出題校にインタビュー!
茗溪学園中学校
2021年09月掲載
茗溪学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.深く考えたり遠回りして考えることを実践するアカデミアクラス新設
インタビュー2/3
今度は授業の話に移りたいのですが、茗渓学園では「考えること」「本当にわかること」といった思考力重視の授業が展開されているのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか?
また、先ほど新しいテキストの話も出ていましたが、その辺もお話いただけますか?
新妻先生 今年からアカデミアクラスの1期生がスタートしました。これはよくある先取り学習型のコースとは一線を画したコースなのですが、なぜ?を深く考えたり、どのようなつながりがあるかを遠回りしてじっくり考える、というコースになっています。
教育実験校として始まった取り組みではありますが、文科省が指定しているコースとは違うスタイルのコースがあってもいいだろう、ということでアカデミアクラスは作られました。
中学校の教科書というのはこれまでの経験に基づいて作られていると思うのですが、そこから一旦離れ、大学の数学なども踏まえながら論理的な授業を展開しています。また、じっくり吟味や証明をしたり考えたりすることは従来の学校のテキストではできないため、オリジナルテキストを作成しての授業となっています。
このアカデミアクラスは定期試験もなく、テストのための勉強というのが一切不要です。そのため、何度でも何時間でも考える、答えを教えずにじっくり考える、という取り組みを中心としています。
さらに授業では、予習段階で生徒に疑問を考えてもらい、それを先生側が受け取って授業で展開していく、といったことをしているのも大きな特色です。
小さい時に学校の先生に「何でこうなるんですか?」と聞いたところ「そんなことは考えなくていい」「難しいからいいよ」と言われたような辛い経験をした子も多いようで、茗渓学園で勉強していく中で、「自由に考えていいんだ」という環境や、一緒に考えてくれる友達と先生がいることを喜んでくれる生徒も多いんです。
このように、アカデミアクラスは「なぜ?」とか、わからない事とかを根本から考え、「何に基づいて正しいと言えるのか?」といった根拠について考えていけるコースとなっています。
数学科/新妻 翔先生
理解度を高めるためのオリジナルテキスト活用
一般クラスもオリジナルテキストを使っているんですか?
新妻先生 カリキュラムは違いますが、アカデミアクラスでないクラスでもオリジナルテキストを使っています。そちらは検定教科書をアレンジしたり付け加えたり、といった形で工夫はしています。カリキュラムは異なるものの理念は同じですね。
一般コースからアカデミアコースに移ることも可能なんですか?
新妻先生 特進コースではなく、どちらが上とか下とかはありません。行き来は要望があれば可能です。ただ成績が悪いからコースを変えようね、ということはしていません。
佐藤先生 今年から始まったばかりなのでこれからですが、現状では学期の途中で変わるというのではなく、中1から中2に上がる時、中2から中3に上がる時といった場合に変更できるように考えています。最初の入口は合格の時の希望でコースを決めています。
現状中学では2クラスですが、高校からは3クラスにしようと構想中です。高校も文系理系というコース制ではなく、選択科目が文系と理系のどちらが多くなるかというくらいでしょうか。とはいえ、国公立大を目指す子たちはそんなことを言っていられないので、受験科目すべてをやることにはなります。あくまでどちら寄りかというだけです。
生徒さんは毎回授業の準備をしてくるのですか?
新妻先生 生徒はそれぞれ予習ノートというものを作っていて、テストがない分日々の取り組みを評価しています。
問題を解くのだけが予習ではなく、「わからないところがどこなのか」「何が問題なのか」という点を重視するようにしていますが、そもそも疑問を抱くこと自体が難しいテーマです。良問を思いつくことができるということ自体、数学の意図が分かっているということなのですからね。
茗溪学園中学校 オリジナルテキスト
生徒と対話しながら、わからないことをわかってもらう授業を展開
授業の流れとしては、準備をしてきて先生がそれを使いながら進めていく感じですか?
新妻先生 もし疑問があれば生徒と対話しながら行いますし、疑問がない場合には「本当にわかっているのか?」とこちら側から突っ込んでいくようにしています。子どもたちも、このような授業スタイルにだんだん慣れてきている印象はあります。発言できない子も中にはいるのですが、そういう子もノートには何かしら書いているので、それが面白いと思えば拾って授業に活かしたりもしています。
尾島先生 数学分野そのものが、経験的につじつまを合わせながら発展してきたものなので、きっちり説明しようと思うと矛盾してしまうところもあるんです。それをあえてやろうとしているところがこのクラスの面白いところですよね。数学史的にもいろいろ誤魔化しながらやってきたり、あえて「覚えてしまいなさい」と言われてきたりしたものはあります。
一般の人だと、何が誤魔化されているのかさえ分からないですね。
できないとされている子ほど「なぜなのか?」をしっかり考えている
尾島先生 出来ない子たちの混乱を見ていると、そこが説明できないから頭の中が取っ散らかってしまっているんだと思うのですね。それをさっと通り過ぎてしまえる子ならいいのですが、そこでつまずいてしまう子が「数学が出来ない子」となっているような気がします。
新妻先生 省略されている、かけ算や割り算の優先順位でつまずいている生徒もいるんです。「なぜそうなるのか?」をしっかり考えているから混乱しているんですね。教科書には書いていないだけです。それを追求して本質さえわかれば、自分で注意しながら進んでいくと思うんですけどね。
佐藤先生 今の中1生たちは、生徒たちの疑問とかごまかしをさっと流さないような授業をしているので、生徒たちの「知りたい」「わかりたい」という気持ちがすごく、できない子ほど「なんでなのか?」と考えている気がしました。
もともと子どもたちには「知りたい」「分かりたい」という気持ちは絶対あると思うんですね。アカデミアクラスではそういうものをどんどん引き出して、遠回りした結果の学びがどう昇華していくのかが楽しみですね。
先生たちが教え、解いていくだけの授業ではなく、生徒から「こういうことじゃないですか?」といった質問が飛び交うなど、今の子どもたちには活気がありますよ。
茗溪学園中学校 校舎
インタビュー2/3