シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

駒場東邦中学校

2021年10月掲載

駒場東邦中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.受験を新しい知識を獲得する機会に

インタビュー2/3

順を追って解くことで初見の問題も対応できる

理科の入試問題として大切にしていることを教えてください。

先生 本校の入試問題は、物理・化学・生物・地学の4分野からまんべんなく出題するように心がけています。小学校では学ばない内容を扱うこともありますが、知識として要求しているわけではありません。問題文を読み取り、順を追って解いていくことで正解にたどり着けるように、流れを意識して作問しています。問題の流れにうまく乗って解いていきましょう。

受験生はたくさんの知識をインプットしてきているでしょう。インプットした情報をそのままアウトプットするのではなく、形を変えてアウトプットできれば、小学校で学習したことがない内容にも対応できるのではないでしょうか。
与えられたことをこなすだけだったり、刺激の少ない日常を過ごしたりしているだけでは「知能」は養えません。海や山で遊び、自然は例外にあふれていることを体験していると、思考の引き出しを増やすことができます。外遊びをたくさんしてほしいですね。

駒場東邦中学校 先生

駒場東邦中学校 先生

文章量が多く読む力が求められる

先生 また、本校の入試問題は理科としては文章量が多く、読むスピードも求められます。
2021年度入試の物理分野の浮力の問題は、リード文の他にグラフから読み取れることを踏まえて考察した文章もあり、文章量がかなりありました。ですから、読み取った内容を視覚化した受験生も多かったのではないでしょうか。どんなことが起こっているのかを確認しながら解いていったと思います。

言葉でわかっている特徴を絵で表現できるか

先生 本校は「絵を描く」問題を結構出題しています。2021年度入試は「ふ化したばかりの子めだかを描く」問題を出しました。お腹とひれの形に特徴があることはわかっていても、お腹がどこからどのようにふくらんでいるのか、ひれの部分がどうなっているのか、絵で表現するとなると戸惑うのではないでしょうか。
生徒にはよく「絵は実際に描きなさい」と言っています。言葉の説明で理解したつもりにならないこと。絵を描くことで「ここはこうなっているから、こんな形をしているんだ」と自分で考えるようになります。

駒場東邦中学校 発芽実験

駒場東邦中学校 発芽実験

新しい発見や興味が湧くようにリード文を工夫

先生 生物分野の大問のリード文で、唱歌『春の小川』(1912年)の歌詞に触れています。歌詞に「めだか」や「小鮒」が出てきますが、問題に掲載した明治時代(約130年前)の地形図を見ると、その頃は駒場周辺でも里地里山の原風景を残しているとわかります。昔の自然豊かな情景を想像しながら解いてほしいですね。
問いとは直接関係ありませんが、「昔はこうだった」ということを知ってくれたらと思います。リード文は「そうなんだ」と気づいたり、興味が湧いたりするように工夫しているつもりです。未知の世界を知ることをおもしろがれる、そんなお子さんに入学してほしいと思っています。

生き物観察などフィールドワークも盛ん

先生 地学の教員が作った現在の3D模型を見ると、昔の地形の面影が残っているのがわかります。3D模型は地形の高低から水が溜まりやすい場所がわかるので、防災教育にも役立ちます。3D模型とiPad上で昔の地形と比べながら、川があったところ、削られて崖になっているところなどを散策すると、学校周辺の地形を楽しみながら学べます。こうした課外授業を企画すると生徒は結構参加してくれます。
理科では学期に1回程度、希望制の生物実習や地学実習を行っています。今年の夏休みに神奈川県真鶴町で行った「磯の生き物観察会」は、密を避けて2日間で4回(1回30人程度)実施しました。生徒は目を輝かせて取り組んでいました。

駒場東邦中学校 地学実習風景

駒場東邦中学校 地学実習風景

インタビュー2/3

駒場東邦中学校
駒場東邦中学校1957(昭和32)年4月、東邦大学の理事長であった額田豊博士が、当時の名門・都立日比谷高校校長の菊地龍道先生を招き、公立校ではできなかった夢を実現させるため、現在地に中・高を開校。71年に高校募集を停止し、完全中高一貫教育の体制が確立した。2017(平成29)年に創立60周年を迎えた。
神奈川、東京のどちらからも通学至便で、東大教養学部にも程近い都内有数の文教地区に位置。300名収容の講堂、6万9千冊の蔵書を誇る図書室、9室の理科実験室、室内温水プール、トレーニング室、柔道場、剣道場、CALL教室など申し分ない環境が整っている。職員室前のロビーには生徒が気軽に質問や相談をできるよう、机やイスを設置している。
先生、生徒、父母の三者相互の理解と信頼に基づく教育を軸に、知・徳・体の調和のとれた、科学的精神と自主独立の精神をもった時代のリーダーを育てることを目指す。年間を通じて行事も多く、とくにスポーツ行事などでは、先輩が後輩の面倒をよく見る「駒東気質」を培う。中1では柔道・剣道の両方を、中2・中3はどちらかを履修することになっている。
2004年から中学校では1クラス40名、6クラス編成に。「自ら考え、自ら行動する」習慣を身につけながら、各教科でバランスのとれた能力を身につけることが目標。英・数・理では特に少人数教育による理解の徹底と実習の充実をはかっている。中1・中2の英語と理科実験は分割授業。数学は中2(TT)・中3(習熟度別分割)・高1と高2(均等分割)の少人数制授業を行う。英語は、深い読解力をつけるために中3~高3までサイドリーダーの時間を導入。さらに高3ではネイティブ指導のもと自分の考えを英語で表現するコンプリヘンシブ・クラスなど独特の指導も展開している。文系・理系に分かれるのは高3になってから。中学生は指名制、高校生は希望制の夏期講習を実施する。
濃紺の前ホック型詰襟は、いまや駒東のトレードマーク。伝統的に先輩・後輩の仲がよく、5月中旬の体育祭では全校生徒が4色の組に分かれ、各色、高3生の指導の下、一丸となって競い合う。9月の文化祭は、多くの参加団体と高校生約200名で構成される文化祭実行委員会によって、一年かけて準備される。中学では林間学校、鎌倉見学、奈良、京都研究旅と探究活動が充実しており、高校の修学旅行は生徒によって毎年行き先が決められる。クラブは文化部16、体育部16、同好会15があり、兼部している生徒も多い。中学サッカー部・軟式野球部・アーチェリー部・囲碁部・陸上部・化学部・模擬国連同好会などは関東大会や全国大会に出場。アメリカ・台湾への短期交換留学制度もある。