出題校にインタビュー!
田園調布学園中等部
2021年02月掲載
田園調布学園中等部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.時代やトレンドを積極的に取り入れた入試問題を考案
インタビュー2/3
次に入試問題の全体の考え方などをお聞かせください。
黒田先生 入試問題を通して見たい力は、基本的な3つの力(読解力・記述力・語彙力)です。
大問は、文学的文章と説明的文章をそれぞれ1題ずつ。その中に、漢字問題を計5~6問出題します。その3つの基本的な力を見るために、文学的文章は、➀人物の心情を読み取る問題 ②主題に関する問題 ③表現の特徴を捉える問題 説明的文章は、➀段落の関係を捉える問題 ②テーマと題材に関する問題 ③問題提起とその答え、筆者の主張を捉える問題を作問しています。
これらは、本学園に入学してからも6年間を通して伸ばし、高めていきたい力です。
文章のテーマはどのように選ばれていますか?
黒田先生 入試問題は、私たちから受験生へのメッセージだと考えていますので、文学的文章も説明的文章も、そういう視点を持って作品を選ぶことを大切にしています。私たちが他者と関わるうえで「共感力」って必要ですよね、ですから小説は、主人公の年齢や立場などにはこだわりなく、作品の内容を重視して、その中で、心情の変化や起承転結がしっかりある場面を選びます。説明的文章は、もちろん小学生が読める文章であることは前提ですが、テーマは社会的なものから科学的なものまでさまざまです。私たち自身が新しい発見や学びを得たり、面白いなと感じたり、なるほどと思ったりした文章から、受験生にもぜひ同じように読んで考えてほしいと思う部分を選びます。
兼子先生 時代やトレンドを意識したものを選ぼうという意識はありますね。説明的文章とは評論であり、時代を切り取るものなんです。そのため、古いものだと時代と乖離してしまうので、できるだけ新しいものを選ぶようにしています。
たまに先生のこだわりで古い論説文を出す学校もあって、今の常識で考えると合わないと感じるものもあります。
兼子先生 ただ、評論はどの作品を選び、どこを切り取るかに苦労します。小説はすぐ選べるのですが、評論は、注が多くなりすぎると受験生が読みにくいだろうとか、抽象概念ばかりだと小学生には読みづらいだろうとか、いろいろ考えますね。
過去年度との重複も避けなくてはいけないとか、いろいろなルールがある中で、なるべく良い文章を出したいな、という思いは強いです。受験の緊張感の中でも気持ちが潤うような「緊張の中でも読めるようなもの」、「へーそうなんだ」と新しい発見があるものを意識して選ぶようにしています。
国語科主任/黒田 いとみ先生
ルーブリックを有効的に活用
田園調布学園中等部の国語科における授業の特徴を教えてください。
黒田先生 学校ルーブリックがありまして、そこにカリキュラムの内容を落とし込んで教科ごとのルーブリックを作成していきます。そのうえで、6年間の最後の学習到達目標を意識して設定し、「目標到達のために中1から高3までの、どの学年でどのようなことを学び、どのようなことができるようになればいいのか」という視点でカリキュラムとシラバスを作成しています。
授業の単元でも、ルーブリックを提示して、この教材や単元の学習目標は何か、どのようなことができるようになればよいのかを生徒が意識し、学習後に振り返ることで、次の学びにつなげていく仕組みを作っています。 定期考査も同様に、振り返りシートを作成し、自分のがんばれた点と今後の課題や弱点を具体的に把握して、今後の学習への取り組みにつなげていけるようにしています。
兼子先生 教科だけでなく各学年、各行事でもルーブリックを事前提示することで「何ができるようになるのか」を明確にしています。特に国語は「どうすればできるようになるのかわからない」「何ができるようになったのかわからない」と言われがちな教科なのですが、それを言語化・視覚化して、教員側も到達点を意識するようにしていています。
本校の建学の精神は「捨我精進」なのですが、それをより具体的なものにするために、学校ルーブリックを作りました。
このルーブリックを使って実際の授業はどのように展開されるのですか?
黒田先生 ルーブリックが、授業の具体的な到達目標を示しますので、それに沿って授業内容を考えます。中学生はワークシートを作成して、今学習していることが到達目標につながることが、生徒たちに視覚的にも分かるように授業をすすめることが多いですね。
田園調布学園中等部 図書館
なぜ間違ったのか?何がわからないのか?を客観的に把握できるシートを作成
兼子先生 もともと本校では定期考査後に「直しノート」というのを各教科で行っているんですが、国語の場合、問題の切り貼りに時間をかけたり、答えをそのまま写したり、全員に徹底して「次に生きる直しノート」を作成させることが難しい状況でした。そこで「どこを間違ったのか」を客観的に見られるようにしたいと思い、「評論ではこういうポイントがあり、今回の考査ではこの問いに当たる」、「小説ではここを必ず聞かれるが、今回はこの問いに当たる」などの指針シートを作って、生徒自身でABC評価できるようにしたんです。
今の自分の状況を把握すること、次にどう生かすかということを、生徒たちがどんどん自分でできるようにと工夫して作ったシートとなっています。
黒田先生 共通している小説・評論の読み方などを示し、自分の到達度をABCで評価しながら、たとえば「BやCが多いのはなぜだろう?今後どうすればよいだろう」と自分で考えて、次に活かしていけるような取り組みですね。自分の課題や弱点が具体的に把握できることで、今後どのようなことができるようになればよいか、や、以前よりはここができるようになった、ということがわかるようになることが、良い点だと考えています。
兼子先生 生徒たちからすると、「国語は何をしたらいいの?」という答えにもつながると思います。素材は違うけれども「毎回これは必要だよね」といったことが分かると思うのですね。
黒田先生 この取り組みは、教科としてはじめてから3年目になります。
生徒たちは国語の時間は、しっかり考えたり、話し合ったりする時間なんだ、と思っていると思います。
定期考査の問題内容もどんどん変えています。授業内容をふまえた応用設問、授業で扱った文章と他の初見の文章を読み比べる問題、授業で扱った文章に関連する初見の文章読解問題、共通テストを意識した問題、など、「伸ばしたい力」「思考する力」を強く意識して問題作成をするようにしています。
兼子先生 あと、これは全教科となりますが、思考力が鍛えられるような問題を定期考査でも出題していきましょう!という取り組みをしていて、各教科の先生たちが「こういう問題を出しています」と紹介し合ったり、共通テストを意識して身近な題材を利用した問題を作成したりしています。
細野先生 数学ですと、中学の統計の分野では実際の生データを使った問題を出題したり統計検定なども受けさせたりしているので、ただ問題が解ければいいのではなく、どのように読み解けばいいのかを考えさせることは定期考査から意識してやっています。
田園調布学園中等部 自己評価シート
インタビュー2/3