シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

フェリス女学院中学校

2021年11月掲載

フェリス女学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.生徒たちは授業で耳にしたことをきっかけに、自分で調べて深めていく

インタビュー2/3

多角的に見て、関連づけて考えることを大切にしてほしい

地質学というと、大昔のことを聞かれるイメージでしたが、そうではないんですね。

先生 地球の歴史において、人類が存在している期間はごくごく短い期間なので、そういうことは特に聞くことではないような気がします。ただ、日本で暮らしていれば災害や地震を避けて通ることはできません。小学校でも理科の時間、社会の時間と分れていますが、同じことをいろいろな角度から見て、教科の枠にとらわれず、いろいろなことを関連づけて考えて、理解していくということをしてもらえるといいですし、本校との関連でいえば、先ほどのスペイン風邪もそうですが、その時にもうフェリスは存在したんだ、と関心をもってくれればそれでいいと思っています。

フェリス女学院中学校 物理実験室

フェリス女学院中学校 物理実験室

4年かけて生物・地学・物理・化学の基礎を学ぶ

授業について教えてください。

先生 中高一貫校の理科ですから生物・地学・物理・化学、4科目あります。高校1年生までが基礎科目で、まんべんなく学ぶカリキュラムになっています。
入学試験でも、毎年4分野から出すような形になっています。一問一答のような問題形式ではなくて、文章で表現してもらう、グラフを書いてもらうなどの問題が多いと思うのですが、それは入学後を考えてのことです。教員は中高両方教えているので、中3の授業では高校生の基礎の教科書を使って、内容的に重なる部分は中学生の間に出来る範囲で学ぶということをしています。先取りで学習するということではありません。中学と高校、両方で教える内容を、中学ではあっさりと、高校でしっかりと教えるのではなくて、中学生が分かる範囲で高校で教える内容も扱います。そのほうが理解が深まるからです。例えば、三角関数を使うなど、中学生にとって高校で学ぶ内容が難しい場合は、無理に扱いません。高校で数学を学んでからやりましょうという考えで、生徒がうまくつなげて理解できるように授業を構成しています。
生徒に聞くと「図書館で勉強した」「それが将来につながった」という子が結構います。おそらく授業で耳にしたことをきっかけに、自分で調べて、深まっていくのだろうと思います。

私たちは自然の中の一員である

理科教育で重視していることを教えてください。

先生 私たちは自然の中の一員である、ということを認知してもらおうという目標があります。
例えば、中学3年生で、1泊2日で三浦半島に行きます。地質のこと、動物の生態系のことなどを一通り学習した上で、実際に現地へ行って学習を深める、ということをしています。
また、理科の行事ではないのですが、中学3年生の5月に上高地へ行きます。高校1年生で行く「広島研修旅行」も、原爆や核兵器の仕組みや開発の歴史を学ぶ時に、そこに科学者をどう絡めるかというところで理科もかかわっています。

2009年度と2011年の生徒によるマインドマップを比較しました。6月頃、最初に原子力の勉強をする時に書かせたら、明らかに違いました。2011年度の生徒は東日本大震災の恐怖、福島原子力発電所の事故の恐怖でほとんどが書けませんでした。勉強することと実際に起きていることは、大きく影響する、ということを感じました。また、「広島研修旅行」の後に書かせたものからは、「広島研修旅行」でお世話になった被爆者の方、講演者の方、広島女学院の生徒や先生方の言葉がしっかりと記されていて、「広島研修旅行」という貴重な平和学入門を続けていく意義を感じました。

フェリス女学院中学校 磯の生物観察

フェリス女学院中学校 磯の生物観察

結果には必ず原因がある。考える習慣を

理科も記述が多いと思いますが、それも入学後の学習と関連があるのでしょうか。

先生 「理科」の問題は「文章が長い」と言われますが、文章の中にヒントがあります。読めば書けるだろうという期待を持って出していますので、しっかり読んでほしいですね。入試の限られた時間の中でも、与えられた資料やデータを見て答えられる子は、入学してからうまく授業に対応できるのではないかと思います。

理科では実験を重視してます。実験しなければわからないことがあるので、高校3年生まで実験します。中学生の実験は、受験勉強で学んだことを実際に確かめるということを重視しています。その中で答えどおりにならないと「実験の意味がない」と言う子も、はじめはいます。小学生時代から実験をやるにしてもプリントをやるにしても、結果には必ず原因があるということを頭に置いて、自分で考えることを大切にして勉強してほしいと思います。

自分で判断するために学ぼう

樹木観察はしていますか。

先生 本校の中庭が工事中で現在はできていないのですが、1年間継続して樹木観察を行うことは非常に意味のあることなので再開しようと思っています。

「身近なことに引き寄せて考えることを求められた」という話を、貴校の卒業生から聞いたことがあります。今日のお話からもそれが伝わってきました。

先生 理科は自然を扱っていますが、次第に離れていき、「一部の専門の人がやるもの」「理系に進まないからそこまで深く学ぶ必要はない」などということを言われがちですが、それは3.11の後に変わったと思うんですよね。放射線の問題や、今のコロナもそうですが、自分で正しい情報をキャッチして、自分で考えなければいけません。専門家に任せておけば何とかなるというものではないのです。そう考えると、本校の教育方針は変わらず、このままでいいのかなと思います。

フェリス女学院中学校 図書館

フェリス女学院中学校 図書館

インタビュー2/3

フェリス女学院中学校
フェリス女学院中学校フェリス女学院の教育理念“For Others”は、誰か特定の人によって提案されたものではなく、関東大震災後に、誰が言い出すともなくキャンパスに自ずとかもし出され、フェリス女学院のモットーとして自然に定着したものだということです。フェリス女学院では、“For Others”という聖書の教えのもと、「キリスト教信仰」・「学問の尊重」・「まことの自由の追求」を大切にしています。そして、生徒一人ひとりが、6年間の一貫教育を通して、しなやかな心を育み、つねに与えることができる、“For Others”の精神を持った者へと成長することをめざしています。校章には、盾に創設時の校名Ferris SeminaryのFとSの二文字がデザインされています。盾は外部の嵐から守る信仰の力を表し(「エフェソの信徒への手紙」6章16節)、白・黄・赤の三色は信仰、希望、愛(「コリントの信徒への手紙一」13章13節)を表しています。
外国人墓地や歴史的な建造物の多い異国情緒あふれる地域にある、落ち着いた雰囲気の学校です。創立者メアリー・E・ギターがこの地に開学して以来の歴史が、校舎を包む木々などから感じられます。2000年の創立130周年において新校舎建築となり、2014年には新体育館、2015年夏には新2号館が完成しました。中高の図書館には、図書・視聴覚資料・雑誌・新聞などの94,000点を超える資料があります。授業の課題制作や調べものや自習のほか、昼休みや放課後にも多くの生徒が利用しています。書庫は開架式で、図書を手に取って自由に選ぶことができます。
クラブ活動がたいへん盛んで、同好会、有志も合わせると約60近い団体が活動しています。中学生では、ほぼ100%の生徒がクラブに参加しています。ほとんどのクラブが中1から高2まで一緒になって活動し、同学年だけでなく、先輩・後輩という他学年との人間関係が築かれています。中3からは、クラブ以外でも、気のあった仲間同士で同好会や有志を結成して文化祭に参加するなどの活動もあります。