出題校にインタビュー!
目白研心中学校
2022年01月掲載
目白研心中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.算数が楽しくて仕方がない、という子が受験したくなる入試を実施
インタビュー1/3
ルーブリックを設けて思考力・判断力を問う問題に
この問題の出題意図からお話いただけますか。
星野先生 算数特別入試は2022年度入試で2回目になります。この入試では本校の数学科が大切にしている3つの力を問いたいと考えて作問しています。1つは「知識・技能」です。それは計算力によって見ます。1つは「思考力・判断力」です。それはその場で考える力によって見ます。1つは「主体的に学習に取り組む態度」です。この入試を選んだ受験生はおそらく算数はおもしろいと思っているはずなので、それを伝えたり感じ取ったりしてもらえる問題を出したいという気持ちで作問しています。
今回取り上げていただいた問題は、3つの力の中の思考力と表現力を主に問う問題です。ルーブリック(採点表)を設けたことにより、受験生自身がこの解答でいいのかな、と考え、判断する力を問うこともできた問題になったのではないかと思います。
齋藤教頭 ルーブリックがないと、この問題がどういう配点になるのか。どのように採点されるのかがわかりません。採点表の中に「新たな条件を加えて作問している」という項目があることで、食塩水に水を加えてみようか、蒸発させてみようか、食塩を加えてみようかなど、発想を広げることができます。あるいは、自分で作った問題を解いている間にわけがわからなくなることもあるかもしれません。例えば、食塩水の濃度が80%のようなありえない数になってしまったときに加えるものの量を変えてみようなどの工夫もできるのではないかと思い、教科で話し合ってルーブリックを入れることにしました。そもそもルーブリックは、自分がどこにいるのかをわかりやすくするものです。今回はできなかったとしても、その採点表をもとに、次は何に気をつければいいのかをしっかりわかってもらう、自学自習の手助けにもなればいいと思いました。
数学科主任/星野 稔先生
算数特別入試で入学した生徒は数学にも意欲的
この問題は何点満点ですか。
齋藤教頭 20点満点です。ルーブリック1つ目の「言葉の利用」は全員がクリアしていました。一番得点の低い受験生は10点でした。問題づくりはほぼ完璧でしたが、自分で作った問題の答えを間違えていました。ですからルーブリックの「作った問題の解答」で2点減点となりました。
何名が受験したのですか。
齋藤教頭 20名が出願しましたが、実際に受験したのは3名でした。
この算数特別入試で入学した生徒さんはいますか。
齋藤教頭 1名います。その生徒は大問4だけでなく、次の大問5も満点でした。大問5は1から5までの5つの整数を1回ずつ使って、14ではないが14に最も近い数を求める式を、ルールをもとに作り、答えを求めるという問題でした。14に一番近くなければ満点を取れない問題で、その子は満点を取りました。入学後の最初の数学の授業で「私、何番目でしたか」と聞いてきたので「もちろん1番近かったよ」と答えました。その子はまだまだ荒削りで、計算を間違えることもありますが、「数学の授業が楽しい」と言って意欲的に取り組んでいます。そういう生徒に入学してほしかったので、算数特別入試を始めてよかったと思っています。
目白研心中学校 メディアセンター
ルーブリックを設けた別の一題も面白い問題に
大問5もルーブリックを設けていますね。
齋藤教頭 そうなんです。その問題も20点満点です。
配点が大きいですね。
齋藤教頭 入試体験会でも、別の数字を使って類似問題を出しています。ルーブリックもサンプルをホームページに掲載していました。
星野先生 この問題は、他の問題が全部終わっても、試験時間いっぱいまで近い数を探し続けることができるので、それが面白いのではないかと思いました。
齋藤教頭 例えば、高校で学習するsin1°は約0.0175でかなり0に近い数です。「それを知っている受験生がいて、入ってきてくれたらすごいね」と話していました。
星野先生 電卓のルートのボタン押してみる、ということをしている子は知っているかもしれません。電卓を持ち込んでそれをやれたら面白いなと思っています。いろいろあってできていませんが、アイデアは豊富に持っています。
こうした問題を作るのは楽しいですか。
星野先生 そうですね。少し常識的なところから、こんなことはありえないだろうというところまで一旦広げて会議に出します。それをたたき台に「どうしようか」と、みんなでわいわい話し合って整えていきます。
齋藤教頭 本校では「2科・4科入試」以外に「次世代スキル入試」「英語スピーチ入試」「算数特別入試」を行っていますが、出願者数は「算数特別」が一番多いです。今年はもう少し増えてくれたらいいなと思っています。
受験生は文章題を作る力を持っている
この問題の解答例を教えてください。
齋藤教頭 「食塩水300gに濃さ8%の食塩を入れる」「 gになって、混ぜると濃度5%が含まれる。その場合の を答えなさい」「濃度8%の食塩水に gを混ぜると、濃度は何%になりますか」「それに食塩10gを加えたら、濃度は何%になりますか」「 と、容器の中は何%の状態ですか」などです。満点を取った受験生は「濃度8%の食塩水が300gあります。水を何gか混ぜると濃度が5%になりました。それから水80gを蒸発させたら何%の食塩水になりましたか」という問題を作りました。
本当にわかっていないと問題として成立しません。そこまでできるのはすごいですね。
齋藤教頭 例えば「濃度8%の食塩水が300gあります。弟は家を8時10分に出ました」など、提示された言葉は使っていますが、まったく問題に関連していない…。そんな悪知恵を働かせる解答があったらどうしようか、とも考えました。その対策として、採点項目の1つに「言葉の関連」を入れたのですが、そういうことを考える受験生はいませんでした。
受験生の解答は、先生方が予想されていたものと近かったですか。
齋藤教頭 私たちが想像したものとは、良い意味で違っていました。受験生はきちんと文章題を作れるんだ、というのが、私の第一印象です。
目白研心中学校 賞状・トロフィー
「算数特別」は算数を愛してやまない子に受けてほしい
どのような受験生が、算数特別入試を受けていますか。
齋藤教頭 学校説明会では「算数を愛してやまない子に受けてほしい」と話しています。問題を作業的に解くのではなくて、考えることが好きな子ですね。
いいですね。
齋藤教頭 算数が好き、ではなく、好き以上の気持ちを持っているということを恥ずかしげもなく言える子に受けてほしいと思っています。
今回、受験した3名は男子ですか。
齋藤教頭 男子2名、女子1名が受験して、女子が入学しました。その子は、授業が終わると必ず僕らのところに来て、「今日、私はこう解いたのですが、これではダメですか」というような質問をしてきます。「その解き方でもいいんだよ」というように返しています。
「算数特別入試」により、先生方が思い描いていたような生徒さんが入って来てくれた、ということですよね。
齋藤教頭 そうですね。
目白研心中学校 カフェテリア
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