シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

海城中学校

2021年04月掲載

海城中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.生徒の多様性や自主性を大切にする教育を目指す

インタビュー3/3

理科教育を通して「どんな生徒や大人になってほしい」、「こういう力をつけて欲しい」といったものはありますか?

西森先生 この先、生徒たちが社会に出ていった際に、自分の知識だけで対応できないことにぶち当たることは多々あると思います。そういうものに果敢に取り組んでいけるように、まんべんなくいろんなベースを作って欲しいです。そのベースをもとに、難しい問題にも知識を引き出して取り組めるようになってくれたら、と思います。

山田先生 大学に合格するだけでいい、ということではないですし、大学や社会に入ってからその子がどううまくやっていけるのか?というところまで見据えているのは、教員全員が共通で持っているものだと思います。具体的な力というのはそれぞれの教員が大切にしているものがあると思うので一概には言えませんが、それが知識の獲得だけではないということは確かです。これからAIが加速度的に進歩し、環境問題や資源問題、自然災害といった人類的な課題に直面していく中で、子ども達は今までの知識や経験だけではどうすることもできない未知の時代に遭遇すると思うのですね。それに対応できる力というものに決まった答えはなくて、おそらく大雑把に言えば「弾力性のある学力」なのだと思うのですが、もう一つは個人の特長を生かし、補完し合うという意味で、協働力を高めることも重要になってくるのではないかと思っています。

海城中学校 ICT LAB

海城中学校 ICT LAB

普段から観察する眼を養うようにしてほしい

受験に取り組む子ども達が海城中学を突破するためには、普段からどういうことを視野に入れながら生活していけば理科の点数が伸びていくのでしょう?そして親はそれに向けてどういったサポートができるのでしょうか?

西森先生 「いろんな自然現象を自分の言葉で説明できるようになる」といい対策になるのではと思います。

山田先生 たとえばギターに触れたことが無くても、歌を歌ったり鍵盤ハーモニカに触れたりしたことはあるわけですから、「音の高さはどう決まるのかな?」とか、魚をさばくのは難しくても「鮭の切り身にどのように骨がついているか?」とか、普段から疑問を持つ力や観察眼を磨いておくことです。日頃の「なぜ?どうして?」を追求する姿勢はやはり大事ですよね。みんな小さい頃はその感性を持っていたはずなんですよね。だから、その瑞々しい感性を忘れずに持ち続けてほしいなと思います。親の立場で言うと、そういう疑問に答えなくても一緒に考えたりやってみたりすることが大切です。受験勉強で忙しいと思いますし、覚えることも多いとは思うのですが、感性を豊かにしておけばいろんなものが飛び込んでくると思います。そういうことに目を見開ける生徒になってほしいなと思います。

海城中学校 実験室

海城中学校 実験室

インタビュー3/3

海城中学校
海城中学校もともとは海軍予備校だった海城中学校。創立されたのは1891(明治24)年と、一世紀以上の歴史がある伝統校です。建学の精神は、「国家・社会に有為な人材を育成する」こと。そのために、「フェアーな精神」「思いやりの心」「民主主義を守る意思」「明確に意思を伝える能力」を身につけた、高い知性と豊かな情操を持つ人物を「新しい紳士」と名付け、その育成を目指している。
生徒の学習意欲をかきたて、個性豊かに育てるためには、ふさわしい学習環境が必要と考え、2021年夏に完成したScience Center(新理科館)、ユニークな体育館(アリーナ)、カフェテリア(食堂)など、一人ひとりが、より良く、より深く学べるよう必要な施設や教育環境が整備されている。個々の生徒の進路選択のために、豊富な情報、資料のそろった進路指導室が準備され、担当の先生による面談が随時行われ、学習や進学の悩みや迷いなどには、専門のカウンセラーも適切な助言を与える。
習熟度別授業は行っていない。個人のブースにこもって勉強するのではなく、級友と切磋琢磨し、集団として成長してほしいと考える。6年間を通じて学習の中心にあるのは、それぞれの時期に応じた内容の濃い授業だ。授業は、大学入試そのものを目標として行うのではないが、結果として大学受験に十分対応できるものとなっている。教員もよりよい授業を追求すべく、相互の情報交換や外部の研究会への参加などを通じて研鑽を続ける。
入学後生徒たちは先ずはPAやDEといった体験学習を通して「新しい人間力」(コミュニケーション能力・コラボレーション能力)のイロハを学ぶ。文化祭などの学校行事やクラブ活動などは、そこで習得した基礎力を、実践活動を通して向上・発展させる場・機会として位置付けられる。と同時に、そうした場で力を出し切る経験を積み重ねることで生徒たちは自分に対する信頼(自己信頼)や「(多少の困難があっても)自分は出来る」といった感覚(自己効力・自信)を高める。ここぞという時にうろたえ・浮足立つことのない「新しい紳士」のエートス(行為態度)はこうした営みの中で培われる。
中学3年生を対象に、中学卒業時の3月下旬にアメリカ研修が実施される。バーモント州のセントジョンズベリーアカデミーという学校に通学する子女の家に1週間ほどホームステイをしながら同校に通学する。ボストン見学やマサチューセッツ工科大学も訪問します。高1・2年生では、7月下旬から8月かけてイギリス研修が実施される。モーバンという町に滞在し、ホームステイしながら英語の勉強をする。現地の先生やホームステイ先の家族をお招きし、スピーチの発表会を開く。また、国内での語学研修としてイングリッシュキャンプを校内で夏休みの3日間実施し、すべてネイティブの先生による授業が実施されている。