シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

中村中学校

2021年05月掲載

中村中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.世の中の出来事に「なぜ?」の疑問を持つ

インタビュー3/3

授業が変われば成績の評価方法も変わる

入試問題が変わってきましたが、授業も変わってきましたか。

江藤先生 教員がパソコンを持たずに職員室を出ることはまずありません。資料を見せたり、聞かせたり、何かしらICTを活用していると思います。中1の英語の授業は、立ったり座ったり、話したり、歌ったり、じっとしていることがありません。昔は座って読んでいるだけでしたが、大分様変わりしました。

富田先生 そうした授業の変化に合わせて成績の評価方法も変わりました。成績評価は定期考査が30%、70%はレポートなどで総合的に評価します。普段の学習の取り組みも大切にしています。

江藤先生 生徒には評価基準を示しているので、レポートやプレゼン発表、夏休みの課題など、何がどうなれば評価されるかというのはわかっているはずです。

中村中学校 校舎内

中村中学校 校舎内

中1から「なぜ?」を大切にレポート作成

授業の様子について教えてください。

富田先生 講義一辺倒ではなく、作業をしたり、調べたことを発表したり、ゲーム形式で行うときもあります。
私は地理を教えていますが、中1の地理のレポートは自分が興味のある国について調べます。地形や気候は必ず入れて、食べ物や衣服などを切り口にします。考察としては、その国の自然と人間の生業の関係について考えます。
中学の修学旅行で京都へ行きますが、伏見が日本酒の名産地なのはなぜか、清水寺付近に豆腐屋が多いのはなぜか、「なぜ?」という疑問を大切にしています。「日本酒に使う水と豆腐に使う水は違うんだよ」と、ヒントを与えながら考察してもらいます。
中1の夏休みの課題は、自宅周りの地図の作成です。Google mapではなく自分の足で調べて作ります。そうした課題の制作物は教室内に掲示したり、iPadで共有たりしています。生徒同士で評価することもしています。話し合いをすると発言する生徒としない生徒がいますが、iPadを使うと人前で発言するのが苦手な生徒も意見を出してくれます。

中村中学校 校舎模型

中村中学校 校舎模型

“推し”の歴史上の人物についてプレゼン

江藤先生 私は歴史を教えています。歴史は前後の出来事の因果関係を大事にしています。歴史もレポートはありますが、私は新たな試みとして、iPadの「Keynote」を使ったプレゼンテーションを高1で行いました。少人数クラスだからこそできたのですが、なかなかおもしろかったですね。
歴史上の人物を1人選んで、選んだ理由と、人物の功績と功績に対する感想を15分間にまとめて発表してもらいました。織田信長など戦国武将が多い中、天草四郎を選んだ生徒が「すごい人なんです!」と熱く語っていたのが印象的でした。
持ち時間15分は長いものの、結構話してくれましたね。発表後は質疑応答もしました。今回、振り返りのフィードバックのみで他者評価はしませんでしたが、また機会があればやりたいと思いました。

学年が上がるにつれ客観的に書けるようになる

「書く力」のレベルアップはどのようにされているのですか。

江藤先生 中学生は主観的に書くことが多いと思いますが、学年が上がるにつれて、資料やデータなどの情報に基づいて客観的に書けるようになります。「作文」と「論文」の違いでしょうか。
国語の授業では視点の持ち方を意識していて、多面的・批判的思考力が身についてきます。すると客観性もついてくるので、それが社会科の書く力にもよい影響を及ぼしていると思います。

中村中学校 校舎内

中村中学校 校舎内

「青森=りんご」の丸暗記では楽しくない

江藤先生 肌感覚ですが、入学した生徒を見ると社会科嫌いはそれなりにいると感じます。
歴史の場合、「平安時代は好きだけれど近代は嫌い」「あの人物の時代は好きだけれど他は興味がない」など、好き嫌いが極端です。「この人はカッコよかったんだよ」と、女子が興味を持ちそうな話題を提供して、引っかかってくれないかなと思っています。いろいろなタネを蒔いておいて、1つでも芽が出てくれればと思って教えています。

富田先生 ある学年は地理が嫌いな生徒が多くて、理由を聞いたら、「(小学校のときに)青森はりんご、山梨はぶどうなど、覚えることばかりでイヤになった」と言うのです。それではつまらないと思っても仕方ありません。どうして山梨でぶどうの生産が盛んなのか調べると少しは興味がわいてくるのでしょうが、「なぜ?」ということなしに覚えるのは苦痛です。

社会科があまり好きではない、苦手な受験生は、どのように社会科の学習に取り組めばいいでしょうか。

江藤先生 社会科イコール暗記だと思ったら苦しいですね。学んだことが世の中とつながると興味が持てるようになるのではないでしょうか。世の中の出来事に目を向けて、「なぜだろう?」と考えてほしいですね。

社会科学習を通して世の中に興味を持とう

中高6年間でどんな社会科の力をつけてもらいたいと思っていますか。

富田先生 社会科の目標として「公民的資質を身につける」ということがありますから、その点は大切にしています。社会人として、社会に貢献する力を身につけさせたいと思っています。

江藤先生 社会科は世の中とつながりやすい教科ですから、授業を通して世の中のことに興味を持ってほしいですね。

学校としてSDGsの活動は何かされていますか。

富田先生 少しずつ始めています。特に中2・中3でテーマを決めて、自分たちで調べています。京都・奈良・広島の修学旅行では、「平和」や「住み続けられるまちづくり」といったSDGsをテーマに現地でフィールドワークを行い、その成果を帰ってからまとめて発表しました。こうした取り組みを増やしていきたいと思っています。

中村中学校 SDGs掲示物

中村中学校 SDGs掲示物

インタビュー3/3

中村中学校
中村中学校明治36(1903)年、渋澤栄一と並ぶ明治屈指の実業家中村清蔵により、私立深川女子技芸学校として創立される。初代校長に女子教育の第一人者戸野みちゑを迎え、小名木川のほとりに校舎を新築し、現在の中村学園の前身である中村高等女学校として開校したのが明治42(1909)年。教育機関が乏しかった大正時代に”下町の華族学校、中村”の基礎が築かれた。
関東大震災、東京大空襲などにより校舎を3度消失しながらも、まさに不死鳥の如く復活を遂げ、創立時と変わらぬ精神のもと常に時代のニーズを捉えた変革を続けながら未来を見通した教育を追求してきた。現在、緑豊かな清澄庭園を臨み、落ち着いた環境のなかで6年間のびのびと過ごせる。本館最上階にある図書室「コリドール」からは四季折々の自然風景が楽しめ、東京スカイツリーも見ることができる。
授業時間を確保し、学力を向上させる週6日制。1年生後期から数学・英語の習熟度別授業を導入されている。4年生からは、目的に応じたコース制を採用している。全教員が2~3人の生徒をチューターとして受け持ち、面談等を通じて有効なアドバイスをしながら、進路決定まで担任と二人三脚でサポートする。学習環境等、諸般の事情により家庭で集中して学習できない生徒は、自学自習の場所と機会を提供する制度として、夜の8時まで特別残留が認められ、教室で集中して学習することもできる。
朝のホームルームのうち10分間は「朝読書」の時間。静かな時が流れたあと、落ち着いた雰囲気で1時間目の授業がスタートする。さらに週に1度、洋書の日を設け、多読が推奨されている。また、「読書ノート」を活用し、感じたことや考えたことを言葉にして書き記すことで、インプットしたことを深化させる読書体験を積み上げる。
中学2年が全員参加する「国内Summer School」は、「深川めぐり」を土台とし、歴史(江戸、中村学園)・人物(松尾芭蕉・伊能忠敬)・食文化(深川めし)・文化(祭り・相撲)・隅田川といったテーマを設定し、英語で紹介する3日間のプログラム。2日目に、フィールドワークとして地元深川を外国の方に案内する。各グループに1人のネイティブの教員がつき、スピーキングトレーニング・発音リスニングトレーニング・プレゼンテーションの仕方・テーマ別学習を行い、最終日には英語でプレゼンテーションも実施する。Reading・Listening・Writing・Speakingの4技能だけでなく、コミュニケーション力・プレゼンテーション力をも磨く。中学2年・3年希望者参加 の11日間のプログラムとして、8月の11日間、アメリカ・コロラド州デンバーの現地校などを訪問する「海外SUMMER SCHOOL」もある。基本的に現地学生の家にホームステイし、同じ生活体験を通して活きた英語を体得する。
部活動も盛んである。全国優勝30回以上を誇る伝統あるバレーボール部をはじめ、11の運動部があり、文化部は、吹奏楽や演劇、ハンドベル、中村ならではのボランティア等、15ある。文化祭「清澄祭」は、英語発表会のEnglish Dayを含む盛りだくさんな2日間で、クラスや学年、部活動など活躍の場がたくさんある。