出題校にインタビュー!
田園調布学園中等部
2021年02月掲載
田園調布学園中等部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.「SDGs」のテーマにもなっている、現代社会にマッチした問題
インタビュー1/3
まずはこの問題の出題の意図を教えてください。
兼子先生 文章を読んだ後、書かれていることに対し、身近なことと照らし合わせて自分の考えを述べる力を見たい、というのが出題の意図です。読解そのものの力もそうですが、身近なものについて深く考えようとする姿勢、そこからから学びが深まって力が伸びると考えています。授業でもこの点を重視して取り組んでいますので、そこを聞きたいと思いました。
加えてSDGs17の目標の一つでもある「ジェンダー」について、本校でも様々なワークショップを行ってきましたが、女子校だからこそ、ジェンダーに関することにも興味を持ち考えてほしい、という思いも込めた出題となっています。
日々入試問題を解いているのですが、この問題は非常に小学6年生の実情に即した問題だなと感じました。
入試問題の中には「こういうことを考えられるのは高校生になってからではないか?」といったように小学生が考える事象とは乖離している問題もある中で、小学6年生にとっていい意味で無理のない出題をされていると感じます。
その中で、中高生の授業を普段されながら小学生の言語レベルや小学生の実情、成長の段階などに触れる機会はなかなか難しいと思いますが、作問にあたって何かそのあたりを研究されているのですか?
兼子先生 入試問題の採点を毎年しているので、受験生の変化や現状などは何となくわかりますね。中等部1年生も、入学当初は小学生の延長であり、その様子をみても変化は感じ取れます。その段階からお預かりし、6年間をかけて育てていきたいと思っています。受験生の変化を意識しつつ、取り組みやすい素材を選んだり、作問に工夫をしたりするようにしています。
教頭/兼子 尚美先生
設問をしっかり読めることができれば解ける問題を出題
解答に対するポイントなどあれば教えてください。
兼子先生 ポイントとしては、「人間の社会で『男らしい』『女らしい』と区別しなくなった例が適切に書けているか」「それに対する自身の意見と根拠がはっきりと書かれているか」「その根拠が意見ときちんと呼応しているか」「説得力があるか」等があげられます。
黒田先生 基本的に採点は加点式ですが、基準の要素が欠けているもの、また誤字脱字があるもの、話し言葉などは減点しています。
ちなみに空欄は少なかったのですか?
兼子先生 そうですね、あまりありませんでした。
設問の指示は採点基準にもつながるので、設問をきちんと読んで解答すればそれほど低い点数にはならないはずです。そのため、設問で指示している内容に欠落があるとかなりの減点となってしまいます。設問も丁寧に読むことが大切ですね。
田園調布学園中等部 プラザ
「なぜ?」「どうして?」という視点を持って解答できる生徒を求めている
兼子先生 小さい子どもがそうであるように、身の回りのことに疑問をもち、その芽を膨らませることが、学びの基本だと思うんですね。疑問に思ったことを解決しようと試行錯誤する中で、発見したり失敗したりして学びが深まっていくと思うので、そういう姿勢をぜひ持ってほしいと思います。
その力は鍛えられるものですか?
兼子先生 小さいころから十分に鍛えられると思います。大人の側は、「なぜ?」「どうして?」という子どもの問いかけに、とことん付き合う姿勢が求められるでしょうね。
本校の授業では、もし答えが間違っていた場合には、「なぜ違うのか」「どういう点で違うのか」「どうすれば正解にたどり着けるのか」など、単に答えを確認するだけではない問いかけを大切にしています。小学生でもそういったところは同じだと思います。
黒田先生 授業の中で「そう考えるのはなぜ?」「その意見の根拠はなに?」というようなことを聞くのは大切だと思っています。
答えや意見を出せばよいというのではなく、筋道を立てて自分で導き出していけるようにしたいですね。
兼子先生 国語は模範的な解答を覚えるものではないので、なぜそう考えるに至ったかというプロセスや考える材料となる知識の総量など、いろんな力が問われると思います。だから面白いんですね。授業中、楽しく学べるような工夫もしています。
田園調布学園中等部 校舎内
設問をしっかり読むクセを持つことが重要
設問をしっかり読まずに間違えることもありますよね。
兼子先生 たとえば小学生ですと、線を引きながら、あるいは指で押さえながら、または丸をしながら、といった視覚的なマーキングをしながら読むことは大切です。大学入試の小論文でも、特に難解な文章では、何について書かれているのか把握するのに精いっぱいになり、高等部3年生でも書くべき内容からずれてしまうことがあります。そうした時には「必ず設問に戻って確認して答えるように」と指導しています。まして小学生ならなおさらですよね。合言葉は「設問に帰れ!」です。
いろいろなことを学び知るためには教科横断が必要
この問題は、国語の問題にもかかわらず社会科の問題でもあって、科目の垣根を取っ払って身近なこととして考えていくのはすごく大事であると思います。
兼子先生 社会とも連動しますが、国語は文章を読むという基本の科目なので、その文章の題材となるいろんなことを知らないと読解ができないんですね。
今の小学生は知識や背景がなくて読めないというのが現状ですね。
兼子先生 本校は教科横断も積極的にやっています。数学と理科に加え、社会と美術、国語と音楽など、様々な教科でコラボレーションをしています。生徒には、学びは目の前の教科書の中だけではない、科目同士はつながっている、ということを体感して欲しいんですね。教科横断は、新カリキュラムに向けてさらに深化させていきたいと思っています。
細野先生 休校期間中、3月からオンライン授業をやっていたのですが、国語、社会、数学、理科、英語に加え、美術や体育、工芸など全ての教科で双方向方式で実施しました。そういうところが本校の教育の根幹にあるかなと思いますね。
兼子先生 今、非認知能力が重要といわれている中で、様々な活動を通して生徒たちのそうした部分を延ばすことが非常に大切だと感じています。国語や数学といった教科だけ出来ればいいのではなく、クラブとか学習体験旅行といった教科外活動などに興味を持って自己実現してほしいですね。
田園調布学園中等部 精進の鐘
女子校だからできること
設問に関係して「男らしい女らしい」ということを考えたりすることも女子校としてはあるのですか?
兼子先生 女子校だからこそ、男女両方いる社会を客観的にみられると思うんですね。今ジェンダーが話題になることが多いですが、これからの世代の生徒たちには、そういった社会を知りつつ、「人として」成長してほしいですね。
黒田先生 その中に自分がいるとなかなか気づかないけれど、卒業生や、外部の人から、「女子校だからこそこんなことができた、できる」と言われて、在校生たちがそれを実感することも結構ありますね。
兼子先生 LGBTQなどについても、情報については生徒たちもたくさん持っていますし、よく検索し調べています。ただ、多くの情報があるからこそ、自分の価値観を上手に作っていかなければいけないですよね。だからこそ、学校は偏ったものではなくいろんな価値観があるんだよ、ということを伝えていかなければならないと思っています。
田園調布学園中等部 正門
インタビュー1/3