シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

市川中学校

2022年01月掲載

市川中学校【理科】

2021年 市川中学校入試問題より

バッタは身近な昆虫(こんちゅう)の一種です。草原や田んぼなどでは、食物連鎖(しょくもつれんさ)でつながった生態系の一員として、古くから人々に親しまれてきました。一方、ある環境(かんきょう)で大発生し、蝗害(こうがい)という災害を起こすこともあります。
2020年前半、サバクトビバッタ(トビバッタ)がアフリカで大発生し、多くの地域に被害(ひがい)をもたらしたことが話題となりました。(略)トビバッタの成虫は、1日で自分と同じ体重に近い量のエサを食べます。通常は単体で活動する「孤独相(こどくそう)」とよばれる形をしていますが、大発生したときには「群生相(ぐんせいそう)」とよばれる形をとります。この変化は、言わば「密」という環境をさけるための適応である、と考えられています。

(問)次の(A)と(B)は、一方が群生相で、他方が孤独相のトビバッタです。群生相は(A)・(B)のどちらですか。また、群生相は孤独相に比べて、どのような能力が高いといえますか。下線部をふまえて、簡単に説明しなさい。

問 バッタ

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この市川中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(記号)B
(能力)より遠く広い範囲まで飛んでいくことができる能力

解説

まず、文章中に示されているトビバッタについての情報を整理してみましょう。

  • トビバッタの成虫は1日で自分と同じ体重に近い量のエサを食べる。
  • トビバッタは、通常は単体で活動する。単体で活動する個体の形を「孤独相」という。
  • 大発生したときには「群生相」という形をとる。群生相という形に変化するのは、「密」の環境をさけるためである。

ここで述べられている「密」とは、まわりにたくさんのトビバッタがいる状態と言い換えることができるでしょう。大発生したときには、十分なエサを確保するために、広い範囲を移動する必要があると推測できます。
AとBのトビバッタの図を比べると、Aは後ろ足が長く跳ねるのに適したすがたをしていますが、Bは体の大きさに対して羽が長く、飛んで移動するのに適したすがたをしています。したがって、Bの方が、個体どうしの距離をとって「密をさける」ことに適していると考えられ、Bが群生相であると判断することができます。

日能研がこの問題を選んだ理由

2020年、東アフリカでサバクトビバッタの大量発生が報告されました。バッタの群れは中東や西アジアにも飛来し、各地で農作物を食べつくし、甚大な被害が発生したことも話題となりました。この問題では、文章や図で示されたトビバッタについての情報をもとに、群生相(大発生したときのトビバッタのすがた)を表す図と、孤独相(単体で活動するトビバッタのすがた)と比べて群生相がどのような能力に長けているのかを推測していきます。

子どもたちは、問題に示された文章や図を読み取りながら、通常のトビバッタと、大発生したときのトビバッタに関する情報を手に入れていきます。複数の情報を結びつけることによって、群生相はどのような体のつくりをしているのか、体のつくりと能力にどのようなつながりがあるのかを明らかにしていきます。

この問題に取り組むことによって、子どもたちは初めて出あう情報を結びつけながら、未知のことがらを筋道立てて推測する過程を体験することができます。また、人間の生活が、環境の変化や生物の生活の仕方の変化に影響を及ぼすことに気づくきっかけとなり、生態系についての興味・関心を持つことにもつながるでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。