シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

西武学園文理中学校

2021年06月掲載

西武学園文理中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.基礎知識の定着と応用力を測る

インタビュー2/3

入試問題にはザゼンソウの写真を、あえて載せなかった

加藤先生 もしかすると、ザゼンソウが架空の植物だと思った受験生がいたかもしれませんが、それでも構いません。「『エルマーの冒険』に出てきた植物」という情報を入れたのは、架空のものだとすれば、固定観念に縛られることがないだろうと思ったからです。これがチューリップなら日常の経験にものすごく引っ張られてしまうでしょう。

この問題にはザゼンソウの写真はありません。どんな意図はあったのでしょうか。

加藤先生 入試検討会でも「写真を掲載しないのか」と聞かれましたが、ザゼンソウを見て答えさせる問題ではありませんから、あえて載せませんでした。
サトイモ科に属するなどヒントになるような情報は自由な発想を邪魔してしまうと思い、極力削除しました。具体化すればするほど、その情報に思考は引きずられてしまいます。合っている・合っていないにとらわれず、与えられた情報を基に頭の中で映像化してもらいたかったのです。

校長/柴田 誠先生

校長/柴田 誠先生

仮説は「仮の説明」だから正しさは問わない

筋道が通った説明なら、実際の現象かどうかにかかわらず点数はもらえるのでしょうか。

加藤先生 生物以外の教員から、「寒い時期だから『昆虫が暖を取る』という発想はどうか」と言われました。それを聞いて仮説としては妥当だと思いました。そうした解答は実際にはありませんでしたが、もしあれば正解になり得たと思います。
「仮説」という言葉は中学生や高校生にはわかりにくいので、私は「仮の説明」としています。「仮のこと」だから、合っている・合っていないは関係ありません。検証してはじめて仮説が合っているかどうかがわかります。

中学生に「君の予想でいいんだよ」と言うと、これはどうか、あれはどうかと意見が出てきます。それに対して「そんなのあり得ない」という声が出てきますが、「確かめていないのだから、あり得ないとは言い切れない」と言います。もし仮説が1つも出てこなければ何も考えていないことになるので、頭をやわらかくしてあげるように誘導します。

西武学園文理中学校・高等学校 BIG BEAR GYM 北斗館(体育館)

西武学園文理中学校・高等学校 BIG BEAR GYM 北斗館(体育館)

入試では知識と技術をバランスよく測る

加藤先生 本校の理科の入試問題は、大問4題構成で(4題中3題選択)、エネルギー、粒子、生命、地球の各分野から、それぞれ小問を5~6題出題します。どの分野もバランスよく学習するようにしましょう。
基礎知識の定着はもちろんのこと、思考力を試す問題も出題します。長い文章を読んで必要な情報を取り出す、初見のグラフを読み解く、計算問題などで受験生の技術を見ています。手も足も出ない、全く解けないような問題は出しません。1つ1つの小問を積み重ねていけば得点できるように作問しているつもりです。

理科的思考を再現した長い会話文の問題

加藤先生 長い文章を読ませる問題として、2021度第1回入試の粒子の問題ではA4用紙約2枚にわたる会話文を取り入れました。作問者の思いが受験生に伝わっているといいですね。

会話文としては長文ですが、なぜのりで紙をつなぎ合わせられるのか、当たり前を疑うことの大切さが伝わるおもしろい問題だと思いました。

加藤先生 「○○って何だろう」という根本的な問いは、ああでもない、こうでもないと会話が止まらない状況が理想です。実際に話をすると長くなってしまうことから、これだけの長文になりました。
私たちが求める主体的な学びが実現するとき、生徒の間では議論が止まりません。探究活動の一環として中1~中3が混在して活動するCA(Creative Activity)では、課題を解決しようと学年の枠を超えて意見交換しています。このとき生徒たちはいい意味でのめり込んでいます。

西武学園文理中学校 掲示物

西武学園文理中学校 掲示物

インタビュー2/3

西武学園文理中学校
西武学園文理中学校栄養士、臨床検査技師などの専門学校を系列にもつ西武学園が1981(昭和56)年に高等学校を開設。93(平成5)年には満を持して中学校を開設。短期間で東大などの難関大学に合格者を輩出するほどの進学校として成長してきた。2004(平成16)年には小学校も開校。緑あふれる武蔵野の台地、入間川のほとりの恵まれた自然環境のなかに、レンガタイル貼りの校舎が建つ。中学校校舎は「銀河館」、高等学校校舎は「大志館」「希望館」「躍動館」など、建物ごとに名称がついている。多目的ホール、総合学習センター、情報館(I・I・YOU館)、LL教室など施設は充実している。キャンパスのあちこちに彫刻作品が飾られている。「誠実・信頼・奉仕」を校訓とし、中高一貫教育をとおして、全員が目標とする大学に進学することができるような教育を行うとともに、“世界を見つめ、人を想い、未来を創る”ための、6年間のさまざまな出会いやプログラムを通じて、不確実な未来社会をたくましくしなやかに生き抜く人材を育成する。シンボルマークは熊(BEAR)で、これには英語の「耐える」という意味も込められている。
2021年度から、中学1年生のクラス編成が変更となった。将来、東京大学や京都大学、国公立大学医学部などの難関大学への現役進学を希望する生徒を対象としたグローバル選抜クラスと、高度な英語力と知的土台をベースに、グローバルシチズンシップを備えたグローバル人材の育成をめざし、多彩な進路を希望する生徒に合わせた、きめ細かい指導を行う、グローバルクラスの2つのクラスから編成されている。また、朝のSHR前の時間を利用した確認小テスト(S時限)、理科実験の2人1組での指導など、密度の濃い授業で生徒の向学心を引き出している。基礎学力の定着に英検・漢検などを活用している。
高校進学については、2021年度から内部進学者は高校進学時に高校入学生との混成クラス編成がスタート。新たな人間関係の中で切磋琢磨し合える環境を構築し、将来社会で求められる協働力の育成と新たな価値観の発見、創造を可能とするため、高校の全クラスにおいて、高校入学生との混成クラスを編成している。また、内部進学者は高等学校進学時には希望や成績等により「グローバル選抜クラス(普通科)」、「グローバルクラス(普通科)」、「先端サイエンスクラス(理数科)」のいずれかのクラスに進学。そして、混成クラス編成にともない、数学・英語の授業では習熟度別授業を展開。中高一貫生と高校入学生の入学時の学習進度が異なるため、生徒個々に合わせたきめ細かな学習指導を実施している。
令和3年度より中学校、高等学校共に新たなグローバル教育プログラムをスタート。その一つが「GLOBAL COMPETENCE PROGRAM」だ。タブレットパソコンを利用するこの授業は、全て英語で行われる。予習・授業・振り返りのサイクルの中で、コミュニケーション手段としての実用的な語学力、異文化を理解する幅広い知識・教養、多角的な視点に基づいた高度な思考力、相手の考えを受け入れ相互に伝え合う力やホスピタリティの精神、世界をリードするグローバルな行動力の6つのコンピテンスを身につける。
また、中学校3年生でイタリア研修旅行、高校2年生でも海外研修旅行(グローバル選抜クラスとグローバルクラスはオーストラリアまたはマレーシア・シンガポールの選択、先端サイエンスクラスはアメリカ)を実施し、2度の海外研修を通じて、日本とは異なる言語、歴史、習慣などの文化の違いを肌で感じ、地球規模で物事を考えることが出来るような視野を養っている。
その他、中2のグローバルクラスではセブ島語学研修を行い、高1でネイティブスピーカーと寝食を共にするイングリッシュ・サマーキャンプなどメニューが多彩。また、中2では古都鎌倉を散策するほか、奈良・京都研修旅行を実施する。一方中学校のクラブ活動は、他校には少ないクラブ活動も盛んで、文化系では奇術研究部が“南京玉すだれ”などの古典芸能に挑戦するのをはじめ、体育系のライフル射撃部も活発に行われている。また、全国大会出場のスキー部や硬式テニス部、県大会出場の女子バレーボールも目覚ましい活躍をしている。毎週土曜日には、探究授業の一環として行われる、生徒の自主性や創造性を育むアクティブ・ラーニングとして、CA「Creative Activity創造的活動」授業(50分)を開講。中学1年生から3年生が各CAに混在するため、学年の枠を超え、お互いに協力しながら自主的に活動し、課題解決のための資質や能力を育みます。20講座の中から1講座を選択し、必修授業として1年かけて探究活動に取り組んでいる。