シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2021年08月掲載

頌栄女子学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.本当に理解しているか作図でわかる

インタビュー2/3

学んだことは身の回りと何かしら接点がある

よくある実験が、地下鉄の運転とつながるとは思いもよりませんでした。

小島先生 勉強していることが実社会とどう関係しているか、わからない子どもは多いのではないでしょうか。そうした生徒は本校にも少なからずいます。
物理の問題では、「なめらかで摩擦のない斜面」というように、計算しやすくするために現実にはありえない設定が多く見られます。そのため、子どもが「問題は架空の世界のこと」と思ってしてしまうのは仕方がないのかもしれません。
でも、決して私たちの生活と関わりのないことを学習しているわけではありません。この問題は、学習したことが実は私たちの生活と関わっていることに気づいてもらいたいというメッセージでもあります。

また、「あなたが鉄道会社の社長になったと仮定して」という設定には、どんな意図があったのでしょうか。

小島先生 自分が作りたいように鉄道を作れるという前提で、自由に考えてもらおうと思いました。

頌栄女子学院中学校 掲示物

頌栄女子学院中学校 掲示物

図が正しくかけていれば配点の半分はもらえる

改めてこの問題の採点基準を教えていただけますか。

小島先生 この問題は作図がメインです。図が正しくかけていれば、それだけで配点の半分ぐらいの点がもらえます。
「説明も図の中に書き込むこと」としているので、文章だけで説明するよりも取り組みやすかったと思います。どこで加速・減速するか、わかるように図の中に矢印で示してくれると、模範解答にあるような文章での説明がなくても構いません。
模範解答では「『自然に』速くなる」という表現をしましたが、そう表現した受験生はほとんどおらず、「だんだん」などと表現していました。「坂を下って(上って)」のように上り下りが伝われば得点できます。

上りの減速に触れていない説明不足があった

説明の文章で点をあげられなかった表現はありましたか。

小島先生 見当違いはほとんどなかったのですが、説明不足は多かったですね。
具体的には、図は振り子の運動に近い図をかいていても、説明は下りのことだけ、「上り坂で減速する(遅くなる)」ことに全く触れていない答案がありました。

受験生はこの問題を解きながら、下り坂で効率よく加速できるだけなく、上り坂でだんだん遅くなればむやみにブレーキをかけずに、電力を節約できることに初めて目が向いたのではないでしょうか。

小島先生 そのことに気づくことができれば、運動エネルギーが位置エネルギーに変換される高校の物理も頭に入りやすいでしょう。
この問題を解く際に、ジェットコースターをイメージしてくれたらいいですね。一般的なジェットコースターは、最初に高いところまで上って、加速して下るだけでは終わりません。上り下りを繰り返し、上るときは遅くなり、下るときは速くなります。

教頭/小島 和夫先生

教頭/小島 和夫先生

図をかかせて問題の意図を読み取る力を確認

小島先生 過去に文章記述問題を出したこともありますが、それだと問題の本質をとらえる力よりも表現力に採点のウエイトが置かれてしまいます。
小学6年生の段階では表現力よりも問題の意図を読み取る力を重視したい。この問題のように作図をメインにすると、問題の本質をとらえる力を見極められますし、うまく表現できないけれどわかっている受験生に点数をあげられます。
今回、平均点が高かったのは、この問題で図がかければ点数がもらえたからだと思います。初見の、思考力を問う問題を出すと平均点が下がるものですが、今回はそうはならず、こちらのねらい通りにできました。

伸びる生徒は身の回りのことに興味を持てる

小島先生 本校を熱望している受験生に頑張ってもらおうと、入試問題の出題傾向はあまり変えていません。過去問で本校の傾向をつかんでいれば、対応できる問題もある程度出題しています。最後まで手がつけられたということは、基礎問題を手際よく答えられた、つまり基礎知識は身についていると思います。
また、時事問題もほぼ毎年出題していますから、教科書や参考書に載っていることだけでなく、最近の科学に関するニュース等にも日ごろから関心を持つようにしましょう。
理科の力を伸ばしているのは、いろいろなことに興味を持てる生徒です。そうであれば、こちらがわざわざ指導しなくても自ら学び進むことができるでしょう。興味を持って、疑問に思ったことをぶつけてくる生徒は、理系大学に進学する生徒が多いですね。
受験生もいろいろなことに興味を持って、「なぜだろう?」と疑問を持つことを大切にしてほしいですね。

頌栄女子学院中学校 校内

頌栄女子学院中学校 校内

インタビュー2/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。