シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

フェリス女学院中学校

2021年11月掲載

フェリス女学院中学校【理科】

2021年 フェリス女学院中学校入試問題より

図1は今から99年前(1922年)の横浜(よこはま)市にある海岸線の様子を示した地図です。また図2は今から82年前(1939年)の図1と同じ場所の様子を示した地図です。図1の時点から17年たって、海がうめたてられ公園ができたことがわかります。

問題図 図1図2

*図1は旧日本陸軍陸地測量部、図2は同左部と横浜市が作成した地図を一部改変したものです。
(横浜タイムトリップ・ガイド制作委員会『横浜タイムトリップ・ガイド』講談社)

今から8年前(2013年)に、その公園でボーリング調査が行われました。公園の地下6mの深さまでボーリングした結果、下表のような地層の重なりができていることがわかりました。

地表からの深さ 地層の様子
0m 〜 0.5m 最近、公園を整備するために入れられた土
0.5m 〜 1.8m 海がうめたてられたときに市内の他の場所の河川から運ばれた土砂
1.8m 〜 4.5m 赤レンガの破片・熱で変形したガラス片・かわら・とう器の破片
4.5m 〜 6m 海がうめたてられる前の海岸の砂や小石

(問)地表から1.8m〜4.5mまでの深さの地層にあるものは、いつごろ、何が原因でできたものか、考えられることを説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このフェリス女学院中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

1923年に起こった関東大震災によって建物が火災にあったり、壊れたりしてできた。

解説

冒頭の図と文章に着目すると、1922年から1939年までの間に、海をうめたてて公園がつくられたことが読み取れます。また、表に着目すると、地表から4.5mより下の層には海がうめたてられる前の海岸の砂や小石があり、地表から0.5m~1.8mの層には海をうめたてるときに他の河川から運ばれた土砂があることが読み取れます。したがって、これらの層の間にあたる、地表から1.8~4.5mの層にあるものは、公園がまだなかった1922年から、海のうめたてによって公園ができた1939年の間にできたものであると判断できます。1922年~1939年という限られた年代と、赤レンガの破片、熱で変形したガラス片、かわら、とう器の破片などの特徴的な人工物から、1923年に起きた関東大震災によって、建物が倒壊したり火災によって燃えたりとけたりしてできたがれきがうまっているのではないかと推測することができます。

日能研がこの問題を選んだ理由

ボーリング調査の結果をもとに、特定の地層がいつごろどのような原因でできたのかを推測し、説明する問題です。地層の問題といえば、化石や岩石の種類などを手がかりに、過去にその土地に起きたできごとを推測するのが一般的です。しかし、この問題では少し違った角度から地層を紐解き、過去の横浜の町に思いを馳せていきます。

子どもたちは、問題に示された文章、図、表を読み取りながら、地層にまつわるさまざまな情報を手に入れていきます。ボーリング調査をした場所、地層ができた年代とその時代の社会的な背景、地層の中にふくまれているものの特徴など、複数の情報を結びつけることによって、この地層ができた時期やこのような地層ができた原因を筋道立てて推測していきます。

この問題に取り組むことによって、子どもたちは「理科」という科目の枠を飛び越えて、多角的な視点から物事をとらえていくことや、得られた情報をもとに筋道を立てていくことが現象を理解することにつながることに気がつくことでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。