シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

海城中学校

2021年04月掲載

海城中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.自分たちの住んでいる日本の地域性について考える問題

インタビュー1/3

この問題の作問意図や想いについてお聞かせください。

山田先生 この問題では、日本の地域性を考えてみて欲しい、という思いをもって作問しました。日本は地学的に見ると非常に特殊な場所です。プレート境界であることもそうですし、南北にも長く気候帯も亜熱帯から寒帯まであったり台風の通り道であったりと、かなり大変な場所にいるわけです。しかし、今こうやって日本に住んでいると世界的に見てどういう場所なのかは気づきにくいと思うのです。自分たちの住んでいる場所の特徴を知るためには世界のほかの場所との比較も大事になってきます。よく社会科では河床の勾配を表すようなグラフが出たりしますね。かつて日本の河川の改修していたオランダ人技師が「これは川ではなく滝だ」と言った(らしい)という話がありますが、治水や砂防の難しさを端的に表していますね。

そこで、問6(2)(ポスターでは問1)では日本の河川の特徴をまずは取り上げました。問7(ポスターでは問2)は、さらに河川水位の上昇を抑える対策について具体的に答えてもらった問題です。治水や砂防が難しいというところまで思考が連なっていけばいいなと考えました。これらの問題の背景にある私の想いとしては、様々な角度から検討する姿勢を持ってほしいということがあります。たとえば、ダムは自然破壊につながるからやめたほうがいい、という意見があります。環境の保全の観点からは当然そうでしょうが、しかし、実際にダムをゼロにした時に日本の洪水・災害はどうなるか?というと、ダム無しで水害に対応するところまでは至ってないのだろうと思うのですね。物事はいろいろな要素の兼ね合わせなので、複眼的な思考を心がける必要があるでしょう。こういう背景があればダムを作らざるを得ないなという考えに至るかもしれないし、もう一歩進んで、ダムによる効果を定量的に評価する必要がある、と考えるかもしれません。このようなことを考える契機になればいいな、と思って作問した次第です。

世界的に見れば「これが当たり前」ということであれば、それはすなわち日本でも正しいことである、とは必ずしも言えないと思いますし、それぞれの地域の特徴を踏まえた上での対策を取っていかなければならないでしょう。あとは、この問題以前の問はデータの読み取りが多かったのですが、問6(2)と問7(ポスターでは問1と問2)あたりは、自分の考えの中から答えを出していく、というか洞察力を働かせてほしいなといった問題になっています。
※大設問すべてはコチラから見られます。

海城中学校 校舎

海城中学校 校舎

知識として知らなくてもその場で答えられる思考力を

この問題を見た時、なかなか答えが出てこなかったんですが、「文中に触れられているところ以外で」という文言がとても印象的で、多面的に見てほしいというメッセージが伝わってきました。

山田先生 問7(ポスターでは問2)については水の収支を考えると良いと思うのです。容器があって入っていく水と出ていく水があって、その水位を下げるためには「容器を広げる」か「入ってくる量を少なくする」か「出ていく量を多くする」か、ということになるでしょう。短い時間の中ではありますが、思考力を使って答えを導き出してもらえればよいなと。もちろん、知識を持っていれば答えを導き出せたと思いますし、結構いろいろなことを知識として持っているなと感じさせられる解答がたくさんあって我々も驚いたのですが、知らなくてもこの場で考えて欲しい、という意図があります。

ニュースや教科書のコラムなどからの情報収集力が合否の決め手

子ども達の答えとしてはどのようなものが多かったのでしょうか?

山田先生 「植林する」といった解答もありましたが、意外に多かったのが「地下に水を貯める場所を作る」という答えです。おそらく環七の下にある調整池や、春日部にある首都圏外郭放水路など、知識として見聞きしているのではないかと思いますね。そういうのが小学校5年生の教科書のコラムに載っていたりするんです。その辺りの情報にアンテナを伸ばしていた子たちは正解できたのではないかと思います。

この答えはよく考えられているなと思ったものはありますか?

山田先生 「地質を改善する」、「水を吸収しやすいアスファルトにする」といった解答がありました。都市化が進むにつれ地面になかなか水が入りにくくなってきたことが水害に繋がりやすくなっている、といったことをベースにして書いている子どももいて、素直にすごいなと思いましたね。突飛な答えはほとんど無かったですね。採点上どこまで許容するかというのはお答えしにくい部分もあるのですが、流れに沿って考えているものについては、かなり広めに正解としています。

こちらの問題は予想よりも出来ていた印象ですか?

山田先生 正答率は出していないのですが、途中点になった子もいるものの、基本的にはよくできていました。よくあった間違いとしては、「災害が起こりやすくなる」、「災害の規模が大きくなる」といった、少し答えの焦点がずれてしまったものがありました。問7(ポスターでは問2)では遊水地の説明を書いていたりと、問題の文章に書かれているものを言い換えただけの解答が散見されました。

子ども達も、文字情報を読んでいくことが大変だったんでしょうか

山田先生 本校の場合、地学のページだけでも数ページにわたるほど文章量が多いということもあるので、少し大変だったかもしれません。そういう意味では最後の問題までじっくり腰を据えて、というふうにはいかなかったのかもしれません。ただ正答率はそれほど悪くはなかったです。

海城中学校 教室

海城中学校 教室

理科は食わず嫌いせず、まんべんなく学ぶことが重要

理科全体の問題を作る上で考慮していることはありますか?

山田先生 本校の理科は物理・化学 生物・地学から必ず1題ずつ出題することとなっています。それぞれ分野が分かれているとはいえ、いずれも自然を対象にする学問であり、互いに密接に関わっているものですので、幅広く接しておくことが重要だと思っています。「地学は嫌い」、「物理化学だけやっていればいい」という生徒も中にはいるかもしれませんが、それではトータルの得点は伸びません。受験生はまだ若いので、今の段階で「この科目は自分には不要だ」などと考えずに、食わず嫌いしないでいろんなことに興味・関心を持ってもらいたいですね。また、選抜のためのテストではあるものの、受験生に面白いと思ってもらえる問題ができないかな、と考えながら常々やっています。少しでも知的好奇心が刺激される問題にならないかなと。しかしその一方で、紋切り型の問題にしないということは、受験生にとっては「取っ付きにくい問題」になりやすいということでもあるでしょう。できるだけ自分の持っている知識を活かしてもらい、リード文やグラフなどにも注意しつつ、思考力を働かせてくれればおそらく解けるだろう、という問題にしているつもりです。あまり無理難題にだけはしたくないとは常に意識しています。

出題の順番は決まっているんですか?

山田先生 はい、毎年必ず物理・化学・生物・地学の順番で並んでいます。「最初の物理の問題で筆が止まってしまうと良くないから後ろからやるように言われている」という噂を聞いたことがあったのですが、自分が試験監督に入ってみた時には、みんな1番からやっているように感じました。例えば、物理の中で分からない問題に出くわした時に一旦飛ばしてまた後で戻ってくる、というのは有効な時間の使い方であるとは思います。

記述問題は以前から取り入れられているのですか?

山田先生 結構前から記述問題はありますが、年によってあったりなかったりです。急に傾向を変えているということはないです。特に生物・地学では割と記述も出しやすいです。

海城中学校 新理科館完成予想図

海城中学校 新理科館完成予想図

インタビュー1/3

海城中学校
海城中学校もともとは海軍予備校だった海城中学校。創立されたのは1891(明治24)年と、一世紀以上の歴史がある伝統校です。建学の精神は、「国家・社会に有為な人材を育成する」こと。そのために、「フェアーな精神」「思いやりの心」「民主主義を守る意思」「明確に意思を伝える能力」を身につけた、高い知性と豊かな情操を持つ人物を「新しい紳士」と名付け、その育成を目指している。
生徒の学習意欲をかきたて、個性豊かに育てるためには、ふさわしい学習環境が必要と考え、全館の空調設備をはじめ各種の特別教室、ユニークな体育館(アリーナ)、カフェテリア(食堂)など、一人ひとりが、より良く、より深く学べるよう必要な施設や教育環境が整備されている。個々の生徒の進路選択のために、豊富な情報、資料のそろった進路指導室が準備され、担当の先生による面談が随時行われ、学習や進学の悩みや迷いなどには、専門のカウンセラーも適切な助言を与える。
習熟度別授業は行っていない。個人のブースにこもって勉強するのではなく、級友と切磋琢磨し、集団として成長してほしいと考える。6年間を通じて学習の中心にあるのは、それぞれの時期に応じた内容の濃い授業だ。授業は、大学入試そのものを目標として行うのではないが、結果として大学受験に十分対応できるものとなっている。教員もよりよい授業を追求すべく、相互の情報交換や外部の研究会への参加などを通じて研鑽を続ける。
入学後生徒たちは先ずはPAやDEといった体験学習を通して「新しい人間力」(コミュニケーション能力・コラボレーション能力)のイロハを学ぶ。文化祭などの学校行事やクラブ活動などは、そこで習得した基礎力を、実践活動を通して向上・発展させる場・機会として位置付けられる。と同時に、そうした場で力を出し切る経験を積み重ねることで生徒たちは自分に対する信頼(自己信頼)や「(多少の困難があっても)自分は出来る」といった感覚(自己効力・自信)を高める。ここぞという時にうろたえ・浮足立つことのない「新しい紳士」のエートス(行為態度)はこうした営みの中で培われる。
中学3年生を対象に、中学卒業時の3月下旬にアメリカ研修が実施される。バーモント州のセントジョンズベリーアカデミーという学校に通学する子女の家に1週間ほどホームステイをしながら同校に通学する。ボストン見学やマサチューセッツ工科大学も訪問します。高1・2年生では、7月下旬から8月かけてイギリス研修が実施される。モーバンという町に滞在し、ホームステイしながら英語の勉強をする。現地の先生やホームステイ先の家族をお招きし、スピーチの発表会を開く。また、国内での語学研修を休みに実施されるイングリッシュキャンプは3泊4日で、すべてネイティブの先生による授業が実施されている。