出題校にインタビュー!
頌栄女子学院中学校
2021年08月掲載
頌栄女子学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.探究を経験して学習の取り組み方が能動的に
インタビュー3/3
入試問題を通して探究の取り組みを経験
社長になったつもりで(仮定)、図をかいて考察し、図のとおりになるか説明して確認(検証)するというこの問題を解くプロセスから、貴校の探究への取り組みがわかります。
小島先生 入試問題を通して本校の探究の一端を経験してもらえればと思っています。
ネット検索が当たり前になって、以前のような調べ学習がほとんど意味をなさなくなっています。調べたいことが簡単に見つかるし、それをそのまま写してしまう生徒が多くなったことを問題視して、探究の取り組みを強化しました。
単に調べたことをまとめただけでは評価しません。「なぜだろう?」と疑問を持つ、「こうしたらどうなるか?」と仮説を立てることを大切にします。
頌栄女子学院中学校 物理室
探究の成果を研究発表会でプレゼン
小島先生 昨年はコロナの影響で学校行事の中止・変更を余儀なくされましたが、その状況を利用したのが、研究発表会の「コ・ラーナーズ・デイ(C.L.D.)」です。例年のクラス・クラブの発表中心から昨年は個人研究に変更、探究の成果をプレゼンテーションし、コンテストで優秀者を表彰しました。C.L.D.に向けて時間をかけて取り組んだことで、目指している探究の形を全学年に広げることができました。
今年のC.L.D.も個人研究のプレゼンは継続します。各学年の優秀者の発表は全校に配信して共有します。
よくよく考えて突き当たった疑問が仮説になる
小島先生 苦労するのがテーマの設定です。まず自分が興味を持っていることから設定してもらうのですが、「○○について調べたい」という生徒が大半で、テーマになっていません。テーマであるからには仮説になっていなければなりません。
考えをどんどん掘り下げていくと、「これはどういうことだろう?」「これがこうなったら、どうなるか?」「これは本当だろうか?」という疑問が湧いてきます。これが仮説になります。
学年が上がって違うテーマに取り組む生徒もいますが、1つのテーマを継続してどんどん深掘りしている生徒も出始めています。今後が楽しみですし、そうした生徒が増えてくれるといいなと思います。
探究に取り組むようになって、生徒さんに何か変化は見られますか。
小島先生 勉強は与えられたことをこなすことではないとわかってきたようです。学習の取り組みも自発的になってきています。
頌栄女子学院中学校 プール
探究や中3の卒業論文で表現力を鍛える
小島先生 探究のプレゼンでは表現力が鍛えられます。プレゼンは自分が伝えたいことをまとめて、相手に伝わるように話さなければなりません。中1から繰り返し取り組むことで、どのように表現すれば伝わるか、つかめるようになります。
書くことについては、定期試験で文章記述の問題は積極的に出題していますし、論述や途中経過の説明を頻繁に課すなどして、書く機会を多く設けています。
中3で取り組む「卒業論文」でも表現力が鍛えられます。ボリューム(文字量)があり、仕上げのレベルも高いものを求めています。卒論というヤマを乗り越えた生徒にとって、高校の探究は比較的スムーズに取り組めているようです。
都心にありながら校内で自然観察できる環境
理科に対する興味の持ち方はどうですか。
小島先生 本校は港区にありながら校内は自然豊かで、校内で植物や小動物の自然観察ができるのが本校の特徴の一つです。
理科は主要5教科の中では、教科書で扱っている実物に直接触れられる教科です。できる限り実物に触れる機会を多く設けるようにしています。
植物の観察は好んでやってくれる生徒が多いですね。植物のつくりの細部まで観察するのは女子らしいかもしれません。
頌栄女子学院中学校 校内
相手がわかるように生徒同士で説明し合う
小島先生 コロナの影響で今はできませんが、授業で時間を設けて生徒同士で説明することをしています。うまく伝わらなければわかったつもりになっていたということ。相手がわかるように説明できれば理解が深まります。
試験前や内容が一区切りついたとき、実験結果のまとめのときに、わかっている生徒がわかっていない生徒に教えたりしています。教員には聞きづらいことも、クラスメイトなら遠慮なく「どうしてこうなるの?」と聞けますし、生徒の説明の方がわかりやすいことが多いでしょう。
近距離で話すことがなかなかできませんが、早く再開したいですね。
あふれる情報に振り回されない科学リテラシーを身につける
中高6年間でどんな理科の力をつけてもらいたいと思っていますか。
小島先生 文系に進学する生徒が多い中で「ここまでは」というのは、基本的な科学リテラシーを身につけることです。
今で言えば新型コロナについて、専門家がいろいろなことを発言し、真逆な内容も見られます。巷には真偽不明の情報があふれ、惑わされている人も少なくないのではないでしょうか。
専門的な知識を得るのは難しくても、玉石混交の情報に振り回されない程度の知識は身につけておきたいですね。物事を鵜呑みにしないで、「これは本当だろうか?」と疑いの目を持てるようになってもらいたい。授業でも「報道されているからといって、本当とは限らないよ」と言うことがあります。極端なことを言うと、教員が説明した内容もすべて正しいとは限りません。
入学した生徒を見ると、早く答えを知りたがる傾向が見られます。時間をかけてああでもない、こうでもないと考え抜く、自分で考えることを大切にしてほしいと思います。
頌栄女子学院中学校 掲示物
インタビュー3/3