコロナ禍でやりにくい部分はありますが、自分の考えをプレゼンしたり話し合いをしたりはしています。それをやるためには、まずは最低限の知識がないといけません。

12歳前後で受験に向けて国・算・理・社を学ぶわけですから、どうしても国・算がメインとなってしまって、社会は最低限の基礎知識を覚えるだけでいっぱいという子も多いと思います。そのため、覚えたことを評価してあげる問題も置いておくことが大切だな、という気はしています。

学んできた知識はしっかり評価してあげようという姿勢なのですね。

桜美林中学校 図書室

桜美林中学校 図書室

記述問題では自分の言葉で自由な意見を求めている

高下先生 ビジュアル的には公民が多いような感じも受けるのですが、どの分野にも偏らないようにはしています。丸暗記というわけではなくて、特に公民分野は考えてもらう問題を入れるように心がけてはいます。
記述に関してですが、用語を自分の言葉で説明できるようになる、というのは正解に結びつきやすいと思うのですが、それだけではなく、自分の発想・自由な意見を含めながら書いてほしい、ということですね。正解が1つに決まらないものの力も見ていこうという方針です。×を付けにくい問題は、その子のオリジナルな意見をぜひ聞かせてほしい、という思いは持っています。

記述式の問題はいつぐらいから出題されるようになったのでしょうか?

高下先生 自由な記述はここ最近増えてきたと思います。過去に遡れば遡るほどシンプルな用語説明が多いような気がします。子どもたちが日々生活しているような場面が舞台になっているような会話文にしてあげると、イメージが湧いて手も動かしやすくなるのかな、という気はします。

普段中学生を見ている先生方が小学生を対象とした問題を作るのは大変ですよね。内容はテキストなどから持ってくるのですか?

高下先生 当然小学校で使われる教科書も見ますし、塾などで使われる教材も参考にします。どういうことを勉強しているのかを少しでも触れておきたいと考えています。息子が中学受験の際に日能研にお世話になったこともあり、身近なところで何をやっているのかが見られると、情報収集や勉強になります。定期試験で正誤問題を良く出すのですが、実はそれが結構作るのが難しくて問題の細かいところまでここが違うのではないか、といろいろ思い始めることもあります。

インタビュー1/3

桜美林中学校
桜美林中学校キリスト教の伝道師であった清水安三・郁子夫妻が、中国の北京で最初に恵まれない子女のために創立した「崇貞学園」が前身。終戦後日本に戻り、1946(昭和21)年に桜の美しい町田の地に桜美林中学校を創立した。校名はかって清水安三が学んだアメリカ、オハイオ州のオベリン大学から取ったものである。現在は、大学院までの総合学園となり、留学生も多く、多くの施設のあるキャンパスに発展している。
建学の精神は「キリスト教主義に基づいた国際人の育成」であり、他者のこころに共感し、共に生き、文化や意見の異なる人々と心を通わすことができる人格形成を目指す。新しくなったチャペルでの週一回の礼拝と毎朝のクラスでの礼拝を大切にし、一人一人が自分と向き合う時間としている。
自主的に学ぶ姿勢が身につくように、授業を大切にし、中学では学習指導部、高校では進路指導部が6年間一人一人の学習力の向上を計っている。勉強合宿、高1からのコース制、英語、国語、数学の基礎力定着のための年5回のコンテストなどを通して、各人の夢が実現する力を養っている。その結果、最近は難関大学への合格実績が大きく伸びている。併設大内部進学率は例年約10%前後。
中学3年以上の自由選択科目にコリア語、中国語の講座もある。また外国人の教員が副担任やクラブの顧問をし、英語の授業の時だけでなく、日常的に異文化に触れるような環境になっている。中学3年での「オーストラリア研修旅行」は中学での英語教育の仕上げとして全員参加である。また高校2年では「平和学習」として沖縄に行く。姉妹校のあるオーストラリア、中国,韓国をはじめとする色々な国との交流も盛んに行われている。その他にも、林間学校、サマースクール、文化祭、合唱コンクールなど行事も盛んである。
クラブ活動は中学では吹奏楽部、文化部の一部は高校と中学が合同で活動をしていて、年令の違う生徒間の親交もできている。美術部は全国レベル、吹奏楽部も都大会などで活躍。
20歳の「卒業生による成人式」では卒業生が暖かい雰囲気の桜美林に戻り、共に礼拝を持ちオビリンナーとしての絆を深めている。
大きな吹き抜けのある校舎には、元気で明るい生徒の笑い顔が今日も満ちている。