出題校にインタビュー!
桜美林中学校
2021年02月掲載
桜美林中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.社会問題を身近に感じて行動できる子に入って来てほしい
インタビュー1/3
身近なものを題材にしたい
この問題の設問意図からお話いただけますか。
遠藤先生 数年前までは分野(物理・化学・生物・地学)ごとに問題を作っていたので、大問4問の構成でしたが、ここ数年は分野を融合し大問3問の構成となったので、分野を越えての作問をしやすくなりました。毎年、問題を作る時に意識していることは、できるだけ身近なものを題材に考えるということです。2020年入試の作問を始めた頃は、「SDGs」という言葉が出始めたばかりでしたが、関連した問題を作問できないか、と考えて、「環境問題」と「食料問題」をテーマに作りました。
この問題は5つの小問構成の4問目と5問目にあたります。4問目は、大学の共通テストが始まるということで、文章の読解力と科学的な知識を問いたいという意図をもって作りました。問題文で少し説明をして、それを小学生も知っている科学的な知識につなげて解いてもらうという問題でした。ですから、きちんと問題文を読むことができていれば、「BTB液が黄色」というところから知識をつなげて考えることができたと思います。
理科/遠藤 美智子先生
思考力も問う問題になった
遠藤先生 5問目の問題は「食料問題」です。例えば東北では寒くて稲作が難しいため品種改良をしていたり、アメリカでは大規模農場で遺伝子組み換えの作物が作られていたりします。スーパーに行けば、「養殖」「無農薬」「遺伝子組み換え」など、消費者に注意喚起する、いろいろな言葉を目にする機会があると思います。お母さんと一緒に買い物に行った時に、そういう言葉に気づいて会話していれば、それが子どものなかの理科的な知識とつながって、興味が湧いてくるのではないか、と考えて出題しました。もし、そういう経験が乏しくても、「農薬」「化学肥料の利用」「交配」「養殖」「ハウス栽培」というキーワードから想像して、自分なりの解答を導き出せばいいので、思考力も問えると思いました。
環境問題に目を向けてほしいという思いもあった
たしかにキーワードがたくさんあるので、何かしら答えられそうですよね。
遠藤先生 「キーワードが多いと選びづらいのではないか」という意見もあったのですが、興味のない子はキーワードがないと考えることができないので、そこは譲らずに複数のキーワードを出させていただきました。
どのキーワードが多かったですか。
遠藤先生 「ハウス」が多かったです。
利点を答える、ということで言うと、「養殖」も書きやすかったかもしれませんね。
遠藤先生 そうですね。答えられなかったとしても、この問題を解くことによって、これからいろいろな環境問題に目を向けてくれるようになるといいな、と思っていました。授業でも生徒に問いかけています。電気なども使いすぎると枯渇しますよね。「不便な生活をする?」「それは嫌だよね」「じゃあどうする?」みたいなやりとりをいつもしています。
桜美林中学校 チャペル前広場
ドキュメンタリー番組がヒントになった
どのようなきっかけで問題を発想したのですか。
遠藤先生 たまたま見たNHKのドキュメンタリー番組がきっかけです。この話題、使えそうだなとピンときて、いろいろ調べました。
若井先生 良い問題を作るには、普段からアンテナを張っておくことが大事ですよね。
遠藤先生 前年度はマイクロプラスチックを題材に出題しました。最近、話題になっていますよね。それも新聞記事を読んだことがきっかけでした。
若井先生 プラスチックは海洋汚染の原因になっていますね。
プラスチックは分解されないですからね。
若井先生 プランクトンもいて、きっと良い漁場だったところに、魚だけでなく、プラゴミも集まってきたわけですね。
遠藤先生 それが海鳥の胃袋から出てきたという話も耳にします。危機感をもって、今年からレジ袋が有料になったのです。
知識がある以前に、興味関心を持っていてほしい
受験生は書けていましたか。
遠藤先生 何か書いてくれれば点数になるのですが、手をつけていない受験生が目立ちました。以前から、1行くらい書かせる問題は1、2題、必ず出しているので、練習はしてきていると思うのですが…。
過去問を解いている受験生は対応できたかもしれませんね。
遠藤先生 後回しにして、時間がなくなってしまったのかもしれません。普段から環境問題に関心のある子、意識して行動している子、社会科が得意な子はなにかしら思いついて書いてくれたと思います。
若井先生 本校が期待を寄せている生徒も、そういうことに興味関心のある子ですからね。知識よりも、興味関心を持っていることが大原則です。
遠藤先生 日常から理科的な発想をもっている子に入って来てほしいです。例えば、砂糖を水のなかに入れたら溶けますよね。普段はかき混ぜて溶かすと思うのですが、かき混ぜなければ溶けないのか。そんな小さな疑問でいいのです。普段からお母さんの手伝いしているなかで、そういうことを考えている子に入ってきてほしいと思っています。
ちなみに、かき混ぜないとどうなりますか。カップの底に残ることもありますよね。
遠藤先生 量にもよりますが一晩で溶けますよ。溶けたものが拡散していくので、すべて溶けるのです。
桜美林中学校 校舎内
合格者と不合格者の間で差がつく問題になった
SDGsの「S」を答えさせる問題もありましたが、「SDGs」と答えさせる問題にしなかったのはなぜですか。
遠藤先生 本当は「SDGs」という言葉を書かせようかと思ったのですが、今年ほど広まっていなかったので、小学生には難しいかなと思って「S」だけにしました。
若井先生 この問題の合格者の正答率は44.4%、不合格者の正答率は45.9%でした。
BTB液が黄色に変化した、それはどういうことかという知識があれば答えられる問題ですからね。
若井先生 ポスターの1問目の合格者の正答率は73.5%、不合格者の正答率は58.1%。2問目の正答率は合格者が約7割、不合格者が44.4%と、合否に差がつく問題になりました。
教科の間で問題がかぶらないように確認
それなりの意見を持って説明できる子が合格している印象ですね。
遠藤先生 そうですね。
若井先生 書かせる問題は理科だけでなく社会科でも出題していますが、問い方に違いがあるように思います。理科は根拠に基づく説明を求めることが多いですが、社会科は「こうした事象についてどのように考えますか」というように、意見を求めることが多いです。
理科と社会で問題がかぶることもありそうですよね。
遠藤先生 「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)を書かせる問題を出した時に、「理科じゃないよ」と言われました。たしかに中学では社会科で扱うのですが、小学生は生活科の環境問題の学習の一環で、小3、小4あたりで必ず清掃工場に行きます。そこで習っているのでわかるかなと思いました。理科と数学が重なることもあります。
若井先生 本校では総合学力評価入試も行っていますので、問題が重なる可能性が高いんですよね。そのため、必ず教科の枠を越えて確認し合っています。
桜美林中学校 荊冠堂
インタビュー1/3