シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

駒場東邦中学校

2021年10月掲載

駒場東邦中学校【理科】

2021年 駒場東邦中学校入試問題より

(問)昨年、金魚の祖先でもあるギベリオブナの卵が、水鳥に食べられて糞(ふん)として排出(はいしゅつ)されたのにもかかわらず、一部の卵が消化されずに生き残り、正常にふ化することが実験によって明らかになりました。食べられた卵のうち、わずかしか生き残りませんが、ギベリオブナにとってはいくつかの利点があると考えられています。ギベリオブナにとって、水鳥に卵が食べられることで得られる利点を答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この駒場東邦中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

卵を食べた水鳥が他の池や湖などに移動して糞をすると、生き残っていた卵がふ化するので、今生息していない場所で仲間を増やすことができる。

解説

「卵が水鳥に食べられることが、食べられる側のギベリオブナの利点になる」とは、一体どういうことなのでしょうか。卵が食べられる場合と食べられない場合で、ギベリオブナにとってそれぞれどのようなメリットとデメリットがあるのかを考えてみましょう。

卵が水鳥に食べられない場合には、今生息している池や湖で仲間を増やせると考えられます。しかし、仲間が増える場所は池や湖などの限られた範囲内になるといえるでしょう。一方、卵が水鳥に食べられる場合には、多くの卵が死んでしまうことは欠点ですが、生き残った卵が他の池や湖でふ化して新たな環境で生息し、仲間を増やすことにつながるでしょう。

なお、植物の中には、鳥などの動物に実と一緒に種子を食べてもらい、移動した先で鳥が糞をすることによって種子を他の土地に運んでもらう仲間がいます。自ら移動することができない植物にとっては、何らかの方法で種子がいろいろな土地へ運ばれて根づくことは、種が絶滅するリスクを減らすことにつながります。

もし、このことを知っていれば、魚と植物というちがいはあるものの、生息する場所を増やし、次の世代が生き残る可能性を高めるという点において、卵が魚に食べられることも有効な手段であると推測することができるかもしれません。

日能研がこの問題を選んだ理由

卵が水鳥に食べられることで、ギベリオブナが得られる利点を説明する問題です。
子どもたちは、まず、問題に示された文章からギベリオブナや水鳥の卵をめぐる関係を読み取っていきます。次に、読み取った情報と、他の生物が行っている子孫を残すためのしくみを結びつけながら、卵が食べられることにどのような利点があるのかを筋道立てて推測していきます。

この問題に取り組んだ子どもたちは、初めて出あう現象の理由やしくみを、読み取った情報や知識と結びつけることによって推測することができることに気がつくでしょう。また、生物が持つ不思議なしくみに目を向けることで、生物そのものに興味を持ったり、生物の持つ多様性に面白さを感じたりするかもしれません。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。