シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

桜美林中学校

2021年02月掲載

桜美林中学校【理科】

2020年 桜美林中学校入試問題より

かつて田沢湖では、イワナやコイ、そして当時の高級魚とされていたクニマスなどの漁が盛(さか)んに行われ、地域の人々の生活を支えていました。しかし、昭和の時代に入り食糧(しょくりょう)増産と電源開発計画のために、上流に流れる玉川の水を引(ひ)き込(こ)んで農業用水として使用し、湖の水を水力発電のために利用しました。その結果、1 あっというまに田沢湖から魚が消えてしまいました。
戦後、科学技術が急速に発展し、2 食糧を安全かつ安定的に供給するための研究が進んでいます。

(略)

(問1)下線部1について、魚がいなくなった理由は玉川から水を引いたことが原因とされています。玉川の水を調査したところBTB液が黄色に変化しました。このことから魚の生存に適さなかった理由として考えられることを書きなさい。

(問2)下線部2について、食糧を安定的に供給するため農薬化学肥料の利用、また交配養殖(ようしょく)ハウス栽培(さいばい)などが行われています。これらの技術は食糧の安定供給に関して、どのような利点がありますか。農薬化学肥料の利用交配養殖ハウス栽培の技術から1つ選んで、その利点を答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この桜美林中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)玉川の水が酸性だったから。

(問2)

例1 (技術)農薬
(利点)作物に害を与える生物を殺す効果があり、育てた農作物が傷むことを防げるので、安定的に生産することができる。

例2 (技術)化学肥料の利用
(利点) むらなく散布でき、必要な成分を必要なだけ与えて管理することができるため、質の高い作物を生育しやすい。

例3 (技術)交配
(利点)農作物を育てる土地の環境で育ちやすい品種を作り出すことによって、収穫量を増やすことができる。

例4 (技術)養殖
(利点)えさの量や質を管理することができ、決まった時期に決まった量を生産することがしやすい。

例5 (技術)ハウス栽培
(利点)急な気候変動や天候の影響を受けにくく、出荷したい時期に合わせて育てることができるので、農作物を継続的に供給しやすい。

解説

(問1)問題文に、「玉川の水を調査したところBTB液が黄色に変化しました」とあります。BTB液は、水溶液の性質を調べるときに用いる指示薬で、黄色はその液体が酸性であることを示します。酸性雨によって、湖や川にすむ生物が死んでしまうような被害が出たことなどと結び付けると、玉川の水が酸性であることは、魚の生存に適さないことがわかるでしょう。

(問2)農薬、化学肥料の活用、交配、養殖、ハウス栽培の5つの技術の中から、1つを選びます。それぞれの技術がどのような場面で使われているのかを思い浮かべてみましょう。具体的な事例が思い当たる場合には、それぞれの技術がどのようなことに役立っているのかに着目すると、利点を見つけることにつながります。必ずしも理科的な視点にこだわる必要はありません。社会科で学んだことがらや、ニュースなどで聞いたことがあることがらなども思い出してみると、手がかりを増やすことにつながるでしょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

文章から読み取った情報と知識をもとに、人間が自然に手を加えることによって起こるメリットとデメリットに目を向ける問題です。
子どもたちは、問題に示された文章から情報を読み取り、読み取った情報と知識を結びつけることによって、田沢湖から魚が消えた原因を筋道立ててとらえたり、食糧の安定供給に欠かせない技術にどのような利点があるのかを説明したりしていきます。

これらの問題に取り組む中で、子どもたちはこれまでに身につけてきた知識を、さまざまな状況に結びつけて活用することで、身の周りの現象がなぜ起こっているのかを根拠を持ってとらえることができることに気がつくでしょう。また、過去のできごとから学び、現代を生きる私たちが持続可能な社会の実現に向けてどのような行動をとるべきか、思いをめぐらせることもできるでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。