シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

函嶺白百合学園中学校

2021年08月掲載

函嶺白百合学園中学校【国語】

2021年 函嶺白百合学園中学校入試問題より

(問)今、社会では「SDGs(持続可能な開発目標)」と言い、17の目標の達成に向けて努力が続けられています。その中の地球環境を維持するための次の3つの目標を参考にして、あなたが実せんしていることを五十字以内で答えなさい。

SDGs 13の目標

気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

SDGs 14の目標

海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

SDGs 15の目標

陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性喪失の阻止を図る

(参考)「SDGs(持続可能な開発目標)」
二〇一五年に国連サミットで採択された国際社会共通の17の目標のこと。その中の13〜15の目標が地球環境に関するものです。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この函嶺白百合学園中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

テレビや電灯のスイッチをこまめに切り、歯みがきや洗髪のとき水や湯を出したままにしないようにしている。(50字)

解説

ポスターには載っていませんが、ここでは文章を読んだ上で、設問に取り組みます。文章中には、「私たちが生きていくために消費しているエネルギー」の例として電気があげられ、火力発電によっておこる温室効果の問題や、原子力発電の危険性が述べられています。

一方、設問には「SDGs」17の目標のうち、「地球環境を維持するための目標」として、「13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」「14 海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」「15 陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性喪失の阻止を図る」の3つがあげられています。

身近なことがらとして、電気のむだづかいに対して日ごろから心がけていることをまとめれば、文章で述べられていることにも一致します。また、「SDGs」の目標に沿って、ストローを使わないようにしていることや、レジ袋を使わず、エコバッグを利用していることなどを書くこともできるでしょう。

制限字数が50字以内であるため、思い当たったことをそのまま書くと、あっという間に字数をオーバーしてしまいます。実践していることを複数あげる場合でも、なるべく簡潔にまとめることが必要です。実践していることが特に思い当たらない場合には、これから実践しようと思ったことを書くのも一つの方法です。いずれにせよ、環境問題に対して自分が持っている「問題意識」を伝えるつもりで書くことが大切です。

日能研がこの問題を選んだ理由

設問では、「SDGs」17の目標のうち、「13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」「14 海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」「15 陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性喪失の阻止を図る」の3つを提示して、自分が普段から実践していることを答えさせています。

環境問題は子どもたちにとって、身近なようで遠い問題です。ましてや、文章にあった「未来の子どもたちに対するマイナスの財産」のことなど、考える機会すらあまりないと思われます。ですから、言葉や知識としては知っていたとしても、いざ、自分がどう関わっているかと問われると、はっとして戸惑ってしまう子どももいるかもしれません。

しかし、あらためて目の前に提示されることで、環境問題を身近なこととして再認識することにつながるはずです。また、どういうことを実践しているかによって、潜在的に持っている環境問題に対する意識や関心の高さを確認することもできそうです。

「SDGs」に関して考えをめぐらせることは、これからの未来を生きる子どもたちに、グローバルな視点でものごとをとらえさせることであり、さらに理科的な話や社会科的な話題につなげて掘り下げて行くことで、子どもたちの視野を広げていくことにもつながります。

昨今、さまざまな問題の解決に向けて、科目や学問の専門分野をこえ、問題を多角的にとらえることの重要性が高まっています。「環境問題」にたいしても、「科学」や「技術」などがもたらしているメリット、デメリット両面からとらえて、活用に関して総合的に判断していくことが求められます。

その「ねらい」が意に反して「悪い結果」をおよぼしている例は、「もの」だけにとどまらず、法や制度、人間関係などをふくめ、生活していくうえで至る所に存在している問題でもあります。子どもたちにも、今のうちから身につけておいてほしいものの見方であるといえます。

その意味で、函嶺白百合学園中学校の設問は、今、求められている学びの形を体現していると考えます。「環境」や「地球の未来」を題材に、子どもたちは理科や社会科で扱うようなものを、国語で学んだことと結びつけながら、問題を「多角的にとらえること」や「筋道立てて考えること」の面白さが味わえると考え、この設問を□○シリーズに選ぶことにいたしました。