シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

市川中学校

2022年01月掲載

市川中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.本質を見抜く論理的思考力を試す

インタビュー2/3

本質を見抜くには推理力、読解力、知識が必要

長山先生 本校の理科の入試問題では、基礎知識がきちんと身についているかどうか、観察・実験の結果から考察して本質を見抜く論理的思考力、及び相手に伝える表現力を見ています。

本質を見抜くには科学的な推理力が、推理するには情報を読み取る力が必要になりますね。

長山先生 それに基礎知識が加わることで、推理する力、そして本質を見抜く力につながります。最低限の知識がなければ推理することができません。
知識を定着させるには問題を繰り返し解くこと。個人的にはインプットとアウトプットを1対3ぐらいの割合で行うと、地力がついてくるかなと思っています。これは自分自身の経験でもあります。
教科書のポイントのところをマーカーで線を引くのはいいのですが、それだけでは知識を自分のものにするには難しい。本当にわかっているのか、知識を使えているか、問題を解くときにも、ふり返ってみましょう。

市川中学校 展示物

市川中学校 展示物

豊富な読書量はリード文の読解に生きる

貴校の問題を見るとリード文が長い印象です。会話形式のリード文もありますが決して短くなく、読む力が求められる問題だと感じます。

長山先生 理科でもリード文が長い問題を出しています。読むことを面倒くさがらないでほしいですね。
読解力は読書量と相関関係にあると思います。読書に親しんでいる受験生は、リード文が長くても抵抗感なく読めて、内容が頭に入りやすいのではないでしょうか。長いリード文は大学入試でもあるので、読書の大切さは生徒によく伝えています。

小説で描かれている現象について考える問題も

素材選びはどうされているのですか。

長山先生 授業中の生徒の反応から「小学生はどう考えるだろう?」と思って作ることもありますし、自身の体験から作問することもあります。私は生物部の引率で佐渡へ行った経験から、トキを題材に作問したことがあります。

地学の問題は『小説 天空の城ラピュタ』の文章を読んで、描かれている気象について聞いています。小説から理科の問題を作るというのはユニークな試みですね。

長山先生 作問者が「物語から出題したい」という強い思いがあったようです。

小説はフィクションですが、その描写は科学的事実に基づいています。リアリティーがあるから引き込まれるのだと思います。小説が科学に興味を持つきっかけになるかもしれませんね。

市川中学校 理科実験室

市川中学校 理科実験室

実験しているかどうかは答案に表れる

受験生の答案から何か気づくことはありますか。

長山先生 中1・中2がつまずくところは受験生にも当てはまります。そうしたところは中学入試で意識して出題しています。例えば、物理の電気回路や化学の濃度の計算問題などです。
実験の手法を聞くと、実際にやっていないことが答案からうかがえます。一度でもその操作をしたことがあれば少しは頭に残っていると思いますが、経験のない丸暗記では間違えやすい。
入学後の生徒を見ると器具の扱いに慣れていないのがわかります。こればかりは実験を繰り返して体で覚えるしかありません。

知識問題は取りこぼさずに得点したい

基礎知識はしっかり身についているでしょうか。

長山先生 それが、「100%正解してくれるだろう」という“ボーナス問題”でも、正解率が85%程度ということがあります。各大問の最初の設問は、ボーナス問題のつもりで出しているので、確実に得点できるようにしましょう。
例えば、昆虫のからだの特徴の問題は、思ったほど正答率はよくありませんでした。羽の枚数が2枚か4枚か、どちらのものが多いのかで迷ったと思われます。この問題を間違えるということは、実際に昆虫を触ったことがないのでしょう。虫取りの体験があれば難なく正解できたと思います。経験が知識の定着に役立ちます。

市川中学校 掲示物

市川中学校 掲示物

大問数を減らしてじっくり考えてもらう

長山先生 2019年入試から、大問の数を7~8題から4題に変更しました。1つのテーマにじっくり取り組んでもらうのがねらいです。それまでは「問題数が多すぎる」という声がありました。大問が多いとテーマが変わる都度、頭を切り替えなければなりません。
問題にしっかり向き合えるようにすることで、本校が求めている「本質を見抜く力」がより問えるようになったと思います。受験生もがんばって答えてくれています。

インタビュー2/3

市川中学校
市川中学校1937(昭和12)年、市川中学校として開校。47年、学制改革により新制市川中学校となる。翌年には市川高等学校を設置。2003(平成15)年には中学で女子の募集を開始し、共学校として新たにスタート。同時に新校舎も完成させた。女子の1期生が高校へ進学する06年には高校でも女子の募集を開始。昨年4月には校舎の隣に新グラウンドが完成。2017年には創立80周年を迎えます。
創立以来、本来、人間とはかけがえのないものだという価値観「独自無双の人間観」、一人ひとりの個性を発掘し、それを存分に伸ばす「よく見れば精神」、親・学校以外に自分自身による教育を重視する「第三教育」を3本柱とする教育方針のもとで、真の学力・教養力・人間力・サイエンス力・グローバル力の向上に努めている。
効率よく、密度の濃い独自のカリキュラムで、先取り学習を行っていく。朝の10分間読書や朝7時から開館し、12万蔵書がある第三教育センター(図書館)の利用などの取り組みが連携し、総合して高い学力が身につくよう指導している。中学の総合学習はネイティブ教師の英会話授業。2009年度より、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校となる。授業は6日制で、中1、中2の英語7時間、中3数学7時間など主要科目の時間数を増やす。ほかに夏期講習もあり、中1・中2は英・数・国総合型講習を実施。高校では、高2で理文分けし、高3ではさらに細かく選択科目等でコースに分かれて学ぶ。授業の特徴としては、インプット型の学習で基礎力を育成するともに、SSHの取り組みとして、研究発表、英語プレゼンなどを行う「市川サイエンス」、対話型のセミナーである「市川アカデメイア」、文系選択ゼミの「リベラルアーツゼミ」といった発表重視のアウトプット型の授業展開を実施している。自らの考えを相手に伝える表現力を、論理的に考え、それを伝わりやすい文章で表現するスキルとしてアカデミック・ライティングといい、「読めて、書ける」を目指し「課題を設定する力」、「情報を正確に受け取る力」、「それを解釈・分析する力」、「自分の考えをまとめ・伝える力」を育てる。
高1の各クラスごとに3泊するクラス入寮は創立当時から続く伝統行事。クラブは中高合同で活動する。行事は体育祭、文化祭のほか、自然観察会、合唱祭、ボキャブラリーコンテストなどもある。夏休みには中1、中2で夏期学校も実施。中3でシンガポールへの修学旅行を実施。また、希望者を対象にカナダ海外研修(中3)、イギリス海外研修(ケンブリッジ大学、オックスフォード大学中3・高1)、ニュージーランド海外研修(中3・高1)、アメリカ海外研修(ボストン・ダートマス高1・高2)が実施されている。生徒のふれあいを大切にしているが、カウンセラー制度も設けて生徒を支えている。