出題校にインタビュー!
桜美林中学校
2021年02月掲載
桜美林中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.難しそうなテーマでは問題文のなかのヒントを探そう
インタビュー2/3
問いかけにより地球規模の課題を身近に
自分に始まり、家族、地域、日本、さらに世界…と視野が広がれば広がるほど、自分とは別、という意識が働くような気がします。貴校は、そこを身近な事例から、なるべく自分事としてとらえる工夫をしているように感じます。工夫の仕方、素材の選び方などで意識していることがあれば教えてください。
遠藤先生 私は主婦なので、ニュースや新聞などはもちろん、日常生活を送るなかで目にした情報が授業につながるか、ということは常に考えています。娘ともよく対話をします。
環境問題や食糧問題などと日々の暮らしがどうつながるかを、常に考えているということですね。
遠藤先生 そうですね。
若井先生 世界へ目を向けることも大事ですが、目線が足下にも向けられているというのは大事なことだと思います。
遠藤先生 さらに今、学習している知識と結びつけながら、生徒が今、持っていない知識であってもその場で考えられるようなものがあれば問いかけています。
桜美林中学校 チャペル
問題文を読み解けば道筋が見えてくる
日頃の授業でもそうしたことを大事にされているので、入試でも問いのなかで示された情報から理解したり想像したりする問題を出題しているのですね。
遠藤先生 この問題も、テーマ自体はおそらく小学生には難しかったと思います。ですから、問題文の中にヒントを散りばめています。そこで読み取る力が必要になるわけです。
若井先生 魚が水質の違いによって死ぬこともある、ということを知っている小学生は、意外と少ないかもしれません。
遠藤先生 実際に金魚などを飼っていないとわからないかもしれないですね。
若井先生 汚い水ではいけない。水道水を入れてもいけない。
遠藤先生 授業でそういう話をすると、クラスに1人、2人は知っている子がいて、その子たちを中心に教え合っています。
若井先生 そういうことは、理科が得意、不得意に関係なく、興味関心を持つ子が体験によって感じているものですよね。
遠藤先生 そうですね。生徒は教科書の内容よりもこういう話のほうが乗ってきます。
どうしても雑談が増えてしまうので、教科書で扱う内容に関連づけながら、ふくらませる形で行っています。
若井先生 興味を興味で終わらせない、ということが大事ですよね。それが学校の役割だと思います。
桜美林中学校 図書室
自宅でも子どもを相手に問いかける
遠藤先生は、ご自宅でお子さんを相手に理科と結びつけた話をしますか。
遠藤先生 いろいろしています。理科の教員なのに、私がドジなことをしているのでネタには困りません(笑)。
一例を教えてください。
遠藤先生 もっとも大きな事件は、危うく火事になりそうになったことです。電気器具でした。娘が学校でプラ板のアクセサリーづくりを体験してきて、家でも作ったんですね。彼女は、新聞紙でくるめばもっと温かくなるだろうと考えて、成形したプラ板を新聞紙でくるんでトースターに入れたのです。考え方は「素晴らしいね」とほめてあげましたが、当然、燃え出したので、あわててふたを開けると酸素が供給されるじゃないですか。そこで火がついてしまったのです。その時は、仕組みを話してあげました。
先ほどお話した砂糖水も子どもと「このまま置いておいたら、砂糖はなくなるよね」という話をして、実際にやってみたことです。
ニュースなどを見た時に解説することもありますか。
遠藤先生 いつもコメントしています。「どう思う?」「すごくない?」などという声かけをしたり、「このままだったたら、どうなっちゃうんだろうね」などとつぶやくと娘が反応するので、それに対して「お母さんはこう思うよ」と言ったりしています。私にはバラエティ番組でもなんでも日常に紐づける癖があって、理科的なものだけでなく、社会科的なものも含めて行っています。
また、娘には小さい頃から家事をやらせました。台所仕事だけでなく、洗濯、風呂掃除などもです。包丁を持たせるのは怖いですが、保育園児の頃から持たせていました。切れる感覚やどうしたら切れるか、ということを知ってほしかったので、そばに寄り添って見守りました。
桜美林中学校 生徒作品
すごく気になる添加物
遠藤先生のご専門は?
遠藤先生 私は海洋系の大学で、水産学部の出身です。食品を専攻していたので、今回の問題に出したような社会問題がとても気になるのです。添加物などもすごく気になっていて、娘と買い物に行くと、商品のラベルを見ては「これ、入ってるね」とか、「デキストリンてなんだろう」とか。そんなことばかり話しています。
あまり気にすると買えるものがなくなるのでは?
遠藤先生 そうなんですよ。「遺伝子組み換え」も、食べてどうなるかはまだわかりません。今後、長いスパンで人間がどう変わっていくかを見定めて、食べてもいいものかどうかがわかっていくのだろうと思いますが、添加物がアレルギーを引き起こしたり、発達障害に影響を与えたりしている、という資料もあるので、気をつけていけるものなら気をつけてあげたいなという気持ちでいます。
昔は添加物だらけでしたよね。よかれと思って行ったことが、後々後悔することになる可能性もあるということですよね。
遠藤先生 プラスチック製品にしても同じことですよね。
若井先生 海洋投棄なども、少しのつもりでも集まると大変なことになります。
遠藤先生 最後は自分たちのところに返ってくるんですよね。怖いのはマイクロプラスチックにまとわりついている毒物を人間が食べるはめになることです。水俣病と同じです。
若井先生 おかしいな、と思ってから原因を探っても遅いんですよね。
社会問題を自分事としてとらえられるように、学校でつなげてあげることは重要なことですね。
遠藤先生 そうですね。私の頭のなかには常にそんな視点がある感じです。
桜美林中学校 図書室
自由研究を生かして総合型選抜入試で国立大へ
理科的な興味を持っている生徒さんで、おもしろい事例があれば教えてください。
遠藤先生 宇宙には詳しいなど、コアなことに興味を持っている子はたまにいますね。
若井先生 理科の自由研究で3年間、四万十川を調べた生徒もいましたよね。
遠藤先生 その生徒が興味をもっていたのは地層でした。周囲から「フィールドワークの研究は理科じゃない」と言われたこともあったので、「科学だ」という話をしました。その子は学力レベルが高かったわけではありませんが、中学時代から一点集中型で、好きなことに打ち込んでいました。
若井先生 その研究を生かして、総合型選抜入試で高知大学に合格しましたね。
理科の自由研究とは?
遠藤先生 中学3年間、夏休みの課題として理科が取り組んでいるものです。1学期に各自で計画し、夏休み中に各家庭で実験を行って、レポートにまとめて提出します。その後、学内で選考会を行い、優秀なものを選んで「探求心」という冊子に掲載します。
桜美林中学校 冊子「探究心」
インタビュー2/3