出題校にインタビュー!
海城中学校
2021年04月掲載
海城中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.生徒のために「面白い授業をしよう」という教員の想いをぜひ汲み取ってほしい
インタビュー2/3
海城中学校の授業の特徴にはどのようなものがありますか?
山田先生 一口に理科の教員と言ってもそれぞれ専門分野がありますし、それぞれの思いがあるので一言では答えづらいのですが、多様な教員が多様なことを授業で大切にしているからこそ、多様な生徒に対応し、生徒たちもその中から面白いことを見出していけるのではないかと思います。あえて共通点を挙げるならば「面白い授業をしよう」ということではないでしょうか。習った法則に基づいて答えが導き出せたら嬉しいな、という生徒もいれば、物事を今までとは違うスケールや視点で捉えられるようになることを面白いと感じる生徒もいます。教員側としては自分が面白いと感じる授業を精一杯展開して、それによって生徒たちの知的好奇心が刺激されるようなものになってくれれば、と思いますね。
他の先生と情報共有もされるのですか?
山田先生 そうですね、他の地学教員と情報を共有することはしますが、同じ授業をやるわけではないですし、それぞれの特徴があってもいいと思います。やはりそれを面白いと感じている教員が面白いと思っているものを伝えたほうが生徒にも響くものになりやすいとは感じます。
海城中学校 実験室
実験を通じて多くの気づきを得る
面白い授業の1つに実験があると思います。授業で実験をやらないという学校もある中、海城中学ではどのように実験に取り組まれているのですか?
西森先生 実験は低学年の生徒たちはかなりたくさんやっていまして、特に中1の化学ではほぼ毎週やっています。生物では細胞を見たり解剖をしたりしていまして、具体的にはイカとかアサリの解剖や豚の眼球の解剖など、高校の選択授業ではマウスの解剖を取り入れている担当教員もいます。
山田先生 実際にやるということが大切ですよね。やってみると意外と教科書通りにいかないことがあったり、実際に手を動かしてみたからこそ新しい疑問が生まれたりとか、無批判に何でも受け入れないということは大切だと思います。教科書に書いてあるからこうだ、ということではなく、やったことでいろいろな気づきがありますし、そこは大切にしていきたいなと思いますね。
最近ではビーカーやアルコールランプが見たことが無いという子ども、または動画上でしか見たことがないという子も数多くいるようです。
西森先生 小学校の時に危ない経験をしていないというのは非常に怖いんです。ガスバーナーを取り扱う際、火に触れてしまいそうになるなど危険なこともあるので、常に注意を払って実験させています。それでも、やはり彼らにとっては大事な経験だと思っています。
理科教育で大切にされている「洞察力」という言葉がヒットしたのですが、入試問題にも子ども達に「よく考えるんだよ」というメッセージを感じますし、日常の授業でも大切にされているんだなと感じます。
海城中学校 実験室
部活動を通じ、さらに知見を高める生徒が増えている
理科の中で目立つ生徒はいるのですか?
山田先生 部活動の中で実績を残している生徒は何人も出てきていますね。例えば、今年の東大の推薦入試に合格した2人のうち1人は地学部に所属していて、地学オリンピックや地理オリンピックなどに出て大活躍した生徒でした。研究もそれなりに自分でやったりしていましたね。もう1人は生物の研究などを行って、いろいろな学会で発表したり、生物オリンピックに出たりしていました。最近はそのような生徒も徐々に増えてきています。
西森先生 研究活動をする生徒も昔に比べて多いですし、きちんと学会発表もしてくれます。ポスターも自分が学生の時よりもすごく立派に作っていますよ。
山田先生 中には高校生から論文を書いているような生徒もいますね。研究ノートという形で学会誌に掲載された生徒も過去にはいました。どんどん教員を飛び越えて活躍してくれていっているのを感じます。地学部でいうと、研究者の方から指導してもらうような制度を利用する生徒が出てきています。生徒たちはもともと能力が高いので、彼ら自身でどんどん吸収してくように思います。
学校の中だけで完結させないということも大切かもしれませんね。
山田先生 教員もいろいろな仕事がある中で全てを教えようとするのではなく、場や役割を提供してあげたり、「○○をやってみたら?」といったサジェスチョンを与えることが大切だと考えています。彼らは彼らで勝手に学んでいくので、保護者の方も何もかも教えてあげなければというのではなく、そういう機会を作ってあげるが大切だと思います。
海城中学校 グラウンド
知識をより強固にするために教員がサポート
対面授業などでこういうことを大切にしている、というものがあればお聞きしたいです。
西森先生 突拍子もない質問をしてくる子に対して、授業が少し遅れたとしても拾って説明をしてあげるようにはしています。
山田先生 ただ知識を羅列するのでは意味がありません。地学は覚えることも多いですが、ただ「これを覚えなさい」と言ってもなかなか覚えられないですし、何の面白みもないですから、そこに至る思考過程や因果関係、或いはそれがわかった歴史などの背景も含めて話したりしています。たとえば地球史の授業中では、文明を支える資源やエネルギーがどのように生み出されてきたのかとか、現在の世界がどのような過程を経て成り立っているのかとか、あるいは人間という存在は生命の進化の中にどのように位置付けられるのか、とかといった、視野を広げられるような話をしてあげるようにしています。みんなが興味を持って聞いてくれるほうが雰囲気よく授業ができます。生徒の質問の中から「今は答えられないから調べてくるね」とこちらが学ばせられることもありますし、彼らは能力が高くて、そういう質問を投げかけ得る生徒だからというのもありますが、我々が刺激を受けたり学んだりすることもあります。
生徒による主体的な学習の場「KSプロジェクト」
科目の専門性と科目を超えた連携も大切にされていると伺ったのですが、たとえば「生物のときにこんな質問が出た」、「化学のときにこんな質問があった」のように、先生方の間で共有するといった横の連携も大切にされているのですか?
山田先生 そうですね「KSプロジェクト」のように、授業とは別に講習をする際などでは、化学と生物の教員がチームを組むなど教科の枠を超えた連携があります。KSプロジェクトは、授業の枠には収まりきらないような内容や、もっと尖った興味を持つ生徒に向けて、教員が提供できることを講座として組み、希望する生徒が受講するというプロジェクトです。そういうことをしっかりやりたいという教員もいて、KSプロジェクトの中で被災地に行くこともありました。このプロジェクトはある学年のみ対象ということもありますし、オープンで、という時もあります。
海城中学校 掲示物
インタビュー2/3