シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東邦大学付属東邦中学校

2021年03月掲載

東邦大学付属東邦中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.入試問題を通して、公民分野の学びのおもしろさを味わおう。

インタビュー1/3

入試問題は「最初の授業」

この問題の出題意図からお話いただけますか。

上野先生  1つのアクションに対して、さまざまな解決の糸口がある。1 to 1ではないんだ、ということ。入試問題に適しているかどうかはわかりませんが、それを表現させていただきました。「入試は学校からのメッセージ」と言われたりしますが、その通りで、私たちは、「入試問題は最初の授業」と思って作問しています。入試というフィールド上ですが、受験生は入試の前に過去問で問題に触れてくださることもあるでしょう。そういうところも意識させていただき、東邦に入ったらいろいろなテーマでいろいろなことに触れていくことができるんだよ、ということを伝えたいという思いを込めています。

社会科/上野 唯一先生

社会科/上野 唯一先生

受験生に知ってほしいことを問題にした

上野先生 過去の問題に「入試問題が最初の授業である」という信念をもって作成していることが、わかりやすく説明できる問題があります。医者である日野原重明さんの文章を題材にした問題です。
通常の法律が、統治の手段として国家から我々にベクトルが向いているのに対して、憲法はその逆です。我々から国家に対して、こういうことはしてはいけない、ということを定めているのです。このことは、法の支配の一丁目一番地であり、「国家の統治権力は私たちが持つ自然権を源とする」というとても大切な考え方を、日野原さんがやさしく解説してくださっています。

この問いは、単純に「憲法は誰が守るものですか?」というものですが、私たちが選択肢に加えた「大人から子どもまで、すべての日本国民」とする誤答が多くありました。正解はもちろん「政治家や役人が、つまり日本のえらい人たち」です。もちろん、このことを正確に理解していないといけないのか・・・そうではありません。日野原さんの文章をしっかりと読んでくれれば、正解が導けます。私たちは、この問題を通してみなさんに知っていただきたいのです。私たちが入試問題を「最初の授業」というのはそのためです。

今回のSDGsに関する題の出題意図も同様で、国際社会における「まだ解決されていない大きな問題が存在し、私たちも企業もひとつひとつ努力を始めている(始めなければならない)」ということを知っていただきたいと思って出題しました。それぞれのアイコンの意味と、小さくとも着実な一歩が踏み出されていることを理解していただけたら、次は東邦に入ってから、「自分たちがどの様に貢献していくか」を一緒に考えていきたいですね。

芸術と公民、あるいは社会科とのかかわりを表現

社会の出題は、例年、素材がおもしろいですよね。今年の公民分野ではサザンオールスターズの「ピースとハイライト」が採用されていました。

上野先生 大問1の地理分野はボリュームがありますが、資料や図表を多用して、様々な角度から日本や世界を知ることができます。入試当日は、最後にじっくりと取り組んでもらうのもいいかもしれません。大問3の公民分野は、おっしゃるとおり、型にとらわれずに題材を選び、いろいろな話をふくらませていくスタイルで出題することが多いですね。手塚治虫さんの「アドルフに告ぐ」など、近年、いろいろな題材を使わせていただいております。

今回はサザンオールスターズの「ピースとハイライト」でした。2014年(受験生は小1)の紅白歌合戦で歌われました。世代が異なる人たちの間で共通の話題にできる楽曲がなかなかない中で、昭和、平成、令和をまたいで活躍しているアーティストの一人であろうと判断し、起用させていただきました。歌詞の中の「平和」つながりで「平和の琉歌」からも出題しました。

実は今回、地理分野ではキャラクターデザイン、今、流行りのゆるキャラですね。歴史分野では美術工芸品を扱っています。そして公民分野では音楽です。デザイン、工芸、音楽…ときて、公民分野の最後の問題では、ドイツの「マグデブルグの戦争記念碑」を出題しました。政治・経済は芸術や文化にいい意味でも悪い意味でも大きくかかわっています。芸術や文化と公民、あるいは社会科とのかかわりをテーマに表現、問題提起したいと思い出題しました。

東邦大学付属東邦中学校 正門守衛室前

東邦大学付属東邦中学校 正門守衛室前

コロナ禍で感じたことも入試問題に反映

上野先生 今年はコロナの問題が多かったですか。

そうですね。いろいろな形で出題されていました。

上野先生 我々もコロナは少し意識しています。懸念したのは、今まで自由というものを大切にしてきた自由主義社会において、それを否定する様な規制を望む声が非常に大きかったですよね。自由社会における行動制約は福祉目的に許容されることは認められていますが、施政者に安易にそれを委ねてはいけないのです。

例えば、桑田さんがこの曲を歌った時に、歌詞の内容に対して一部批判が出たことがあります。自由闊達な議論ができるということは非常に大事なことであるのですが、政治や社会的権力、集団が圧力をかける様にそれに介入することは許容されるべきではないと考えます。コロナ禍におけるもう一方の問題を提起したつもりでいます。入試でそこまで受け取ってもらえているかどうかはわかりませんが、改めて見直した時に、我々が伝えたいもの、大事にしたいものを最初の授業としてお伝えしたかった、ということです。

コロナの問題は入っていないけれども、今の時代に対する子どもたちに知っていてほしいことを反映しているということですよね。

上野先生 そうですね。公民分野では、そういう問いかけをしたいなと思っています。

最後にあるドイツの退廃芸術の問題も興味深いですね。

上野先生 エルンスト・バルラッハという彫刻家が、第一次世界大戦の後に平和記念碑や、素朴な木彫を制作するのですが、戦争を遂行するナチスには不要のものなんですね。ですから「退廃芸術」の烙印を押すのです。シャガールやカンデンスキーの作品も音楽ではジャズなども「退廃芸術」とされました。問題で扱った「マクデブルク戦没者記念碑」は「語りすぎた作品」と言われていて、要するに、作品の中に余計なものが入っているのです。その余計なものを読み取っていただく問題でしたが、よくできていました。

本館ホールにある制服展示

本館ホールにある制服展示

インタビュー1/3

東邦大学付属東邦中学校
東邦大学付属東邦中学校建学理念である『「自然・生命・人間」の尊重』は、創立者の額田豊・晉兄弟医学博士の自然観・生命観・人間観に基づいている。「感性」で捉えたものを「理性」に高めて理解できたとき出会える学ぶ喜びを重視する「プロセス重視の学習」を象徴する言葉である。
高1までの授業はリベラルアーツ型で幅広く学び、高2から文系と理系に分かれてより深く学ぶ。主要教科以外の時間も充実しており、たとえば「自分探し学習」。中学では各学年ともⅠ~Ⅲ期に分け、Ⅰ期は校外学習(中3は修学旅行)に関するテーマ学習、Ⅱ・Ⅲ期はそれぞれの30の講座を開設し、その中から各自が選択する。高校では、提示されたテーマの中から、あるいは、生徒自らが設定したテーマ、このいずれかを選択してレポートを作成。
また、大学附属校としてもメリットを生かした講座も豊富にある。「学問体系講座」は東邦大などとの連携授業で、中学生が参加できる講座もある。医学部志望者には、外科手術体験セミナーまである。部活動も盛んで、中学校で8割強、高校で7割弱が、学業との両立を図りながら元気に活動している。近年、めざましく躍進している部活も多く、東邦生の学びの場の一つとして心身を鍛えている。こうした部活動や、その他にある行事も、生徒達にとっては「自分探しの場」である。
2020年度はコロナ禍等諸般の事情により、文化系部活動・同好会の各種大会や発表会が中止となったが、学校HPで文化系団体の日頃の活動の成果を発表できるよう、作品や発表が公開されている。生徒たちの日々の取り組みが伝わる内容となっている。