シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

田園調布学園中等部

2021年02月掲載

田園調布学園中等部【国語】

2020年 田園調布学園中等部入試問題より

(問)「魚にとって、性は、私たち人間が思っているよりもずっと自由なものなのだ。男らしいとか、女らしいなど、魚にとってはそれほど重要なことではないのだ。」とありますが、人間の社会でも「男らしい」「女らしい」と区別しなくなってきています。その例としてどのようなことがあげられますか。それに対するあなたの意見とそう考える根拠(こんきょ)を書きなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この田園調布学園中等部の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

小学校のランドセルの色があげられると思います。私の母が子どものころは、女の子は赤色、男の子は黒色のものを持つことがとても多かったそうです。男の子には強い印象の黒色が好まれていたと聞きました。今は男女にかかわらず、好きな色を選んでいます。私は性別にかかわらず好きな色を選べる方が自分の個性を出せるのでよいと考えます。

解説

まず、「人間の社会」で「『男らしい』『女らしい』と区別しなくなってきてい(る)」例を挙げることが求められています。「~区別しなくなってきてい(る)」というように、現在進行中の「変化」が問われているので、過去は「男らしい」「女らしい」と区別されていたけれど、現在は区別されなくなりつつあるものに着目することが必要です。そのうえで、「男らしい」「女らしい」と区別しなくなっていることに対する自分の意見を、そう考える根拠とともに述べます。根拠としては、自分の意見の理由や具体例を挙げることができるでしょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題は、次の二つの点で子ども達の将来にとって示唆的です。一つは、「男らしさ」や「女らしさ」へのまなざしを育む点です。SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に象徴されるように、「男らしさ」や「女らしさ」といったジェンダー(社会的、心理的性別)に基づく、不当な扱いをなくそうとする動きが、世界で活発になっています。それゆえ、ジェンダーに敏感であることは、これからの時代を生きる子ども達にとって不可欠です。この問題は、こうしたジェンダーへの意識を子ども達の中に高めることにつながる問いだと言えるでしょう。

もう一つは、文章との向き合い方を示してくれる点です。魚にとって「男らしさ」「女らしさ」の区別はそれほど重要ではないという文章内容に関連して、人間社会の変化を探ったうえで、自分の意見を述べます。こうした文章との向き合い方は、高等教育の学びと重なるものです。高等教育では、例えば先行研究として存在している文献の内容を、現実の世界に照らして妥当かどうかを検討することが必要とされます。その意味でこの問題は、子ども達にとって高等教育へのいざないと言ってよいのではないでしょうか。

以上のように、この問題は、いわば子ども達の将来へのメッセージを持ったものだと考え、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。