シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

西武学園文理中学校

2021年06月掲載

西武学園文理中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.仮説・検証のサイクルを自分で回す

インタビュー3/3

実験は必ず仮説を立てて予想する

加藤先生 本校の理科教育で大切にしていることは、「実験をしてレポートを作成する」ことです。
中学に2つ、高校に3つある実験室をフル活用して、基本的には毎時間、実験室で何かしらの現象を見せるようにしていました。コロナ禍でこれまでのような頻度ではできませんが、それでも演示実験をするなどして生徒が実物を見て実感できるようにしています。

実験で学んだこと、実験でしか学べないことは記録としてレポートにまとめます。必ず「予想(仮説)」を立てます。実験の背景・目的、材料・方法、結果(データ)をまとめて、考察(データの解釈)を行います。この流れは入試問題にも盛り込むように心がけています。
今後は、教科書的な実験で実験操作のスキルを鍛えておいて、高校では生徒自身で実験を立案してもらうことも計画しています。

西武学園文理中学校 科学室

西武学園文理中学校 科学室

レポートは次につながるような助言が理想

加藤先生 生徒は結果が予想通りにならないと「ダメだ」と思ってしまいますが、それも実験のうちです。スケッチも自分の目で見た通りにかいてもらいたい。本当にそれでいいのかと不安を感じる生徒もいますが、目に見えるものをあるがままを素直に受けとめて客観視できるようになってもらいたいですね。

予想通りの結果にならなかったとき、「なぜだろう?」と疑問を持つことも大切です。予想と違う事実をどのように解釈すればいいか、自分で考えられるように指導しています。
レポートは出しっぱなしにならないように、次につながるようなチェックを意識しています。何を記録して、何を考えることができているかを把握した上で、理想は、それぞれの生徒の成長につなげられるようなフィードバックができること。生徒一人ひとりが教員のコメントを踏み台にして成長できるようなシカケをしていけたらと思っています。

対面授業のよさは時間差なしに議論できること

加藤先生 新型コロナウイルス感染拡大でオンライン授業や動画配信を行った結果、対面でしかできないこと、オンラインの方が効率がいいことが見えてきました。
対面授業のいいところは、タイムラグなしに議論できることです。「どう思う?」と発問すれば、生徒からテンポよく意見が返ってきます。オンラインではどうしても数秒間のタイムラグが発生するためテンポがつくれません。横から割り込むのも難しい。活発な議論は対面の授業だからこそという思いを強くしました。
オンラインではイレギュラーなことに対応しにくいことを経験しました。説明の途中で生徒に「わかりません」と言われたとき、対面授業なら「わからない人は手を挙げて」と確認したり、生徒の顔色を見たりして、補足説明にどれだけ時間をかけるか判断できますが、オンラインではそれがほぼできません。

逆に、知識を伝える、整理する、あるいは生徒の発言を促すなど、わざわざ教室に集まらなくてもできることが結構あると気づきました。小テストはアプリケーションソフト使えば自動採点で結果がデータ化されます。問題別の正答率のグラフを生徒に見せて、正答率が低かった問題を重点的に解説しています。まんべんなく解説するのではなく、いい意味で選択と集中ができるようになりました。特に演習型の授業は大きく変わりました。

西武学園文理中学校 掲示物

西武学園文理中学校 掲示物

仮説と検証を繰り返し、科学的に思考する

中高6年間でどんな理科の力をつけてもらいたいと思っていますか。

加藤先生 まずは中学で基礎知識をしっかり積み重ねることは必須です。知っていると気づけるヒントになります。本校は「グローバル」と「ホスピタリティ」を掲げています。異文化の相手のことを知っているほど、多くの人たち、国や地域と関わる取っかかりになります。
確かな知識のインプットできたら、科学的に思考できるようになってもらいたい。未知のものに違和感を覚える、疑問を持つのは知っていることと比べるからです。何がわからないのか、知らないのかを理解すること、言い換えると課題を発見することです。
その課題に対して、知っていることからアウトプットして仮説を立てます。それを実験・観察によって検証し、得られた結果を解釈してまた仮説を立てることを繰り返します。最終的には仮説と検証のサイクルを自分で回せるようになってもらいたいですね。
本校は中高の授業をかけ持ちしている教員もいるので、高2の段階で身につけてもらいたい力を見据えて、中学の早い段階から取り組むことができていると思っています。

中1・高1の全クラスをグローバル化

稲生先生 昨年度は海外プログラムがすべて中止になりました。今年度も予定はしていますが、中止になることも想定して、新たに中1と高1の全クラスにグローバル化のプログラムを導入しました。学校にいながら週1回、海外の授業を受けられるもので、事前に課題に取り組み、自分なりの答えを持って授業に参加し、ディスカッションやグループワークの成果をまとめます。英語を話すだけでなく、他国の文化や考え方も理解できるようになってもらいたいと思っています。なお、このプログラムは中2・中3と高2のグローバルクラスにも導入しています。

柴田校長 コロナ禍でさまざまなグローバルプログラムができなくなった今、高校で40年間、中学で30年間取り組んできたグローバル教育を検証しています。
体育の授業はグローバルを謳っていない学校と何か違いがあるか、英語の授業は英語を扱っていれば、世界史の授業は世界の歴史を教えていれば、それでグローバル教育と言えるのか。グローバルを標榜している学校としてどんな授業ができるか、各教員から意見を出してもらっています。
行事に限らず普段の授業でもグローバル教育ができるような、西武文理らしい魅力のあるグローバル教育を展開していきたいと考えています。

教頭/稲生 博士先生

教頭/稲生 博士先生

インタビュー3/3

西武学園文理中学校
西武学園文理中学校栄養士、臨床検査技師などの専門学校を系列にもつ西武学園が1981(昭和56)年に高等学校を開設。93(平成5)年には満を持して中学校を開設。短期間で東大などの難関大学に合格者を輩出するほどの進学校として成長してきた。2004(平成16)年には小学校も開校。緑あふれる武蔵野の台地、入間川のほとりの恵まれた自然環境のなかに、レンガタイル貼りの校舎が建つ。中学校校舎は「銀河館」、高等学校校舎は「大志館」「希望館」「躍動館」など、建物ごとに名称がついている。多目的ホール、総合学習センター、情報館(I・I・YOU館)、LL教室など施設は充実している。キャンパスのあちこちに彫刻作品が飾られている。「誠実・信頼・奉仕」を校訓とし、中高一貫教育をとおして、全員が目標とする大学に進学することができるような教育を行うとともに、“世界を見つめ、人を想い、未来を創る”ための、6年間のさまざまな出会いやプログラムを通じて、不確実な未来社会をたくましくしなやかに生き抜く人材を育成する。シンボルマークは熊(BEAR)で、これには英語の「耐える」という意味も込められている。
2021年度から、中学1年生のクラス編成が変更となった。将来、東京大学や京都大学、国公立大学医学部などの難関大学への現役進学を希望する生徒を対象としたグローバル選抜クラスと、高度な英語力と知的土台をベースに、グローバルシチズンシップを備えたグローバル人材の育成をめざし、多彩な進路を希望する生徒に合わせた、きめ細かい指導を行う、グローバルクラスの2つのクラスから編成されている。また、朝のSHR前の時間を利用した確認小テスト(S時限)、理科実験の2人1組での指導など、密度の濃い授業で生徒の向学心を引き出している。基礎学力の定着に英検・漢検などを活用している。
高校進学については、2021年度から内部進学者は高校進学時に高校入学生との混成クラス編成がスタート。新たな人間関係の中で切磋琢磨し合える環境を構築し、将来社会で求められる協働力の育成と新たな価値観の発見、創造を可能とするため、高校の全クラスにおいて、高校入学生との混成クラスを編成している。また、内部進学者は高等学校進学時には希望や成績等により「グローバル選抜クラス(普通科)」、「グローバルクラス(普通科)」、「先端サイエンスクラス(理数科)」のいずれかのクラスに進学。そして、混成クラス編成にともない、数学・英語の授業では習熟度別授業を展開。中高一貫生と高校入学生の入学時の学習進度が異なるため、生徒個々に合わせたきめ細かな学習指導を実施している。
令和3年度より中学校、高等学校共に新たなグローバル教育プログラムをスタート。その一つが「GLOBAL COMPETENCE PROGRAM」だ。タブレットパソコンを利用するこの授業は、全て英語で行われる。予習・授業・振り返りのサイクルの中で、コミュニケーション手段としての実用的な語学力、異文化を理解する幅広い知識・教養、多角的な視点に基づいた高度な思考力、相手の考えを受け入れ相互に伝え合う力やホスピタリティの精神、世界をリードするグローバルな行動力の6つのコンピテンスを身につける。
また、中学校3年生でイタリア研修旅行、高校2年生でも海外研修旅行(グローバル選抜クラスとグローバルクラスはオーストラリアまたはマレーシア・シンガポールの選択、先端サイエンスクラスはアメリカ)を実施し、2度の海外研修を通じて、日本とは異なる言語、歴史、習慣などの文化の違いを肌で感じ、地球規模で物事を考えることが出来るような視野を養っている。
その他、中2のグローバルクラスではセブ島語学研修を行い、高1でネイティブスピーカーと寝食を共にするイングリッシュ・サマーキャンプなどメニューが多彩。また、中2では古都鎌倉を散策するほか、奈良・京都研修旅行を実施する。一方中学校のクラブ活動は、他校には少ないクラブ活動も盛んで、文化系では奇術研究部が“南京玉すだれ”などの古典芸能に挑戦するのをはじめ、体育系のライフル射撃部も活発に行われている。また、全国大会出場のスキー部や硬式テニス部、県大会出場の女子バレーボールも目覚ましい活躍をしている。毎週土曜日には、探究授業の一環として行われる、生徒の自主性や創造性を育むアクティブ・ラーニングとして、CA「Creative Activity創造的活動」授業(50分)を開講。中学1年生から3年生が各CAに混在するため、学年の枠を超え、お互いに協力しながら自主的に活動し、課題解決のための資質や能力を育みます。20講座の中から1講座を選択し、必修授業として1年かけて探究活動に取り組んでいる。