シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

田園調布学園中等部

2021年02月掲載

田園調布学園中等部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.いろんな体験を通じて学びを得ることができる田園調布学園中等部

インタビュー3/3

お話を伺っていると、時代を踏まえて全体として教科の垣根を越えて先生同士が繋がりながら、生徒のことを考えていける学校である、という印象を受けました。

細野先生 そうですね。学校ルーブリックを作るだけでも1年くらいかかりましたが、このルーブリックを作ってから改めて「こういう学校だよね」、「こういう生徒を育てたいな」という指針にもなりました。

細野先生 「どんな生徒がこの学校に向いていますか?」という質問をよく受験生の方から受けるのですが、自分の興味あるものしかやりたくないというお子さんではなく、まだ夢が決まっていないとか、友達と一緒だったらやってみてもいい、というお子さんであれば「本校はいろんな体験ができるので、非常に幅広い可能性がある学校ですよ」と伝えています。

入試広報室長/細野 智之先生

入試広報室長/細野 智之先生

「国語」というわかりにくい科目を可視化する

日能研では子ども自身で授業が終わった後や、家庭学習が終わったらテストに向けて振り返りをするようになっています。御校の指標はすごく具体的ですから、生徒さん達が大学や社会に出ていった時に自分自身で振り返りができるように育っていくのではないかと感じます。

兼子先生 国語は、何がわからないかがわかりにくい科目であるとも言われます。生徒たちの「できた!」を可視化してあげることが大切だと思っています。

たくさん文章を読むことで視野が広がる

入試に向けて生徒が普段から国語力を高めるためにやっておくこと、それに向けて親がどのようにサポートすれば良いかということについてアドバイスを頂けますでしょうか?

黒田先生 まずはいろんな本を読んでほしいですね。また新聞、小学生新聞でもよいです。普段読む習慣がなければ、保護者の方が「これ面白かったよ」などと声を掛けてきっかけを与えたり、多くの文章を読んだりすることで、たくさんの言葉や表現があることを知って、ことばの世界を広げてほしいですね。

文章を読むことで世界が広がります。その上で、読んで自分が感じたことを文章にしてみるとか、読んだ新聞の中に書いてあったことについて、書いてある内容や、それに対して思ったことや考えたことをまとめてみる、意見を書いてみる、そういった練習をしていくといいと思います。

兼子先生 保護者は子どもの興味や関心を絶やさないことが重要でしょうね。何かを読んだり話したりした時に、保護者から「これってどういうことだろう? これについてどう思う?」というアクションがあるとよいと思います。そして、何よりも折に触れて褒めてあげることが、やる気の源になるのではないでしょうか。

年々子どもの気持ちが弱くなっている、自己肯定感が少なくなっていることが問題だと言われているなか、実際、子どもたち自身が自己肯定感を持ちづらい状況になっているように感じます。小学生でいうと、成績で分けられたりラベルを貼られたりして、認められているかどうかが分かりづらくなっていると思うのです。

だからこそ「お掃除丁寧にしているね」とか「頑張っているね」といった具合に、なるべく褒めてあげることが大切だと思います。結果ではなく行動の過程をほめることが今後につながると思います。親は距離が近いがゆえに子どもの悪いところに目が行きがちですよね。それを抑えてなるべくいいところを見つけるようにする。改善すべきことは的確に伝えつつも、自己肯定感に繋がるような声掛けが必須で、それがないと主体的な学習にも繋がらないと思います。

田園調布学園中等部 図書館

田園調布学園中等部 図書館

170ある講座から好きな講座を選んで学べる「土曜プログラム」

進学を決定した新入生アンケートを見ると、土曜プログラムというのが決め手になっているようですが?

細野先生 これは、ほとんどの講座が外部の講師を招いてやっているもので、本校の教員がやっているのは10もないくらいです。本校としては体験も出会いとして考えていて、「こんな世界があったの?」というようなものを感じてもらえたら嬉しいものです。

これは2002年からずっと続いている講座で、本校の一番の特徴かと思います。当初80しかなかった講座数が今は170まで増えており「好きなことが見つけられる」と中等部1年生の生徒たちはたくさんの種類の講座を取っていますね。希望者が1人でもいれば必ず開講しますし、人気の講座では抽選のものもあります。気象予報士やニュースを読んでいるアナウンサー、日本舞踊の講師なども訪れるので、保護者の方からも参加したい!という声が挙がるほどの人気です。

こうした講座がいつ役立つかはわかりませんが、やってみるからこそ視野が広がるし、実体験から見えてくるものがあります。やってみたらやっぱり違っていた、というものもあっていいし、6年間の中でこの土曜プログラムの体験を通し、興味関心を広げるきっかけになればいいなとは思います。

多様な学びをしたいと考えている子ども達には喜ばれますね。
理数教育の取り組みに対しても評価が高いですね。

細野先生 女子校でありながら理系の進学率が45%近くいるのは比較的高い数値だと思います。理数系に特化しているわけではありませんが、そうした可能性がある学校だと認知されているのは有難いですね。生徒達の多様な夢を、かなえられるような応援ができる学校でありたいです。

田園調布学園中等部 校舎

田園調布学園中等部 校舎

インタビュー3/3

田園調布学園中等部
田園調布学園中等部1926(大正15)年に日本郵船の外国航路の船長だった西村庄平が、日本の女子教育の重要性を痛感、「精進道」の提唱者として知られる川村理助を初代校長として招聘、創設した(当時の名称は調布女学校)。67(昭和42)年に調布学園女子短大を設立。2002(平成14)年に田園調布学園大学が開学。03年から高校募集停止。04年には田園調布学園中等部と改称した。
緑深い田園調布の住宅街の一画に校地を構え、環境は抜群。04年4月より現在の校舎を使用開始。新たにラウンジ、プラザ、CALL教室などができた。2階から5階までの屋上は回遊式庭園で語らいとくつろぎの環境も備えている。
自分本位の我(が)を捨て、目標に向かって努力し続けること、他人(ひと)よかれと行動すること、という意味の「捨我精進」を建学の精神とする。朝礼では「精進の鐘」が打ち鳴らされ、全生徒・教職員が黙想。伝統も重んじつつ進取の精神にも富み、国際交流にも積極的に取り組んでいる。
02年から2期制、65分授業、1日5限・週5日+土曜プログラムを実施。英語は中1から1クラス2分割授業。進度が速いだけでなく、言語の背景にある文化や歴史にまで理解を深めていく。英・数は中3・高1で5クラスを3グレード7クラスに分ける到達度別授業を実施。生徒の約9割が現役で4年制大学に進学。早慶上智、東京理科大学やICU、MARCHレベルの難関私大に多くの合格者を出しているが、年々、国公立大学の合格者も増えている。
「土曜プログラム」は、講師も大学の先生や保護者など多岐にわたる。学年ごとにテーマを設定した「コアプログラム」と約170もの講座から自由に選択する「マイプログラム」で構成。体験学習の機会も多い。農村生活体験をする山形県酒田市ファームステイ(中2)、志賀高原体験学習(中1)、裁判所傍聴(中3)、学習体験旅行(京都・奈良)(中3)、学習体験旅行(西九州方面)(高1)、オーストラリア・カナダへのホームステイ(中3希望者)、ニュージーランドターム留学(高1・高2希望者)などなど。なでしこ祭、体育祭、芸術鑑賞教室、定期音楽会、百人一首大会、スキー教室などの行事もある。クラブ活動も活発で、運動部13、文化部14、研究会4が、中高合同で活動している。朝掃除や精進日誌など以前から取り組んでいた教育活動も大切にしながら、新しいことにも挑戦を続けている。