出題校にインタビュー!
フェリス女学院中学校
2021年11月掲載
フェリス女学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.創立150年あまり。学校の歴史から学べることが本校の誇り
インタビュー3/3
理系では工学部志望も。進路の幅が広がっている
理科分野で活躍する卒業生の方もたくさんいらっしゃるのでしょうね。
先生 ジュネーブ(スイス)にある欧州原子核研究機構(CERN)に2人の卒業生がいることがわかりました。大学は別だったのですが、同じ学年の生徒が偶然そこで一緒に働いているという話を聞きました。世界各国で活動している人たちがいるのも、自分で調べて行動するという精神が根づいているからだと思います。
理系に興味をもつきっかけとして1つ言えることは、高校1年生まで生物、地学、物理、化学の基礎をしっかり学び、高校2年生から選択科目になる、ということです。授業を緩やかに進めているため、最後に文系理系を選ぶ際にどちらも選択できる可能性があります。
また、進路については理系の数が増えているというよりも、理系の幅が広がっていると思います。10年20年ぐらい前は薬学部、医学部など、理系といっても化学や生物に限られていたのですが、今は医学部もいますが工学部を選ぶ生徒もいて、学部が広がっています。文系も同様で、以前は文学部が中心でしたが、今は経済学部や法学部など、いろいろな学部を選んで進学しています。
個人的には無理に専門分野を狭めて大学に行く必要ないと思っています。土台がしっかりできていれば、どの分野に進もうともそこからまた興味のある方向に進めばいいので、我々がやることに変わりはないと思っています。

フェリス女学院中学校 授業風景
他教科の先生同士が関心をもって関わり合う環境
「いろいろなところから情報を得て、つなげて考えることを大切にしてほしい」というアドバイスをいただきましたが、貴校ではどのように養っていますか。
先生 例えば、先ほどの広島研修旅行などもそうなのですが、担任している先生の中には国語の先生もいれば社会の先生もいます。4クラス、副担任も入れて5人のチームで学年を運営しています。生徒は毎日クラス日誌みたいなものもを書きますから、お互いに何をやっているのかが見えているのではないかと思います。
ですから、あえてクロスカリキュラムのようなものをやらなくても、自然と同様のことができています。何かをやる時に、一応主催する教科あるのですが、その教科の先生だけでなく、他の教科の先生も自分はどういうところで関われるのかを考えたり、アイデアを出したりして一緒に作っています。
生徒は、いろいろな授業をいっぺんに受けているので、自然とつなげて考えることができていると思います。ですから教える側は、生徒の頭の中で起きている状態を想像して、意識して授業をするとおもしろくなります。生徒もこの教科の勉強だ、というよりは、例えば広島のことであれば原爆について知りたい、その後被爆者の方がどのようになったのかを知りたい、という思いがあって話を聞きます。その結果、どのように変容していくのか、を表してもらったのが先ほどのマインドマップです。
ポートフォリオ的な蓄積があるといいかもしれないですね。それがあれば生徒自身も、自分はこういう勉強をしてこういうふうに変わっていったということが分かります。学校としてまだできてないのですが、大学入試とは関係なく、学習の記録として残すということができるといいと思います。ICTでできると思います。

フェリス女学院中学校 図書館
コロナ禍だから、できることもあった
先生 今年は9月が在宅が中心でした。登校日は週1回程度。あとはオンラインで授業を行いました。といっても1日2、3時間で、あとは課題を出しました。期末試験も密になってはいけないので、午前に高校生、午後に中学生、と分けて行いました。
オンライン授業はどうでしたか?
先生 そうですね。やはり集まってディスカッションをしたり共同作業をしたりできる環境じゃないと、我々が考えている授業は難しいと感じました。ただ、そういう一方で、海外にいる人とつないで、普段ではなかなか聞けない話をしている先生もいますし、広島研修旅行には行けなくても、中満泉 国連事務次長(本校の卒業生)とつながって、メッセージをいただきました。オンラインだからできることもあるので、いろいろ工夫してやっていかなければいけないと思っています。

フェリス女学院中学校 理科研修
金星の太陽面通過を観測した
先生 本校には天文でもすごく重要な場所があります。明治時代に金星の太陽面通過という現象がありました。太陽と地球の間に金星がありますよね。金星が太陽の周りを公転する軌道面と地球が太陽の周りを公転する軌道面が同じ平面ではなく傾いているため、金星の太陽面通過という現象はなかなか見られないのですが、1874年(明治7年)12月9日に観測しました。本校がその観測場所の1つになっています。山手通りから見られる場所に記念碑を立てています。その記念碑にスペイン語が書かれているのはメキシコから観測隊の人が来たからです。太陽と地球の間に金星が入ることにより、太陽と地球の距離がより正確に出せるということで、「三角法」の計測と太陽と惑星間の距離の比を示す「ケプラーの法則」を組み合わせて計算されました。これも天文を扱う時に授業に取り入れていきたいことの一つです。
2004年の6月に、再びこの現象が観測されたときに、先輩の理科の先生が川崎の天文同好会の人たちと一緒にGPSを使って1874年の観測地点が本校のどこなのか正確に調べました。国立天文台のHPでも、「金星の太陽面通過」と検索すると本校の観測地点が出てきます。次は2117年です。その頃どうなっているのだろうと想像するとおもしろいです。1874年からは、147年経っています。本校は昨年、創立150周年を迎えました。本校の歴史とシンクロしています。
生徒さんに興味をもってもらうには格好の題材ですよね。
先生 今も、メキシコ大使館の方が時々来校されます。隊長さんの名がついた小学校の生徒から人形が送られてくる、といった交流もあります。天文部の生徒の間では継承しているのですが、先ほどの関東大震災の手記と同様に、もっと知らせていかなければいけないことであり、歴史がある学校だからこそできることだと思います。
インタビュー3/3