シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

麗澤中学校

2021年07月掲載

麗澤中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.数年先の大学受験・大学入学後を見据えた授業を行う麗澤中学校数学科

インタビュー2/3

この入試問題からすると授業も楽しそうだと思ったのですが、どのような授業を心がけていますか?

室谷先生 数学科全体としては、中高6ヵ年であるので、大学入学後を見据えた授業にしようと心がけています。公理・定義・定理というのは高校や大学でも必要なので、「中学生の今のうちにこの言葉をしっかり覚えておきましょう」といった話はしています。

また、数学をやってみたい、数学は楽しい、という生徒にはさらに成長してもらいたいなと思っています。
特に発展的に進める生徒は、計算などもどんどんやっていけるので、その生徒たちには「困っている生徒に教えてあげて」と言うと、すんなり教えてくれるんですね。

他に心がけていることとして、必要となる種は今のうちに蒔いておこう、とは意識しています。疑問について調べたい生徒は調べてもいいし、今分からない生徒はまだわからないままでもいいし、その発表を「へえー」って聞いて楽しむ生徒がいてもいいし、基本をやる生徒がいてもいいです。

興味関心を引くような問題を投げかけて、生徒たちが自分たちで「探究」していくということですか。それを実現されているということですね。

室谷先生 種がちゃんと蒔けているか不安になることもありますが、できる限り蒔いておきたいですね。先に進んでいる生徒の中には「分かってるよ」「知ってるよ」という顔もするんですが、たまに知識がこんがらがってしまっている生徒もいます。これとこれは違うよ、と声をかけると「えっ?」って顔をする時があるんですね。そういう生徒には、先に進むのもいいけれど戻って整理する作業も勉強なんだ、と伝えるようにはしています。

不思議に思ったところで一旦止めるというのも大事ですよね。

室谷先生 目を見て「ん?」という顔をしたときには、じゃあ「その次いきましょう」と問題を解かせます。「なんでなんだろう?」という疑問を解決するには、そこで解かせてスタートさせるのが良いのかなと思いますね。

麗澤中学校 コモンホール

麗澤中学校 コモンホール

教え合いの精神がしっかり根付いた校風

生徒同士の教え合いは、麗澤中学校を取材すると必ず毎回どの教科でも出ます。生徒同士のつながりや助け合いには、校風や理念が関係しているんですか?

室谷先生 そう思います。先輩から引き継ぐのもあるでしょうし、そういう生徒たちが入ってきてくれているというのもあると思います。実際にあった話ですが、入学当初下校前に残っていた中学1年生が、とある3年生に話しかけられたことがあって、その際に「困っている勉強はないの?」と聞かれ、1年生は「数学の計算がわからない」と答えたそうです。そうしたところ3年生は「じゃあ見てあげるよ」ということで、その後帰るまでの20~30分、計算練習を教えてくれたとか。

このように、本校には困っていたら面倒を見てくれる生徒がたくさんいるんだろうと思います。それを実行してくれている生徒たちが入ってきているし、そのまま育ってくれるというのが1つの伝統になっているのではないでしょうか。

麗澤中学校では数学が大好きで理系に進みたいという生徒は多いですか?

室谷先生 この前の卒業生の中に、すごく数学が好きで良くできる生徒が2人いたのですが、どちらも数学は大好きだけど、数学を用いた何かができないか?と考えた上で理工学系に進みました。2人ともいろんなことに関心がある生徒だったので、数学だけでなく理科にもしっかり派生をして、数学・理科を1つのものとして学びながらも「それをどう活かすか?」「自分が活躍できる場所はどこなんだろう?」と考えて進路を決めてくれたのは、とても嬉しかったことを覚えています。

麗澤中学校 掲示物

麗澤中学校 掲示物

数学が難しいと思ってしまう生徒は「頑張りすぎないこと」

一方で、数学があまり好きではない、つまずいている、という生徒に対してはどうアプローチされていますか?

室谷先生 数学を「難しい」と感じてしまうのは、頑張っても点が取れないからだと思います。
算数・数学ができる生徒はものすごくできてしまうため、序列が変わりづらく差が広がっていく一方なんですね。

点数の低い生徒はテストを返すと「こんな点数を取ってしまった」という顔をするんですが、この点数が良いとか悪いとかは考えてほしくはありません。今取れた点数がたまたまこの点数だったというだけで、今の力を表しているだけだと思えばいい、とは伝えています。点数を上げたいと思うのかが重要です。

そして点数を上げたいと思うなら、まずは「+10点」を目指しましょう、と話をしています。
苦手な生徒は、自分はペースがゆっくりだと思えばよく、できる生徒はできない生徒をフォローしてあげて、+10点のところが+15点になるようにサポートしてあげながら、自分も+10点を目指して頑張って、全員でちょっとずつできるようになればいいねということです。

数学嫌いを100%なくすのは難しいかもしれないですが「難しいから嫌い」というのではなく「難しいけど頑張りすぎず、少しずつ取り組んでいく」ということを意識して声掛けするようにしています。

しっかり生徒が意図を組んでくれ、一緒にやってくれる生徒も多いので、そういった意味では生徒に対する教員側の感謝というのもありますね。

麗澤中学校 食堂

麗澤中学校 食堂

インタビュー2/3

麗澤中学校
麗澤中学校1935(昭和10)年、法学博士の廣池千九郎により、現在の麗澤大学の前身・道徳科学専攻塾が開校。2002(平成14)年に麗澤中学校が新設され、同じキャンパスに大学・高校・中学校・幼稚園がそろう総合学園となった。
創立者が学問的に体系づけたモラロジーに基づく「知徳一体」を教育理念とし、「感謝の心」「思いやりの心」「自立の心」を育てることを教育方針に掲げる。
麗澤教育のシャワーを浴びて巣立った卒業生たちは、様々な領域で活躍の場を広げている。6年間を「自分自身をみつめ、発見する」「興味・関心を深め、進路につなげる」「進路を選択し、道を拓き夢を実現する」の3段階に分け、それぞれリサーチ、実践体験、情報処理、再構築、そして成果をプレゼンテーションする作業を基礎から学ぶ。
とりわけ、2003年から始まった「言語技術教育」は、全ての学問領域で必要となる「聴く・話す・読む・書く」を総合的に鍛える麗澤ならではの教育。中高一貫カリキュラムの1年から4年次を通して、グローバル社会で通用するものの考え方、そして、自らの考えを主張できる発信力を研鑽していく。
「よりよく学ぶためには自然の中で心を癒すことが必要」という創立者の信念に基づき、47万平方メートルの広大な校地は緑豊かで自然がいっぱい。グラウンド3つ、体育館2つ、テニスコート6面、ラグビー場(人工芝)、武道館、寮(高校のみ)、メディアセンターや9Hのゴルフコースなど施設は申し分なし。