シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

芝浦工業大学附属中学校

2021年04月掲載

芝浦工業大学附属中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.2021年度は芝浦工大附属中の探究元年

インタビュー3/3

「国語乙」で江戸文学など古典に親しむ

授業の様子を教えてください。

斎藤先生 中学の国語は、教科書中心の「国語甲」と、文法と古典を扱う「国語乙」に分かれます。後者に本校のオリジナリティが表れます。
中2の「国語乙」は、江戸文学、説話文学、百人一首といった作品を、江戸時代から古代へと1年かけて遡りながら楽しみます。おもしろかったところを発表したり、古典を簡単な現代劇にアレンジして発表したりします。作品について調べるだけでなく伝え方も力を入れています。
始めは約半数の生徒がよくわからずに発表していますが、式亭三馬の『浮世風呂』、井原西鶴の『好色五人女』など、江戸文学の表現のおもしろさに助けられます。
説話文学になると、あらすじがわかっているのか、伝わっているか、お互い結構シビアに評価するようになり、生徒たちの目はどんどん養われます。百人一首の発表では「自分はこのように解釈した」と堂々と発表する生徒もいます。

芝浦工業大学附属中学校 掲示板

芝浦工業大学附属中学校 掲示板

国語とは別角度で言葉を学ぶ「言語技術」

斎藤先生 本校は約20年前から、つくば言語技術教育研究所の指導に基づいた言語技術教育を行っています。表現するのが苦手な生徒が表現するおもしろさに目覚めたら、得意な理系科目にもプラスの効果でもう一段階、飛躍できるのではと思って取り組んでいます。国語とはまた違う角度から言葉について学んでいます。
中1・中2の「ランゲージアワー」(週1時間)は、「論理力・伝達力・分析力」を柱に言葉を操る技術を訓練します。例えば「問答ゲーム」は、結論から理由を説明する論理的な形式を、ゲームを通して身につけます。中学ではアウトプットの手段を系統立てて教えることはあまりありませんが、そこのところを言語技術の授業でしっかり取り組むことができます。

今井先生 国語の作文の課題を見ると言語技術の効果は確実に出ていると思います。言語技術でのトレーニングや授業以外でも学校行事などについて書く機会がたくさんあるので、書くことに対する抵抗感はぐっと低くなります。言語技術で小論文の型が身についているので、高校の小論文も読みやすい文章を書いてくれます。大学入試の出願書類の作成にも生きています。

芝浦工業大学附属中学校 しばうら鉄道工学ギャラリー

芝浦工業大学附属中学校 しばうら鉄道工学ギャラリー

古典作品は天文現象の記録としても貴重な資料

斎藤先生 理工系教育の取り組みの1つに、「ショートテクノロジーアワー」といって、各教科と科学技術との関わり合いを学ぶプログラムがあります。全教科の教員がそれぞれテーマを考えます。国語と科学技術との関わりは、国語科の教員が担当します。
例えば、私は藤原定家の『明月記』に記されている超新星爆発を取り上げました。実は古典には天文現象が数多く記録されています。古典は文学としてだけでなく、科学の記録としての要素もあることを生徒に実感してもらいます。
このプログラムは、1年のうちどこかのタイミングで授業内に行います。生徒の食いつきがいいのでやりくりして実施しています。毎年テーマ選びに頭をひねりながら、教員も楽しんでいます。

ITとGCプログラムが中心の「探究型授業」を開始

斎藤先生 2021年度から、中学で「探究型授業」を立ち上げます。「楽しくワクワクすることをやっていこう」が、探究型授業のスローガンです。作文やプレゼンテーション、ポスターセッション、演劇などのプログラムを適切なタイミングで繰り返し行うことで、生徒の表現力をさらに伸ばしていこうと考えています。
中心となるのが、IT技術を駆使して問題解決する「IT」と、国際性と多様性を身につける「GC(Global Communication)」のプログラムです。週1時間ずつ、本校ならではのプログラムだと自負しています。
テクノロジー系の「IT」プログラムは、今ある技術を吸収して自分たちでプログラミングをしてものづくりに挑戦します。
「GC」プログラムは、まずは自分たち(日本)のことを知って土台づくりをしようと、始めに学校のある豊洲の町を“探検”します。豊洲には昭和初期の産業遺産がたくさん残っています。水陸両用バス「スカイダック」にて海から豊洲やお台場を眺めると、今までと違った町の姿を見ることができます。中2の農村合宿では、農業・林業のお手伝いをさせていただきながらSDGsにも取り組みます。

芝浦工業大学附属中学校 加工技術室

芝浦工業大学附属中学校 加工技術室

理工系の知識で社会的課題を解決する「総合探究」

斎藤先生 こうして日本のことを知った上で、中3の海外教育旅行に挑みます。このとき気づいた社会的課題を、「総合探究」として、ITとGCで身につけた技術、視点や思考法、表現方法を駆使して解決を試みます。自分たちの手で作る・動かす経験を積み重ねて、自分の生き方や将来に生かしていけるようにシミュレーションをさせたいと考えています。
今年度から中学は男女共学になります。このタイミングで探究型授業がスタートするというのも大きいと思います。
「IT」や「GC」など新しいプログラムを導入するために、国語・数学・英語の授業数を減らして時間を捻出しました。その代わり、教科で教えきるのではなく、自分で学び自ら探究する生徒の育成に力を入れます。本校の新たな取り組みに期待を寄せて入学する生徒や親御さんの思いに精一杯応えたいと思います。

芝浦工業大学附属中学校 ロボット技術室

芝浦工業大学附属中学校 ロボット技術室

インタビュー3/3

芝浦工業大学附属中学校
芝浦工業大学附属中学校1922年4月、旧国鉄で働く若者達に中等教育の機会を提供したいという思いから、前身である東京鐵道中学が開校。第二次大戦中には東京育英中学へと名前を変え、戦後の学制改革で東京育英高等学校に再編。その後、1953年に経営が芝浦学園へ移され、現在の芝浦工業大学高等学校へと移行した。1982年には、板橋区坂下に移転。そして、2017年4月1日、豊洲校舎へ移転。高校は共学となった。2021年度からは中学も共学となっている。
中高大一貫教育によって理工系人材を育成することを目標に、科学技術に対する興味関心、理系の基礎学力・思考力、そして国際性や粘り強さなどの資質を育てている。「ほんとうにそれは正しいのか?」「別の考え方や方法はないのか」と常に自問する態度を重視し、そこから検証を加えて自分なりの価値判断を行い、最後に他者を納得させ、共感させ、感動させる表現力を手にする。大学や実社会で活躍する為に求められる批判的精神を大切にしているのだ
豊洲校舎は、芝浦工業大学のメインキャンパスの近くであり、他に例を見ない規模の連携教育が行われる。また、近隣にある企業・研究施設・体験施設・展示会場などが豊富に存在し、これから求められる学びに最適の状況だ。世界で活躍する技術者・研究者の卵の育成という本校の教育目標を実践するための校舎と、それを支える周りの環境に恵まれている。
理系ではなく理工系教育を重視し、「ショートテクノロジーアワー」では、各教科と科学技術との関わりを学び、中3「サイエンス・テクノロジーアワー」でサイエンスの面白さ、深さを学ぶ。中1の「工学わくわく講座」から高3「大学先取り授業」など、併設大学との連携講座が充実している。また、2021年度より新カリキュラムが始まり、テクノロジー系とグローバル系2つの探究がスタートした。「理工系の知識で社会課題を解決する」人材育成を目指している。最新のICT設備や大型機械も使えるファクトリー、さらには、「しばうら鉄道工学ギャラリー」など、芝浦工業大学附属中学高等学校ならではの設備・施設も魅力的だ。