シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

麗澤中学校

2021年07月掲載

麗澤中学校【算数】

2021年 麗澤中学校入試問題より

次の問いに答えなさい。

(問1)1÷3を分数と小数で表しなさい。
ただし、小数は小数第3位まで答え、それ以降も続く場合は「…」をつけて答えなさい。

(問2)2つの数AとBが等しいとき、その2つの数にある数Cをかけた2つの数A×CとB×Cは等しいか等しくないか答えなさい。

(問3)(問1)で求めた分数と小数のそれぞれに3をかけた数を比べて気になることを(問2)をふまえて書きなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この麗澤中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)分数 \(\frac{1}{3}\) 小数 0.333…

(問2)等しい

(問3)(例)
\(\frac{1}{3}\)と0.333…は、どちらも1÷3の計算結果である。よって、\(\frac{1}{3}\)と0.333…に同じ数である3をかけたら計算結果が等しくなるはずなのに、\(\frac{1}{3}\)×3=1、0.333…×3=0.999…というように別のものになった。1と0.999…を等しいといってよいのかどうか気になった。

解説

(問1)分数 1÷3=\(\frac{1}{3}\)
小数 1÷3=0.333…

(問2)等しい値に同じものをかけても、等しいという関係は保たれます。ですから、AとBが等しければ、A×CとB×Cも等しくなります。

(問3)\(\frac{1}{3}\)と0.333…は、どちらも1÷3の計算結果ですが、
\(\frac{1}{3}\)×3=1
0.333…×3=0.999…
というように、同じ数である3をかけたら、見た目が別のように見えます。

(参考)「…」が持つ意味の1つに、無限に続くというものがあります。
0.999…の「…」がない場合(有限の場合)はどうなるか調べてみます。
例えば、0.9ならば、1-0.9=0.1となります。
同じように、
0.99ならば、1-0.99=0.01、
0.999ならば、1-0.999=0.001、
0.9999ならば、1-0.9999=0.0001、
となります。
このことから、0.9999の9が増えるほど、1との差が0に近づいていくことがわかりますが、有限の場合は1との差が0になることはありません。
0.999…の9が無限に続くと、1と0.999…の差は0となり、1と0.999…は等しいと考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

子ども達にとっては見なれた計算問題から始まって、無限の不思議さを感じることへとつながる問題です。無限には、不思議なことがたくさん隠れています。その例の一つが、この問題にある小数と分数の話です。

この問題では、実際に計算することから始まります。次に、「等しいものに同じものをかけても等しくなる」という等式の性質を確認します。そして、この2つの作業を通し、出現した「0.999…」と「1」という数。子ども達は、この2つの数の関係を探求します。

算数・数学というと、一つの正しい答えを出す科目という印象が強いかもしれません。しかし、算数・数学の世界では、不思議なことが起こったり、変だなと思うことが起こったりします。その度に、数学者たちは定義を見つめ直したり、ユークリッド幾何学から非ユークリッド幾何学が生まれたように新たな世界を創ったりしてきました。

この問題は、「不思議だな」「変だな」「気になる」と子どもの中からわき上がる気持ちを受け止める問題です。算数の問題を解く力だけでなく、探求の第一歩となる「?」を大切にしたいという意図が伝わってきます。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。