シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

桜美林中学校

2022年02月掲載

桜美林中学校【社会】

2021年 桜美林中学校入試問題より

飛鳥時代から奈良時代にかけて中国の進んだ政治制度や文化を取り入れるために、航海の危険をおかして遣隋使や遣唐使が派遣(はけん)されました。

(問)遣唐使には、大国の唐や他のアジア諸国と外交をおこない、日本の国際的な地位を高めるという大きな責任がありました。
このように重要な任務をおこなう遣唐使に選ばれるのはどのような資質の人物だと思いますか。あなたの考えを自由に述べなさい。
※資質:生まれつき持っている性質や才能・身につけた能力

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この桜美林中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

例1 唐の言葉を話すことができ、唐や他のアジア諸国の人達とも親しく交流できる能力を持っている人物。

例2 他国の制度や文化に対する敬意と、それを積極的に学ぶ姿勢を持つと同時に、自分の意見や考えを相手に伝えられる能力を持っている人。

解説

遣唐使が「中国の進んだ政治制度や文化を取り入れるために」派遣されたことや、「大国の唐や他のアジア諸国と外交をおこない、日本の国際的な地位を高めるという大きな責任」があったことをふまえ、そうした目的や役割に必要な資質を考えるとよいでしょう。1つの資質について書くことも、答案用紙の範囲内でいくつかの資質をまとめて表現することもできます。

日能研がこの問題を選んだ理由

遣唐使に選ばれる人物の資質がどのようなものであるか、自分なりの考えを述べる問題です。車内ポスターは紙面に限りがあり、全てを掲載することはできませんでしたが、問題の前には10行ほどの文章があり、遣唐使が中国の進んだ政治制度や文化を取り入れるために派遣された人達だという情報があります。その上で、設問文に「外交をおこない、日本の国際的な地位を高めるという大きな責任」があったという情報もしめされています。これらの情報を使いながら、その場で自分の考えを答案用紙に表現します。また、「自由に」とあることから、解答が1つではなく複数の考え方があることが示唆されているとわかります。これらの出題形式から、知識の有無を試すにとどまらない、思考力を試す問題になっていると考えます。

ところで、中学入試の歴史分野では、「原因と結果」や「目的と手段」について文章記述を求める出題は多いのですが、この桜美林中の問題のように「あなたの考えを自由に述べなさい」という問いは、あまり見かけません。受験生たちは、この問題にどのように取り組んだのでしょうか。見なれない問いかけ方に驚きながらも、現代の外交官や、自分が使節として海を渡る姿を思い浮かべながら、この問題に取り組んだのではないでしょうか。歴史の学びは、ともすると「過去の話」として、学んでいる自分自身からの距離が遠くなりがちです。しかし、この問題はそうした過去のことがらを現代に重ねながら、歴史を自分ごとにして学べるしかけがなされているように感じます。

このような理由から、日能研はこの問題を□〇シリーズに選ぶことにいたしました。