シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

東邦大学付属東邦中学校

2021年03月掲載

東邦大学付属東邦中学校【社会】

2021年 東邦大学付属東邦中学校入試問題より

(問)下の図は、SDGs(持続可能な開発のための目標) の17個の目標を示している。SDGsは、2015年9月に国連サミットで採択された、2030年までに全世界が取り組むべき目標である。また、(a)~(c)の文章は、図の目標のいずれかを達成するために、日本の企業が取り組んでいる事例を示したものである。(a)~(c)と図の目標との組み合わせとしてもっとも適しているものを、あとのア〜ケから1つ選び、記号で答えなさい。なお、企業の取り組みは複数の目標を達成しているものも含まれる。

SDGsの17の目標

(a)ある化粧品(けしょうひん)メーカーでは、女性管理職を増やすための研修を設けたり、育児や介護(かいご)をしながら働き続けられるテレワークなどのしくみを取り入れている。

(b)ある電気機械メーカーでは、工場から排出(はいしゅつ)される二酸化炭素から、プラスチックなどの原料を作る技術の実用化を進めている。また、ある洗剤(せんざい)メーカーでは、ゴミをリサイクルした燃料を使って発電を行っている。

(c)ある飲料メーカーでは、森での植樹活動や森林整備活動を行っている。
また、ある洗剤メーカーでは、人と環境(かんきょう)にやさしい無添加(むてんか)石けんの製造・販売(はんばい)を行っている。

 
(a) 5 10 16 5 10 16 5 10 16
(b) 3 8 7 8 7 3 7 3 8
(c) 15 1 11 1 1 11 15 11 15

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この東邦大学付属東邦中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

解説

(a)~(c)の事例は以下にあげたような複数の目標達成につながると考えることができます。
(このほかの目標にも間接的につながるものがありそうです)

(a)5(ジェンダー平等を実現しよう)
8(働きがいも経済成長も)
9(産業と技術革新の基盤をつくろう)
10(人や国の不平等をなくそう)

(b)7(エネルギーをみんなにそしてクリーンに)
9(産業と技術革新の基盤をつくろう)
12(つくる責任、つかう責任)
13(気候変動に具体的な対策を)

(c)3(すべての人に健康と福祉を)
6(安全な水とトイレを世界中に)
12(つくる責任 つかう責任)
13(気候変動に具体的な対策を)
14(海の豊かさを守ろう)
15(陸の豊かさも守ろう)

これらの目標と(a)~(c)の事例が適切に組になっている選択肢はキです。選択肢をまず見て、あてはまる目標がないものを除いていくというプロセスで解答を導くこともできます。

日能研がこの問題を選んだ理由

SDGsが国連で採択されて5年が経ち、目標達成の期限である2030年まで残すところ10年となりました。中学入試の世界では、採択当初はSDGsと明言せずに世界のさまざまな課題にふれた問題が散見されましたが、ここ数年はSDGsのロゴや目標をはっきりとしめした上で、関連する知識や、受験生が自ら取り組める行動などを問う問題が増加してきました。SDGsそのものの認知度が上がってきたことの表れだといえるでしょう。

その中でも、2021年の東邦大学付属東邦中の問題は、17のゴール達成のポイントとして注目されている「同時解決型」の課題解決に関するものでした。事例としてあげられている企業の取り組みは、17のうち4つ以上の目標達成につながるものになっており、その組み合わせを考えるというアプローチが新鮮でした。

SDGsに限らず、ある課題を解決しようとしてとった手段のひとつが、複数の課題解決につながることはよくあります。逆に、ひとつの課題を解決する手段が複数存在することもあります。問題を通して、受験生が「同時解決」を実感し、自分自身の課題解決にもつなげていってくれる可能性もありそうです。

また、この問題は、1つ1つの取り組みと17の目標との関連をさぐるプロセスで、受験生は因果関係をとらえる力や、目的と手段の関係をとらえる力など、大いに思考力を使う設問になっていると感じました。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。