シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

中村中学校

2021年05月掲載

中村中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.知識の定着だけでなく書く力も問う

インタビュー2/3

写真やグラフがカラーで見やすい入試問題

社会科の入試問題はどんなことを大切にされて作問していますか。

富田先生 本校の入試問題は、大問1が地理、大問2が歴史、大問3が公民、そして大問4がこの問題のような論述という構成です。
受験者の基本的な知識の定着度合いはどうしても測りたい。入試検討会では、問題に対して「本当に知らなければいけないのかどうか」をよく議論しています。小学生が押さえておくべきことなのか、違うことを聞いた方がいいのではないかなど、よく吟味しています。
一方で、将来求められる「書く力」についても見ておきたいので、出題は知識問題をやや多めに出して、文章記述問題で書く力も試したいと思っています。

江藤先生 以前は知識問題が多かったですが、世の中で求められる力に応じて変わってきています。

ところで、この問題の写真もそうですが、貴校はグラフなどの図がカラーですね。

富田先生 写真だけでなく図表もカラーにすると見やすくなります。「カラーだと見やすい」ということは中1からよく聞きます。見やすければ取り組みやすくなるのではと思います。

教頭/江藤 健先生

教頭/江藤 健先生

設問の誘導に乗れば正解にたどり着きやすい

資料から読み取って答える問題も目立ちますね。

富田先生 それは意識して出題しています。本校の入試問題の傾向は例年ほぼ変わらないので、そうした問題は過去問で対応してきているように思います。

江藤先生 オープンクエスチョンのようなふりをしながら、資料や設問文で答えを誘導しているので、答えはある程度限られるように作問しています。完全な自由解答ではないので、こちらの誘導にうまく乗っかってくれれば、正解にたどり着きやすいと思います。

それには設問の意図を読み取る力も必要です。その点はいかがですか。

富田先生 そうした力を試す問題を出題しているので、それなりに対策してきているように思います。的外れな解答はあまりありませんね。

江藤先生 独りよがりな解答もあまり見当たりません。その点は、読み取ったことから素直に解答できていると思います。

設問文の「ひと言」が作問の意図を示していたり、問題を解く手がかりになったりします。その点、貴校の作問の丁寧さを感じます。

江藤先生 そうした一文を入れるかどうかは、入試検討会でかなり議論します。その議論が、結構楽しいところでもあります。

中村中学校 教室

中村中学校 教室

書くことに抵抗がない生徒が増えた

江藤先生 この問題のような論述問題を出題するようになったのは、3、4年前からです。書ける子どもが入学しているかどうかはわかりませんが、今は、書くことが苦にならない生徒が多いのは確かです。入学すると事あるごとに書かせますが、感想文でも何でも当たり前のように書いてくれます。

10年前と比べると文章記述問題が増えていますね。

富田先生 インプットだけではいけないと気づいてから書かせるようになりました。生徒を見ていて、将来どんな力が求められるか考えたとき、中学入試の問題も変えなければいけない、アウトプットも必要だと思いました。

江藤先生 社会科に限らず各教科で書く力、表現できる力を測る出題になってきています。

公民の数値の基礎知識は覚えよう

入試時間は社会科と理科合わせて50分ですが、取り組み具合はいかがですか。

江藤先生 試験監督の教員に聞くと、社会科から解いたり理科から解いたり、それぞれだそうです。得意・苦手はあるかと思いますが時間内に取り組めているようです。問題数は多くないので、どちらかが最後まで手がつけられないというのは答案を見ると感じません。

富田先生 理科と社会科でテーマが重複しないように気をつけて作問しています。
昔、「男性目線の作問だ」と指摘されたことがありました。例えば、鉄道など乗り物を扱った問題を出したことがありますが、いかにも男子が好きなテーマです。女子校ですから、女性が興味を持つ事柄を取り上げることも大事にしています。

受験生の答案を見て、分野による得意・苦手など気づくことはありますか。

江藤先生 公民は手が回っていないという印象ですね。

富田先生 公民の基礎問題はどうしても数値を問うことが多くなります。衆議院議員の定数(465人)や任期(4年)などは最低限必要な知識ですが、そこができていないことがあります。必要な知識は押さえるようにしましょう。

中村中学校 校舎内

中村中学校 校舎内

インタビュー2/3

中村中学校
中村中学校明治36(1903)年、渋澤栄一と並ぶ明治屈指の実業家中村清蔵により、私立深川女子技芸学校として創立される。初代校長に女子教育の第一人者戸野みちゑを迎え、小名木川のほとりに校舎を新築し、現在の中村学園の前身である中村高等女学校として開校したのが明治42(1909)年。教育機関が乏しかった大正時代に”下町の華族学校、中村”の基礎が築かれた。
関東大震災、東京大空襲などにより校舎を3度消失しながらも、まさに不死鳥の如く復活を遂げ、創立時と変わらぬ精神のもと常に時代のニーズを捉えた変革を続けながら未来を見通した教育を追求してきた。現在、緑豊かな清澄庭園を臨み、落ち着いた環境のなかで6年間のびのびと過ごせる。本館最上階にある図書室「コリドール」からは四季折々の自然風景が楽しめ、東京スカイツリーも見ることができる。
授業時間を確保し、学力を向上させる週6日制。1年生後期から数学・英語の習熟度別授業を導入されている。4年生からは、目的に応じたコース制を採用している。全教員が2~3人の生徒をチューターとして受け持ち、面談等を通じて有効なアドバイスをしながら、進路決定まで担任と二人三脚でサポートする。学習環境等、諸般の事情により家庭で集中して学習できない生徒は、自学自習の場所と機会を提供する制度として、夜の8時まで特別残留が認められ、教室で集中して学習することもできる。
朝のホームルームのうち10分間は「朝読書」の時間。静かな時が流れたあと、落ち着いた雰囲気で1時間目の授業がスタートする。さらに週に1度、洋書の日を設け、多読が推奨されている。また、「読書ノート」を活用し、感じたことや考えたことを言葉にして書き記すことで、インプットしたことを深化させる読書体験を積み上げる。
中学2年が全員参加する「国内Summer School」は、「深川めぐり」を土台とし、歴史(江戸、中村学園)・人物(松尾芭蕉・伊能忠敬)・食文化(深川めし)・文化(祭り・相撲)・隅田川といったテーマを設定し、英語で紹介する3日間のプログラム。2日目に、フィールドワークとして地元深川を外国の方に案内する。各グループに1人のネイティブの教員がつき、スピーキングトレーニング・発音リスニングトレーニング・プレゼンテーションの仕方・テーマ別学習を行い、最終日には英語でプレゼンテーションも実施する。Reading・Listening・Writing・Speakingの4技能だけでなく、コミュニケーション力・プレゼンテーション力をも磨く。中学2年・3年希望者参加 の11日間のプログラムとして、8月の11日間、アメリカ・コロラド州デンバーの現地校などを訪問する「海外SUMMER SCHOOL」もある。基本的に現地学生の家にホームステイし、同じ生活体験を通して活きた英語を体得する。
部活動も盛んである。全国優勝30回以上を誇る伝統あるバレーボール部をはじめ、11の運動部があり、文化部は、吹奏楽や演劇、ハンドベル、中村ならではのボランティア等、15ある。文化祭「清澄祭」は、英語発表会のEnglish Dayを含む盛りだくさんな2日間で、クラスや学年、部活動など活躍の場がたくさんある。