出題校にインタビュー!
東邦大学付属東邦中学校
2021年03月掲載
東邦大学付属東邦中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.裾野を広くとって、いろいろなところに目を輝かせよう。
インタビュー2/3
読解力、思考力が問われる問題
全部が選択肢から答えを選ぶ形式ですが、単に知識を聞いている問題は少ないですよね。国語で選択式問題を中心に思考力を問うていくのは大変ではないですか。
岡田先生 本校の入試で求めているものは、丁寧に読みとろうとする姿勢です。受験生に選択肢をしっかり吟味してもらう形式は、ねらいに合っている形式だと思います。本校の求めている読解力、思考力を問えるものとなっていると思います。
工夫をしていることはありますか。
岡田先生 当然ですが、読む前に答えがわかってしまったら国語の力は問えません。そういう意味では、選択肢をパッと見て答えが見つかるような問題にならないように気を配っています。本文(物語文や説明文)だけでなく選択肢もしっかり読み込んで判断してもらう、ということですね。題材も小学生に馴染みのあるものを使いながらも、受験生が個々の経験にたよって読めてしまうものは避けたいという考えがあります。試験時間を目一杯使って考えてもらいたいので、題材選びから手間をかけています。
一見、やさしい問題のように見えますが、選択肢が素晴らしくて簡単には選べません。いい意味で難しい問題だと思います。受験生が迷う選択肢を作るのは難しいですよね。
岡田先生 そうですね。何度も見直します。出来上がるまでは、本当にこれでいいのか、とドキドキしながらやっていますが、それも我々の活動の1つ。我々教員自身の言語感覚を磨きあげる大切な場という認識で日々の授業と同じく慎重に準備をしています。
上野先生 大学入試改革などでは表現力が求められていますが、その育成については、入学後のカリキュラムの中で十二分にできていると思いますので、今、岡田が申したように、中学入試の段階では国語も社会も物事に対して自分なりに考察をして、読み下していただく。そういうところに目をきらきらさせて取り組んでいただくことを中心にしています。そのためにも、素材選びに苦心すべきだと思っています。
広報部長 国語科/岡田 美秀先生
中高生には今だからこそ取り組んでほしい学びがある
大学共通テストの影響が中学入試にも出てきているのではないか、と思うのですが、どのように感じていますか。
上野先生 大学入試が変わると高校入試や中学入試も変わると言われていますが、 発達段階がありますから、小手先の問題を解決するために学んでいただきたくないですね。 極論を言いますと、大学に入るために中学校に入って来ていただきたくないという思いがあります。「大学付属校なのに何を言っているんだ」と言われるかもしれませんが、中高生には今だからこそ取り組んでほしい学びがあります。今、彼らが持っているキラキラとしたものを取り除いてまで大学入試のルールに当てはめるというのは、それはそれで別のステレオタイプを感じますよね。共通テストを変えれば全てが変わると思って欲しくありません。特に我々は私学ですから、私学として生徒に学んでほしいことがあります。右へならえとはいかないわけです。
図書館入口にある新刊紹介コーナー
入学後は将来を見据えて幅広い力をつけてほしい
岡田先生 子どもは目の前のことに敏感です。我々が入試を行っている以上、入試を突破するために一生懸命になるのはやむを得ないのですが、入学後のターゲットはそこで高得点を取れば、次のステップへ行ける、と考えてしまうわけです。その時々でのペーパーの結果がよいのは悪くないのですが、点数を取るということだけに終始してしまうと、本来の学習の目的を忘れてしまいます 。
本当に大事なことは、キラキラとした、未知への興味です。例えば、本校の卒業生である金井宣茂さんだったら、「宇宙へ飛びたい」ということですよね。一夜漬けのような即効性のあるやり方で、短期目標を一つ一つクリアしていくことも1つの方法ですが、生徒にはよくこう言います。「すぐに役立つものはすぐ役立たなくなる」と。中学・高校の段階では「いつ役に立つかわからないけれども、キラキラとした、知りたいという欲求」を貪欲に満たしてあげられるものを私たちも提供していきたいと考えています。
リベラルアーツに取り組んでいるのは、そういう思いがあるからですか。
岡田先生 我々はリベラルアーツを長く実践してきました。その意図は裾野を広くとって、いろいろなところに目を輝かせてほしい、というところにあります。本校には二つの大きな考え方があります。1つは「自然・生命・人間」の尊重です。これが我々のベースメントにありまして、その上にもう1つの考え方である「東邦リベラルアーツ」ですね。幅広く、学問の基礎を積み上げていき、その上に自分の専門分野を構築していくというイメージで日々の教育を行っています。幅広い裾野であれば、より高い頂きを築けるという考え方を「東邦アカデミックチャレンジ」と呼んでいて、今年度はコロナでできませんでしたが学問体験講座やブラックジャックセミナーなど、知識を深める本格的な講座も行っています。
宇宙プロジェクトイベント関連の展示
自由に学問ができる土壌に期待
教科のバランスに重きをおいた入試は、中高6年間の成長にも良い影響を及ぼしていますか。
上野先生 本校を選ぶ生徒には、理科や数学が得意な子が多いのですが、入学すると一度、フラットな状態に立って幅広い学問に取り組みます。そうしたスタートによって、自由に学問ができるという土壌になり得るんだろうなと期待しています。
岡田先生 本校の国語は他の教科の下支えというか、学びをスムーズにするために位置づけられているという認識をもって指導しています。正直なところ、入学してきた時点で国語に苦手意識を持っている生徒は多いと思います。一般的にも、中学入試の時点で国語は難しい教科という印象を持っている子は多いと思うので、そういうスタートから6年という月日を経て、得意な科目ができて巣立っていく生徒の姿を見ると、そういうものに引きずられて国語の力もかなり高まっているのではないかと思います。
各教員が個性を生かした授業を展開
お話を伺っていると、教科の中でよくお話されている、という印象を受けますが、いかがですか。
上野先生 問題作成における認識は一致していますが、授業は別ですよね。
岡田先生 他の教科もそうです。授業はそれぞれの教員の個性も生かして行っています。アプローチの方法は様々であっても、同じ到達点となるよう協議を重ねて展開しています。
上野先生 社会科でも話し合いはしますが、教授内容を統一しようという動きはないですね。同じことを話すのであれば、AIに任せればいいと思います。それぞれの教員がその物事について、好きな角度で切り取って、自由に話していける環境がここにはありますから。当然、生徒の考え方や表現も、自由にできるということになります。学びの場としては、非常に良い環境にあると思います。
そうすると、定期試験もクラスごとに違うのですか。
岡田先生 基本的に学年共通です。それぞれの授業で話したことはそのまま出題できないので、入試問題と同様、注意をはらって作問しています。
定期試験では記述問題も出していますか。
岡田先生 もちろん出しています。「簡潔に分かりやすく伝える力」を基本として問うてます。何となく思いついたものをダラダラと書きつらねるような答案はアウトです。
図書館を利用した授業でのポスターセッション
インタビュー2/3