シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

海城中学校

2021年04月掲載

海城中学校【理科】

2021年 海城中学校入試問題より

次の文を読み、以下の各問いに答えなさい。

(略)
河川でも、大雨によって増水し氾濫(はんらん)すると大規模な浸水(しんすい)がおこります。2017年の台風21号は、超(ちょう)大型で強い勢力を保った状態で本州に上陸し、この台風によって、大阪府の大和川や和歌山県の貴志川が氾濫しました。
図1は台風が上陸した10月23日3時の天気図です。東京を流れる多摩川(たまがわ)でも水位が大幅(おおはば)に上昇し、場所によっては氾濫がいつおこってもおかしくない状況になりました。
これらの水害を防ぐために、海岸や河川の堤防(ていぼう)のかさ上げや新規設置をしたり、護岸工事を行ったり、ダム、水門、遊水池などを作って水の流れをコントロールしたりします。また、工事による対策だけではなく、住民一人一人が日ごろから居住地域のハザードマップを確認し、どこでどのような災害がおこりえるかを認識しておくことも大事なことです。

図1

(問1)日本の年間平均降水量は世界の年間平均降水量の2倍近くあります。また、日本の河川は、世界の主要河川と比べて、長さが短いのに上流と下流の高低差が大きいという特徴があります。これらのことから、世界の主要河川と比較(ひかく)したときの日本の河川の洪水(こうずい)の特徴を簡単に答えなさい。

(問2)増水時の河川水位の上昇を抑(おさ)える対策の例を、文中に触(ふ)れられていること以外で具体的に1つ答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この海城中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)雨が降ったときに川を流れる水の量が急激に増えやすく、短時間で水位が高くなりやすい。

(問2)例1 雨水が海まで流れていくように地下に放水路をつくる。
例2 道路を舗装する際には保水性の高いアスファルトを用いる。
例3 流域で植林を進め、土地の保水力を高める。

解説

(問1)日本列島は、標高1000~3000mにもなる山脈が背骨のように走っていて、太平洋側と日本海側に分けています。そのため、日本の河川は、世界の主要河川に比べて全体の長さがとても短く、大きな高低差を短い距離で流れるため、川の流れが速いことが特徴です。そのため、雨が降ると、川を流れる水の量が急激に増え、短時間で水位が高くなる傾向があります。

(問2)増水時の河川水位の上昇を抑えるための手段として、問題文中にいくつかの例が挙げられています。たとえば、堤防のかさ上げや新規設置、護岸工事などは、川の両岸を高くすることで、水があふれ出すのを防ぐ工夫だといえます。また、ダム、水門、遊水池などは、水をためたり、さえぎったりすることで、川に流れ込む水をコントロールする工夫だといえます。その他にできる工夫として、地下に水路をつくり、川に流れ込むはずの水の一部を別の通り道から流す工夫が考えられます。また、道路を舗装するときに保水性の高いアスファルトを用いたり、流域の植林を進めたり、上流の森林を保護したりすることによって、土地の保水力を高め、川に一度に流れ込む水の量を減らす工夫などが考えられそうです。

日能研がこの問題を選んだ理由

読み取った情報や知識をもとに、日本の河川での洪水の特徴や、増水時の河川の水位上昇を抑える対策を説明する問題です。

子どもたちは、問題に示された文章から情報を読み取り、読み取った情報と知識を結びつけることによって、日本の河川の特徴を世界の主要河川と比べることではっきりさせていきます。その特徴を念頭に置きながら、水位の上昇を抑えるためにはどのような対策を講じることができるのかを筋道立てて考えていきます。

これらの問題に取り組む中で、子どもたちは、日本で起こる洪水の特徴が、世界的に見ると当たり前ではないことを発見したり、社会科で学んだ知識や考え方も結びつけることで、さまざまな視点から対策を考えることができることに気づいたりしていきます。また、科目の枠を超えて学ぶことが、住み続けられる街づくりにつながっていくことに興味や関心を覚え、視野が広がる子どもたちもいることでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。