シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

中村中学校

2021年05月掲載

中村中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.世界の課題を自分に引きつける

インタビュー1/3

世界には水汲みが日課の女性や子どもがいる

富田先生 この問題は、世界の課題を他人事ではなく「自分ごと」としてとらえてほしいと思って出題しました。日本は毎日水汲みをしなければならない状況にはありませんが、地球上にはそうしなければならない人がいます。決して遠い世界の話ではないのです。

リード文を読むと、日本人は恵まれている、水を大切に使わなければいけないと改めて思いました。

富田先生 1人1日当たり必要な水「約50リットル 」がどれだけの量か、1~2リットルのペットボトルのサイズ感からイメージできるでしょう。写真のように、自分たちと同じ年頃の子どもが毎日水汲みをしなければならない状況にあることも知ってほしいですね。
この問題のテーマは中学の授業でも取り上げます。中1の地理でアフリカを学習する際は水問題に触れますし、中3の公民でフェアトレードを取り上げる際には貧困問題に触れます。

社会科/富田 義道先生

社会科/富田 義道先生

想定通りのオーソドックスな解答が多かった

出来具合はいかがでしたか。

富田先生 (問1)の正答率は高かったですね。文章から必要な情報を読み取ることができたのかなと思いました。写真があることで考えやすかったのかもしれません。
一方、(問2)はもう少しできるかなと思っていました。

どんな答えがありましたか。

富田先生 ほとんどが模範解答のようなオーソドックスな、想定していたとおりの解答でした。
この写真を見た社会科以外の教員が、「子どもが笑っているから、『水汲みが楽しくなる』という答えもアリではないか」と言いました。Qドラムを使うことで、重労働の水汲みが精神的に楽に行えるようになるかもしれません。「楽しい」をキーワードにした解答も正解にしようと思っていましたが、それはありませんでした。
「楽しい」に近いものとして、「気持ちが楽になる」と解答した受験生が1人だけいました。ただ、従来のように頭の上に壺を乗せて運ぶよりも「楽な気持ち」で水汲みができるという意味で書いたかどうかはわかりません。

(問2)は、女性のこと(仕事に就けるようになるなど)、子どものこと(学校に通えるようになるなど)、どちらか一方だけの解答はなく、両方書けたか無答かに分かれました。文章記述が苦手な受験生もいるでしょうが、そこを何とか克服してもらいたくて、書く問題を出しています。苦手であってもチャレンジしてほしいですね。

中村中学校 校舎内

中村中学校 校舎内

情報を読み取る力、想像力を測る問題

この問題では受験生のどんな力を見ているのですか。

富田先生 この問題は文章記述問題なので「書く力」はもちろんのこと、(問1)は文章と写真から情報を読み取って自分で組み立てる力を、(問2)は「その結果、どうなるか」という想像力を見たいと思いました。素直な解答が多かったというのが採点した感想です。リード文と写真から情報を読み取ることができたということでしょう。

社会科として、小学6年生の段階でどのような「書く力」を見ているのですか。

富田先生 40~60字という字数は意外に難しいものです。読み取った情報を指定した字数でまとめられるように練習しておきましょう。要点を整理してまとめる力は、その先にもつながります。

字数指定があると、要点の取捨選択も必要になりますね。

富田先生 リード文や資料からいろいろなことに気づいてもらいたいのですが、最低でも1つは気づいてもらいたいというスタンスで作問しています。

中村中学校 廊下

中村中学校 廊下

せっかく工夫してもうまくいかないことがある

リード文の「Qドラムは普及していません」という一文は、問題を解く上では直接関係ありませんがとても意味があると思いました。どんな意図があったのでしょうか。

富田先生 解決策としてQドラムという道具が発明されましたが、うまくいかないこともある。そうした「現実」を読み取ってほしかったのです。
Qドラム(75リットル容器)を使えば、1度の水汲みで1日分(約50リットル)を運ぶことがでるのですが、生産コストが高くなり、現地の人が購入できる金額ではなかったのです。持続可能な取り組みにするには、価格の問題は避けては通れません。
うまくいかなかったときどうするか。さらに試行錯誤を重ねること、あきらめないでチャレンジし続けなければ課題は解決しないということを言いたかったのです。

中村中学校 テラスの足浴

中村中学校 テラスの足浴

インタビュー1/3

中村中学校
中村中学校明治36(1903)年、渋澤栄一と並ぶ明治屈指の実業家中村清蔵により、私立深川女子技芸学校として創立される。初代校長に女子教育の第一人者戸野みちゑを迎え、小名木川のほとりに校舎を新築し、現在の中村学園の前身である中村高等女学校として開校したのが明治42(1909)年。教育機関が乏しかった大正時代に”下町の華族学校、中村”の基礎が築かれた。
関東大震災、東京大空襲などにより校舎を3度消失しながらも、まさに不死鳥の如く復活を遂げ、創立時と変わらぬ精神のもと常に時代のニーズを捉えた変革を続けながら未来を見通した教育を追求してきた。現在、緑豊かな清澄庭園を臨み、落ち着いた環境のなかで6年間のびのびと過ごせる。本館最上階にある図書室「コリドール」からは四季折々の自然風景が楽しめ、東京スカイツリーも見ることができる。
授業時間を確保し、学力を向上させる週6日制。1年生後期から数学・英語の習熟度別授業を導入されている。4年生からは、目的に応じたコース制を採用している。全教員が2~3人の生徒をチューターとして受け持ち、面談等を通じて有効なアドバイスをしながら、進路決定まで担任と二人三脚でサポートする。学習環境等、諸般の事情により家庭で集中して学習できない生徒は、自学自習の場所と機会を提供する制度として、夜の8時まで特別残留が認められ、教室で集中して学習することもできる。
朝のホームルームのうち10分間は「朝読書」の時間。静かな時が流れたあと、落ち着いた雰囲気で1時間目の授業がスタートする。さらに週に1度、洋書の日を設け、多読が推奨されている。また、「読書ノート」を活用し、感じたことや考えたことを言葉にして書き記すことで、インプットしたことを深化させる読書体験を積み上げる。
中学2年が全員参加する「国内Summer School」は、「深川めぐり」を土台とし、歴史(江戸、中村学園)・人物(松尾芭蕉・伊能忠敬)・食文化(深川めし)・文化(祭り・相撲)・隅田川といったテーマを設定し、英語で紹介する3日間のプログラム。2日目に、フィールドワークとして地元深川を外国の方に案内する。各グループに1人のネイティブの教員がつき、スピーキングトレーニング・発音リスニングトレーニング・プレゼンテーションの仕方・テーマ別学習を行い、最終日には英語でプレゼンテーションも実施する。Reading・Listening・Writing・Speakingの4技能だけでなく、コミュニケーション力・プレゼンテーション力をも磨く。中学2年・3年希望者参加 の11日間のプログラムとして、8月の11日間、アメリカ・コロラド州デンバーの現地校などを訪問する「海外SUMMER SCHOOL」もある。基本的に現地学生の家にホームステイし、同じ生活体験を通して活きた英語を体得する。
部活動も盛んである。全国優勝30回以上を誇る伝統あるバレーボール部をはじめ、11の運動部があり、文化部は、吹奏楽や演劇、ハンドベル、中村ならではのボランティア等、15ある。文化祭「清澄祭」は、英語発表会のEnglish Dayを含む盛りだくさんな2日間で、クラスや学年、部活動など活躍の場がたくさんある。