シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

横浜創英中学校

2021年09月掲載

横浜創英中学校【社会】

2021年 横浜創英中学校入試問題より

(問)「持続可能な開発目標(SDGs)」とは、貧困や不平等・格差、気候変動などの様々な問題を、2030年までに根本的に解決することを目指す、世界共通の17目標のことです。英子さんと創太さんは、プラスチックのごみを減らしたり、リサイクルしたりすることで、次の3つのSDGsの目標の達成に貢献できると考えました。それはなぜですか。下の3つの目標の中から1つ選び、理由を説明しなさい。

目標 内容 世界の人々が合意したターゲット
目標3
すべての人に健康と福祉を
すべての人が健康で、安心して満足にくらせるようにしよう
  • 赤ちゃんや5歳未満の子どもが防ぐことのできる理由でなくなることがないようにします。
  • 害のある化学物質や大気汚染、水質汚染、土壌汚染が原因で、命を落としたり病気になったりする人の数を大きく減らします。など
目標12
つくる責任
つかう責任
持続可能な方法で生産し、消費する取り組みを進めていこう
  • 国際的なルールに従って空気や水、土を汚さずに、有害な化学物質が管理されるようにします。
  • 3R(リデュース、リユース、リサイクル)を通して、廃棄物を減らします。など
目標14
海の豊かさを守ろう
持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続可能な形で利用しよう
  • 海や海の資源を守り、持続可能な方法で使用します。
  • 海の汚染を減らします。など

【参照資料『私たちが目指す世界』(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンのホームページより)】

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この横浜創英中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

例①(選んだ目標)目標3 すべての人に健康と福祉を
(理由)プラスチックのごみを減らすことは、赤ちゃんがプラスチック製の小さな部品をあやまって飲み込み、なくなってしまう事故を減らすことにつながるから。

例②(選んだ目標)目標12 つくる責任つかう責任
(理由)使用済みのプラスチックをごみとして処分せずにリサイクルすると、限りある資源を有効に使うことができて、持続可能な生産・消費の在り方を実現することにつながるから。

例③(選んだ目標)目標14 海の豊かさを守ろう
(理由)プラスチックのごみを減らすことは、海に流れ出るプラスチックのごみで海洋生物が傷つくのを防ぐことにつながるから。

解説

3つのSDGsの目標は、どれを選んでも構いません。選んだ目標と、プラスチックのごみを減らしたり、リサイクルしたりすることとのつながりを探る際には、表中にしめされた目標ごとの「内容」や「世界の人々が合意したターゲット」が手がかりとなります。「世界の人々が合意したターゲット」は、どの目標にも2つずつ書かれているので、つながりが想像しやすいほうを使って説明しましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

プラスチックのごみ問題と、持続可能な開発目標(SDGs)とのつながりを考える問題です。問題には、SDGsが「世界共通の17の目標」であることや、「プラスチックのごみを減らしたり、リサイクルしたりすることで、次の3つのSDGsの目標の達成に貢献できると考え」たことが書かれています。これは、「世界は多く課題に直面しているが、1つの行動を起こすことが、複数の課題解決につながっていく」と、行動することの大切さを受験生に伝えているといえるでしょう。一方で、やみくもに行動するのではなく、その行動が環境や社会、経済にどのような影響を与えるのかを考えることが重要であり、そのためには多角的な視点でものごとをとらえる力が欠かせないことも同時に伝えているように感じます。

また、ポスターでは紙面の都合上、割愛することになってしまいましたが、実際の入試問題ではこの後に「プラスチックのごみを減らすために、あなたができる取り組み」を具体的に考える問題が続いています。

誰かが課題を解決してくれるだろうという受け身の姿勢ではなく、社会の一員として自分には何ができるのかを考える。答えのない問いに向き合って解決を目指す姿勢や、そのために自ら行動を起こしていく主体性は、社会に出てからもさまざまな場面で求められます。それらを身につけるために、まずは入試問題を通して疑似体験してほしいという学校の先生のメッセージを感じました。

このような理由から、日能研はこの問題を□〇シリーズに選ぶことにいたしました。