シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

日出学園中学校

2021年03月掲載

日出学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.数学から日常の問題解決方法を習得

インタビュー2/3

知識は知っているだけでなく使えることが大事

入試問題を通して、受験生のどんな力を見ていますか。

竹村先生 算数・数学は問題が解けないとどんどん嫌いになってしまいます。そうならないために基礎固めが大切です。入試問題でも基礎力が身についているかどうか、幅広い分野で毎年問うようにしています。基礎がしっかり身についていれば、たとえ初見の問題でも対応できると思います。
知っているだけでなく「理解している」ことが大切です。知っていれば使えるかというと、そうとは限りません。どんなとき、どのように使えばいいか、知識を使いこなせるかどうかの「プラスα」を見たいと思っています。

進路指導部長補佐 数学科/竹村 和晃先生

進路指導部長補佐 数学科/竹村 和晃先生

「採点してもらう」意識で答案を書こう

受験生の答案を見て、何か気づくことはありますか。

原田先生 数字が読みにくかったり、消しているのかどうか判別しにくかったりする答案が目立ちます。

竹村先生 「これ、消しているのかな?」ということは毎回議論になりますね。小数点の位置が上の方にあったりもします。小学生が「採点してもらう」という意識で解答するのはなかなか難しいかもしれません。でも、大学入試では「採点していただく」姿勢で答案を作成しなければ、採点者に自分の考えは伝わりません。
中学入試で数字の書き方が雑だなと思った学年は、始めのうちにくせ字などを直すように指導しています。

日出学園中学校 掲示物

日出学園中学校 掲示物

数学の必要性の前に楽しさを実感してもらう

竹村先生 数学はよく「なぜ学ぶのか」と疑問を持たれる教科です。生徒には数学を学ぶ意味を意識してもらえるように心がけています。
生徒の話を聞くと、「できないから、嫌だ」という思いから「数学を学ぶ必要があるのか」と思っている部分があると感じます。必要性を語る前に、まず問題を解く楽しさを実感してもらうこと、それは学年が低いほど大事だと思います。
算数と数学は問題を解くアプローチが真逆です。中1は算数から数学への切り替えのところでつまずきやすいので、実物を見せるなどして具体性を意識して教えています。

工夫して解決することに数学を学ぶ意味がある

竹村先生 私たちは日常でいろいろな困りごとに出くわします。それを何とかしようとするとき、自分にどんな手段があるか、それはどんな状況で使えるか、考え、組み合わせて解決の道筋を立てていきます。
数学もまさに同じです。前提条件に沿って考えますし、問題の解き方は1つではありません。また、Aの問題を解いたときのアプローチを類似するBの問題に使ってみるのも日常生活ではよくあります。
数学を学ぶ意味は、数学を通して「工夫して解決する」ことにあると思います。問題を考えることが純粋に「おもしろい」ということです。「勉強だ」と四角四面に思わずに、ああでもない、こうでもないと試行錯誤することをおもしろがってほしいですね。

日出学園中学校 教室

日出学園中学校 教室

愚痴りつつも生徒は数学の必要性を感じている

竹村先生 以前、高3に「なぜ数学を学ぶのか」を聞いたことがあります。各自、数学が必要と思うか思わないか理由を書いてもらいました。必要だと思わない理由を理路整然と書けたら、それは数学の力を発揮できていることになります。証明問題ができたようなものです。
生徒がこのように考えているのだとわかり、おもしろかったですね。「大人のエゴ」と書いた生徒がいましたが、どういうことか掘り下げていくと思考を深めることができます。
必要な理由として「生きていくため」といった類いの理由を書いてくるのかなと予想していましたが、「思考力を鍛える」ほかに、「今はよくわからないけれど、やっておけば将来役に立つかもしれないから」という生徒もいました。生徒はあーだこーだ言いますが、こちらが思う以上に数学の必要性をわかっているのだと思いました。

暗黙の了解を“マニュアル”として見える化

原田先生 大学入試科目に数学がない高2の文系クラスは、数学を学ぶ必要性が薄れがちです。少しでも興味を持ってもらうために、数学を学ぶ意義を「マニュアル通りの操作がうまくなること」と生徒たちに伝えています。生徒たちは大学生になってアルバイトをすることを楽しみにしていますが、実際にアルバイトを始めると、まずはじめに膨大な量のマニュアルを渡されます。教科書よりも厚く、複雑な内容に心が折れそうになりますが、数学の授業をしっかり受けていた生徒ならマニュアルを使いこなせるはずです。

「数学のマニュアル」とはどういうイメージですか。

原田先生 数学の教科書には、公式とそれを使う例題が載っています。そして例題の解説は、多くの場合式の羅列になっています。数学が得意な人にとってはそれで十分ですが、そうでない人にとってはさっぱりです。なぜなら、問題文のどんな言葉に注目して、どの公式の、どの部分に、どの数字を当てはめるのかが書いていないからです。数学が得意な人はこれを暗黙の了解として身につけているわけです。私の授業ではそんな暗黙の了解を“マニュアル”としてきちんと言葉で示すことで、数学が苦手な生徒にも分かるように心がけています。

日出学園中学校 図書館

日出学園中学校 図書館

インタビュー2/3

日出学園中学校
日出学園中学校昭和9年、市川が市となった年に市川在住の有志によって創設された。生徒の特性を伸長することに重点を置いた私塾的な雰囲気を持つ寺子屋のような少人数、男女共学の教育を目指していた。当初は幼稚園、小学校のみだったが、昭和22年中学校を、25年には高等学校を開設して現在に至る。
「校訓」は児童・生徒たちへの深い思いを込めて『誠・明・和』と表現され、74年を経た今日まで本学園に脈々と引き継がれる。さらに、時代の流れとともに「何のための教育か」ということがその基底から問われている中で、『誠・明・和』を基にしつつ、現在から未来に向けた大いなる飛躍の場としての学校を考えて、「夢」というダイナミックな要素が取り入れられた。
2008年7月に竣エした新校舎は、小学校から中学校、高等学校までが同一敷地内に整備されている。天窓や大きな吹き抜けで光を取り込み、緑豊かな敷地、木の香る学舎を意識したつくりで、図書館とコンピュ一夕室を含むメディアセンター棟は、21世紀に必要な情報教育に理想的な環境を整備し、児童・生徒の知的好奇心を育む。多様な進路選択、少人数教育に対応し、一人ひとりの可能性を伸ばすことを考えた設計で、仲間や教員と活発にコミュニケーションできる開かれた空間も用意されている。各教室はグラウンドに面した南側に配置され、採光は十分。
生徒が勉強の成果や学校生活で感じたことを記録する「私の記録」と名付けられたノートは、生徒と教員、家庭をつなぐ役割を担う。特に中学校では、担任と副担任がクラス約30名の一人ひとりに目を配り声がかけ、対話の時間を大切にしている。職員室は生徒が気軽に足を運んで質問したり、廊下で談笑したりするなど、教員と生徒の距離が近く、アットホームな環境。英語、数学では、2年生から習熟度別クラスを採用。理解の進んだ生徒にはより深い内容を、理解が不十分な生徒には基礎をゆっくりと指導する。
部活動の参加率は高く、少人数校だからこそ、活躍できるチャンスがたくさんある。中高一緒の幅広い年齢層の部員による交流が特長で、人間関係や教室外の活動が豊かな心を育てる。また、行事では、中2対象の伝統ある臨海学校。社会人・大学生になった先輩達も駆けつける。さらに、高1・高2では、希望者対象でのオーストラリアホームステイもある。