出題校にインタビュー!
茗溪学園中学校
2021年09月掲載
茗溪学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.受験の勉強ではあまり見たことのない初めて触れるような問題を解く
インタビュー1/3
この問題の作成意図についてまずはお話しいただけますでしょうか?
尾島先生 入試問題については、どの学校の入試問題もそうだと思うのですけれど、生徒が「過去やったことがある」「よく練習している」という能力を試したいとは出題者側は思っていないと思うんですね。
この問題は産業構造が大きく変わっていく中で、初めて見た問題を、提示された説明を読み取ることによって解決する力を見てみたいと思って作問したものです。図形の問題はどうしても長さや面積といった計量を問う問題が多い中、今回は「トポロジー」というつながりをみるという形で図形を見る問題でした。
正直なところ、図の1と2で立体なんて見えないと思うんですが、立体図を書きながらその根底では結ばれているということが理解出来たり、気づいていけるよう、解きながら問題構造が徐々に見えてくるような経験をしてもらいたくて作成しました。
本来であれば時間を十分与えたうえで考えてもらいたいところですが、試験時間といった制限がある中でじっくり考えてもらえないのは心苦しくはありました。しかし、試験中に解けなくても「こんな問題が出たんだよ」と試験後の夕食の話題にして、家族で考えてもらえるような問題になれば、と思っていました。
実際の子どもたちの反応はどうでしたか?
新妻先生 答案から判断すると、答えがはっきり分かれているような感じでした。図2はやはり難しかった印象です。
尾島先生 前半が軽くなったというのもあるのですが、数年前に比べると後半の問題を解ける子はだいぶ増えてきた気がします。ここ何年かで問題の構成も変えており、昔は計算問題がたくさんあったのですが、今は半分以下となってしまいました。
こうした試験になったのは何年前からですか?
尾島先生 3年前くらい前でしょうか。大きくガラッと変えたときには、受験生や家族、塾など皆さん衝撃を受けたみたいです。
新妻先生 今まではほとんど最後の大問に手を付けられていなかったんですが、ここ2~3年はしっかり書けているので、徐々に受験生にも浸透してきたのではないかと思います。
最近は思考力中心の問題を解くのが好きという生徒も増えてきています。
こうした問題は子どもたちはおそらく初めて見る問題で、受験の勉強の中では触れたことが無いと思うんですが、計算問題の割合が減ってきていて、簡単な計算も今年は3問だけでしたから、こういう問題に時間をかけて取り組めるのではないかと思いました。
ちなみにどれくらいの解答時間を想定していたのですか?
尾島先生 この問題に関しては2問とも解答できるとは思っていなくて、問2は悩んで時間切れで終わってもいいのかな、という感じでした。受験終了後の帰りの車の中で考えるぐらいでもいいのかなと。そう考えると10分くらいかけて解いてもらえる問題だったのではないでしょうか。
正答率はどれくらいでしたか?
新妻先生 正答率ははっきりとはわかっていないのですが、問1は比較的高かったです。それでも60%行かないくらいで50%程度だったと思います。しかし問2はかなり低かったと思います。それも10人くらいしか書いていなかったのではないかと。前半で時間を使ってしまった子は後半は考えられなかったでしょうし、きつかったのでは?と思います。

数学科/尾島 義之先生
大人でも躊躇してしまうような問題
「トポロジー」というのは、大人でも初めて見る問題ですよね。
尾島先生 よく例えに出されるのが駅の路線図でしょうか。距離と形というよりも、駅と駅の繋がりだけをデフォルメして表しているということで、この問題はその立体版のような感じです。
新妻先生 ちょうどコロナ禍の休校時に考えた問題で、他の教科の教員も楽しそうに解いていました。
先ほど「正答率は高くなかった」と言われていましたが、「書けていたけどバツ」だったのでしょうか?それとも「全くの白紙」だったのでしょうか?
新妻先生 図2は見取り図を書くので、想像していなければ書けないんですよね。だからほとんど白紙ですね。

茗溪学園中学校 学年スローガン
受験生がこの問題を面白がって解いてくれることを期待して作成
何%出来ればいい、ということよりも、面白く考えてほしい、深く考えてほしい、というのを優先したんでしょうか?
尾島先生 実は、この問題が解けなかったからといって合格できないわけではありません。計算や小問などの前半部分がきっちり解ければ、合格に近付く点数は狙えたはずです。
過去問を見て「こんな問題を出してるんだ」と面白がってくれる生徒が受けてくれたらいいな、という気持ちでした。
例年と比べるとこの問題が割と突出して難易度が高かったように感じるのですが、今年こういう出題形式にしたのは意図があるのでしょうか?
尾島先生 この学年からの募集背景が少し変わり、アカデミアクラスが新設されたことが背景にあります。教科書ベースの授業からシフトしていく学年であるということもあり、「面白い問題を」という気持ちがあったのかもしれませんね。

茗溪学園中学校 スコーラ棟
計算問題のウェイトは減少傾向に
次に全体の話に移りますが、全体構成としては計算問題といった基本問題を少なくし、思考力重視で行こうということですよね。3年前から形式が変わったと仰っていましたが、大問が4つというのは決まっているのですか?
新妻先生 昔は計算と小問のセクションを分けていたのですが、全体の構成としては変わっていないです。
最初の計算問題におけるウェイトは本当に少なくなりましたね。
「説明させる問題」は毎年必ず出題されていると思いますが、どういう力を見たいのでしょうか?
新妻先生 本校では「途中の考えを書こう」というのは大事にしています。答えを複雑にすることはいくらでもできるんですが、解く過程を見たいというのはあります。
大学入試も今の社会もそうですが、数学を通じて考えていることを表現するというのは重要で、それを小学校の段階でどれくらい表現できるのかを見てみたい、というのは私個人としては思っていたりしますね。
尾島先生 比較的単純な問題構成の出題でも、しっかり解答できるのは大事かなと思います。手を動かしてほしいという問題もあるので、自分からやってみよう、と思う気持ちも大切です。
数学の解答ではわかっているか・わかっていないかが重要
「~説明しなさい。」という問題では、△というのもあったのですか?
新妻先生 採点についてはそれなりに厳しくつけています。数学においてはわかっているか・わかっていないかが重要な問題だと思っています。ちょっとしたミスなどはあるかと思うのですが、これはきちんとわかっているな、というものについては得点をあげることもあります。
尾島先生 小学生の場合、証明や説明の仕方を習ってきているわけではないため、そこまでうまく表現はできないことはわかっています。そこでの減点は考えていないです。式の中から本人の思考が見えるか?というところで採点しています。
一応言葉で説明するということなので、式だけで書いてある場合には×となってしまうのでしょうか?
学校によっては式だけでもいいケース、途中の過程もないとだめなケースなど対応は違っているのですが、茗渓学園においてはいかがでしょう?
尾島先生 問題によると思います。書き方については入学後の授業の中で指導していくところなので、そこで減点することはしていません。「○○算」のような解き方は、どうしてそれで解けるのか、きちんと分かっていれば立派な解答なのですが、なんとなく解けてしまったりしていることもあります。中1、中2になると、本当にわかっていることが重要で、なぜそのような答えになるのか、きちんと説明できることが求められます。

茗溪学園中学校 グラウンド
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