シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2021年11月掲載

浅野中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.勉強の成果を発揮できる問題づくり

インタビュー2/3

分野・難易度・計算量のバランスを意識

入試問題の作問に際し、どんなことを意識されていますか。

奥野先生 分野、難易度、計算量という3つの軸のバランスを取るよう意識して、50分の入学試験としてふさわしいかどうかを分析しながら作問しています。
分野が偏らないようにまんべんなく取り組んでいれば、得意・苦手はあっても、「勉強したところは出た」と思ってもらえるように心がけています。
典型的な問題からやり応えのある問題まで、難易度に幅を持たせるように配慮しています。また、初見だろうと思われる問題をいくつか出すようにしています。解いていておもしろいなと思ってもらえることも意識しています。
受験生が懸命に勉強してきたことを入試当日に十分に発揮できること、その感触を得て納得して試験を終えてもらえることを第一に考えています。

德山先生 そうした問題は、受験生は四苦八苦するかもしれませんが、過去問としてはおもしろいと思ってもらえるのではないでしょうか。
日常の「なぜ」という疑問をやり過ごさずに探究する、コツコツ学習するお子さんに入学していただけるとうれしいですね。努力することを惜しまないでほしいと思います。

入試広報部部長/德山 直先生

入試広報部部長/德山 直先生

解答欄は答えのみ。計算間違いに気をつけて

受験生の計算力についてはどのように見ていますか。

奥野先生 計算が難しい問題をいくつか出しています。すべて難しくしてしまうと、発想力があっても計算力がないばかりに不合格になってしまいかねません。それは避けたいので、計算の難易度は作問しながら調整しています。
本校の解答はほぼ答えだけを記入する形式です。解く過程を見ることができないので、計算間違いをしないように気をつけましょう。

試験中の受験生の様子はいかがですか。

奥野先生 試験時間ぎりぎりまで取り組んでいるということは聞きます。

德山先生 私が算数の試験監督をしたときは、最後の最後まで粘り強く取り組んでいましたね。他の教科もあまり余裕はないと思いますが、特に算数はがんばっている様子がうかがえます。

普段から「よく考える」習慣をつけよう

奥野先生 典型的な問題は確実に得点できるようにしましょう。一方、「これはどういうことだろう?」と気になったことは、深く考えてもらいたいですね。正解できたからそれでよしではなく、正解できたけれど、これでよかったのか立ち止まって考えると理解が深まると思います。
中学になると、証明問題など考えなければ解けない問題が多数あるので、考えることに徐々に慣れていきます。小学生のうちから考える習慣がついていれば、中学に入ってからの数学も取り組みやすいでしょう。

証明問題が解けるということは、論理的な思考ができるということです。また、他者に説明ができるということは全体像を理解していると言えます。説明するための表現力を試す問題が証明問題というわけです。
そうした力は、問題の構造をとらえる力、論理の順を追って説明する力につながり、大学入試につながります。そうした素養のあるお子さんに入学してほしいですね。いきなり身につくものではないので、日ごろから「よく考える」ことを意識してほしいなと思います。

図書館「清話書林」

図書館「清話書林」

設問文を丁寧に読めばヒントが見つかる

奥野先生 難易度が高い問題は設問で考え方を誘導しています。その誘導にうまく乗ることができれば、何とか取り組めると思います。誘導に乗り損なうことがないように、設問文はできるだけ簡素になるように心がけています。
きちんと読んでくれれば意図がわかるようにしているつもりですが、誘導に乗れないというのは、入試の緊張感で落ち着いて読むことができないのかなと思います。受験生は設問にヒントがあると思って取り組んでほしいですね。

德山先生 無理難題は突きつけていません。身構えずに誘導に乗ってほしいですね。考える足がかりになるヒントがあるはずだと思って、設問文はていねいに読むようにしましょう。

奥野先生 入試で「落ち着いて」というのは難しいと思いますが、算数でも長めの文章が多くなっているので、普段から「きちんと読む」ことも意識してほしいと思います。

グラウンド

グラウンド

算数でやってきた工夫は数学でも生きる

奥野先生 算数と数学の違いは、数学は正しく論理を進める力、きちんと説明する力が求められること、算数より数学の方が“道具(文字や関数など)”が強力なことが挙げられます。道具を使うと工夫することなく答えが出てしまうため、算数であれこれ工夫したことを忘れてしまいます。
ところが、数学は問題が複雑になると、具体化して想像したり、見方を変えたりすることをします。そのとき算数で培った力が必要になります。小学生の頃に育んだ見通しをよくしようとする考え方は、高校の段階で必ず役に立ちます。頭の使い方は算数も数学も同じではないかと思います。

インタビュー2/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校からの募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。「九転十起・愛と和」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と「勝利の冠」である「月桂樹」から形作られており「若者の前途を祝福する」意味が込められている。
横浜港を見下ろす高台にある約6万平方メートルの広大な敷地の約半分を「銅像山」と呼ばれる自然林が占めている。Wi-Fi環境が整い、中学入学後に購入するChromebookで授業や行事、部活動を展開している。2014(平成26)年には新図書館(清話書林)、新体育館(打越アリーナ)が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝とし、施設面が充実している。
中高6年間一貫カリキュラムを通して、大学受験に対応する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。中学の英語では週6時間の授業に加えて、毎週ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業もある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。高校2年から文系・理系のクラスに、高校3年では志望校別のクラスに分けてそれぞれの目標に向けた授業を行う。進路選択は本人の希望によるが、理系を選択する生徒の方が多くなる傾向がある。全体的にハイレベルな授業が展開されているが、高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、宿題・小テスト・補習・追試・夏期講習などを行い、授業担当者が細かく目を配っている。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
「大切なものをみつけよう」ーこれは学校から受験生へのメッセージ。生徒にとって学校は、一日の内の多くの時間を過ごす場所。勉学に励むことはもちろん、部活動や学校行事にも積極的に参加して、その中で楽しいこと、嬉しいこと、悔しいことや失敗をすることも含めて多くのことを経験してもらいたいと考えている。学校でのそのような経験が、学ぶことの意味、みんなで協力することの大切さと素晴らしさ、生涯、続いていくような友人関係、そして、決して諦めない強い心を育んでいくことになる。浅野中学校、高等学校という場を思う存分活用して、人生において大切なものをたくさん見つけ、成長してほしいとの願いが込められている。
部活動と学習を両立させる伝統があり、運動部の引退は高校3年5~6月の総合体育大会、野球部は甲子園予選までやり通す。中学では98%の生徒が部活動に参加している。ボクシング、化学、生物、囲碁、将棋、ディベート、演劇が全国レベル。柔道、ハンドボールやサッカーも活躍している。また、5月の体育祭と9月の文化祭を「打越祭」として生徒実行委員が主体となって運営する。これをはじめ、学校行事も盛んで生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。
「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーコースとして運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。また、各学年のフロアに職員室を配置してオープンにすることで、生徒と学年担当の先生が日常的に対話を行っている。こうしたメンタルケアにも力を入れている。