シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

日出学園中学校

2021年03月掲載

日出学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.日常の問題解決の流れがわかる問題

インタビュー1/3

思考の前段階となる「読解力」を測る

原田先生 本校では毎年、思考力を問う文章形式の問題を出題しています。そもそも思考力を発揮するには、その前段階として、書かれている内容を汲み取る「読解力」が必要です。そこで、リード文や設問文が長めの問題で読解力を試しています。
この問題は算数の難易度としては平易ですが、タイムスケジュールや条件変更といった内容をきちんと読み取ることができるかどうかを見ました。

数学科/原田先生

数学科/原田先生

問題の意図をつかむ力は想定以上だった

出来具合はいかがでしたか。

原田先生 文章が長く読解力が問われる問題に対してどれだけ取り組めるかなと思っていましたが、その点はできていたように思います。

竹村先生 思っていたより出来具合はよかったですね。思考する前提として、提示された情報を正確に把握することが大切です。少しでも状況を読み違えてしまうと解答の方向性が違ってしまいますが、前段階として問題の意図をキャッチする力は予想以上だったように思います。

設問によって正答率に差はありましたか。

竹村先生 それはあまり目立ちませんでした。目についたのは「うっかりミス」です。(問1)の「23:00」を「11:00」としたのは、わかっているのにもったいないですね。

原田先生 (問3)は、通常営業の客数と条件が変更された客数との差を求めるところを、変更後の客数をそのまま書いた答えがありました。(問1)が時刻、(問2)が回数、(問3)では人数を聞いていますが、話題の転換にうまくついてこられなかったのかなと思います。

思い込みで読むとミスしやすい

条件把握として大事なのは、(問2)でいえば、「10分間の換気を清掃の時間とは『別に』取る」とはどういうことか、ということですね。

竹村先生 大学入学共通テストを見ると条件把握が重要になっていますから、中学入試も意識して作成しています。
大学入試は文章を読み、前提条件を把握して問題を解く問題形式が増えています。文中の何気ないワードを正確にキャッチできないと正解にたどりつけません。思い込みで読んでしまうと読み違えてしまいます。中学入試でもキーワードを入れて正確に把握する力を試しています。

その点は小学生にとって難しいですね。「ミス」で済ましがちですが、なぜミスが生まれたのか原因を探ると、思い込みであることが多いですね。

竹村先生 それは生徒に教えていても感じます。独りよがり、自分勝手に文章を解釈してしまう。また1つの問題文で2つのことを聞くと、どちらか抜けることが多いですね。

日出学園中学校 正門

日出学園中学校 正門

問題の原案は文化祭のタイムスケジュール

問題の設定はコロナ禍の今ならではですね。

原田先生 これは、生徒会の顧問をしている私の実体験に基づいています。2020年の文化祭(日出祭)は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため一般公開をせず、クラスや部活・委員会などの映像・展示・ステージ発表をオンラインで公開しました。
どんなスケジュールで開催するか、当日の生徒の参加はどうするか、完全オンラインにするのかなど、条件が変わる都度タイムスケジュールを調整しました。このときの「条件に合わせて問題解決する」経験を、問題の流れとして入試問題に組み込みました。

この問題が目を引く理由の1つに、設問の流れの必然性が挙げられます。算数が苦手な子どもも、問題に向き合いやすいように思いました。

現実味のある設定で受験生を引き込む

竹村先生 また、問題はリアリティーのある設定を心がけました。レイトショーはどうするかなど、実際の映画館の営業からかけ離れないようにしました。

原田先生 利益のことも聞けるとよかったですね。

竹村先生 文章量が多い上に、利益まで計算させては問題が複雑になりすぎると思い、この問題ではカットしました。

通常営業の客数は1日720人、変更後は270人です。集客数がおよそ3分の1に減ることから利益が少なくなると想像できます。金額に換算すると、ニュースで取り上げられている新型コロナの影響もとらえやすくなるのではないかと思いました。

原田先生 算数・数学の力を使って、ニュースの抽象的な話題を具体的に考えてみてくれたらうれしいですね。

日出学園中学校 校舎内

日出学園中学校 校舎内

インタビュー1/3

日出学園中学校
日出学園中学校昭和9年、市川が市となった年に市川在住の有志によって創設された。生徒の特性を伸長することに重点を置いた私塾的な雰囲気を持つ寺子屋のような少人数、男女共学の教育を目指していた。当初は幼稚園、小学校のみだったが、昭和22年中学校を、25年には高等学校を開設して現在に至る。
「校訓」は児童・生徒たちへの深い思いを込めて『誠・明・和』と表現され、74年を経た今日まで本学園に脈々と引き継がれる。さらに、時代の流れとともに「何のための教育か」ということがその基底から問われている中で、『誠・明・和』を基にしつつ、現在から未来に向けた大いなる飛躍の場としての学校を考えて、「夢」というダイナミックな要素が取り入れられた。
2008年7月に竣エした新校舎は、小学校から中学校、高等学校までが同一敷地内に整備されている。天窓や大きな吹き抜けで光を取り込み、緑豊かな敷地、木の香る学舎を意識したつくりで、図書館とコンピュ一夕室を含むメディアセンター棟は、21世紀に必要な情報教育に理想的な環境を整備し、児童・生徒の知的好奇心を育む。多様な進路選択、少人数教育に対応し、一人ひとりの可能性を伸ばすことを考えた設計で、仲間や教員と活発にコミュニケーションできる開かれた空間も用意されている。各教室はグラウンドに面した南側に配置され、採光は十分。
生徒が勉強の成果や学校生活で感じたことを記録する「私の記録」と名付けられたノートは、生徒と教員、家庭をつなぐ役割を担う。特に中学校では、担任と副担任がクラス約30名の一人ひとりに目を配り声がかけ、対話の時間を大切にしている。職員室は生徒が気軽に足を運んで質問したり、廊下で談笑したりするなど、教員と生徒の距離が近く、アットホームな環境。英語、数学では、2年生から習熟度別クラスを採用。理解の進んだ生徒にはより深い内容を、理解が不十分な生徒には基礎をゆっくりと指導する。
部活動の参加率は高く、少人数校だからこそ、活躍できるチャンスがたくさんある。中高一緒の幅広い年齢層の部員による交流が特長で、人間関係や教室外の活動が豊かな心を育てる。また、行事では、中2対象の伝統ある臨海学校。社会人・大学生になった先輩達も駆けつける。さらに、高1・高2では、希望者対象でのオーストラリアホームステイもある。