シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

目白研心中学校

2022年01月掲載

目白研心中学校【算数】

2021年 目白研心中学校入試問題より

(問)「食塩水300g」「濃度8%」「混ぜると濃度5%」の言葉をすべて使い、算数の問題を一題作りなさい。
また、作った問題の答えを途中式も含めて答えなさい。

採点表 0点 2点 4点
与えられた言葉の利用 無回答である 一部利用している 全て利用している
言葉の関連 無回答である 問題に関連していない 問題に関連している
問題の成立 無回答である 作った問題が成立していない 作った問題が成立している
作った問題の解答 無回答である 求めた答えが間違えている 求めた答えが正解している
新たな条件 無回答である 新たな条件を加えて作問している

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この目白研心中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

【問題】
濃度□%の食塩水300gに濃度8%の食塩水100gを混ぜると濃度5%の食塩水になります。□に入る数を求めましょう。

【式と答え】
100×0.08=8(g)……濃度8%の食塩水に含まれる食塩の重さ
(300+100)×0.05=20(g)……濃度5%の食塩水に含まれる食塩の重さ
20-8=12(g)……濃度□%の食塩水に含まれる食塩の重さ
12÷300×100=4(%)

解説

濃度の問題では、例えば次のような様々な操作を行う場面が設定されます。

  • 食塩水に水を加える。
  • 食塩水に食塩を加える。
  • 2つの食塩水を混ぜる。
  • 食塩水を加熱する。
  • 食塩水に水を入れるつもりが食塩水を入れてしまう。
  • 2つの食塩水が入った容器A、Bがあり、AからBへ何gか移し、その後BからAへ何gか移す。
  • 2つの食塩水が入った容器A、Bから同じ重さの食塩水をくみ出し、Aからの分をBに、Bからの分をAに同時に入れ替える。
  • 食塩水が入った容器に一定の割合で水を加える。

この問題では、上記に示したような様々な操作の中から「食塩水300g」、「濃度8%」、「混ぜると濃度5%」の3つの言葉を上手く使えそうな場面を設定し、問題を作ります。
これら3つの言葉を使い、解答例以外に例えば次のような問題を作ることができます。

<食塩水に水を入れるつもりが食塩水を入れてしまう>
【問題】
濃度8%食塩水300gに水を入れて、3%の食塩水を作るつもりでしたが、あやまって水のかわりに、入れる予定だった水と同じ重さの濃度□%の食塩水を入れてしまいました。あわてて水を100g入れてよく混ぜると濃度5%の食塩水ができました。□に入る数を求めましょう。
【式と答え】
300×0.08=24(g)……濃度8%の食塩水に含まれる食塩の重さ
水を加える予定だったので、水を入れる前後で食塩水に含まれる食塩の重さは変わらない。
24÷0.03=800(g)……作る予定だった濃度3%の食塩水の重さ=濃度8%の食塩水と濃度□%の食塩水の重さの合計
(800+100)×0.05=45(g)……濃度5%の食塩水に含まれる食塩の重さ
45-24=21(g)……濃度□%の食塩水に含まれる食塩の重さ
21÷(800-300)×100=4.2(%)

<食塩水が入った容器に一定の割合で水を加える>
【問題】
濃度8%食塩水300gが入っている容器があります。この容器に毎秒5gの割合で水を入れました。しばらくして水を止め、よく混ぜると濃度5%の食塩水ができました。容器に水を入れた時間は何秒でしたか。
【式と答え】
300×0.08=24(g)……濃度8%の食塩水に含まれる食塩の重さ
水を加えるので、容器内の食塩水に含まれる食塩の重さはずっと変わらない。
24÷0.05=480(g)……水を止めた後の容器内の食塩水の重さ
(480-300)÷5=36(秒)

日能研がこの問題を選んだ理由

提示されている3つの言葉をすべて使い、算数の問題を作ります。しかし、この問題はただ問題を作るだけではありません。なんと、問題文の後に採点表があります。子ども達が作った問題や解答を、この採点表に沿って出題者が採点すると思われますが、このような採点表を、試験中の子ども達と共有することはとても珍しいことです。

これを見た子ども達はどう思ったのでしょうか。「与えられた3つの言葉は正しく使わないといけないな」「言葉の関連って何だろう」「新たな条件ってどんなものを入れたらよいかな」……。残りの時間を気にしつつ、どんな問題を作ろうか吟味する子、解答を間違えないようにオーソドックスな問題にする子、先生方を驚かせようと工夫する子、今まで学んできたことがこの作問を通してわき上がり、悩みながら取捨選択する子もいたことでしょう。

採点表という出題者が持つ情報を子ども達と共有するこの問題は、子ども達の力や個性、気づきを引き出すことができる新しい形の入試問題といえるでしょう。また、入試の後も「こうしたらもっと面白い問題になりそう」「他の子はどんな問題を作ったのかな」と考え続けたり、他の子の解答から刺激をもらいたくなったりする問題でもあります。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。