シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

明治大学付属明治中学校

2021年01月掲載

明治大学付属明治中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.小学生も社会の一員である、という自覚を持ってもらいたい問題

インタビュー1/3

今回の出題意図はどのようなものだったかをお聞かせください。

平田先生 この問題は「社会で勉強したことをきちんと使っていけるか?」、「それを応用して実際に生かして課題を解決していけるか?」というのがポイントです。

まず前提として「利点」を上げたのですが、現代社会の動向に興味を持っているか?を聞きました。その次に、ただ良い所だけではなく「課題が見えているか?」を聞くための質問を行いました。最後に「実際にあなたはそれを解決していけるんですか?」という部分も考えてほしかったので、「方法」を答えてもらうような一連の作問となりました。

今の時代に大事な力ですよね。

平田先生 興味を持つのは大事なことですが、知っているだけではなく「実際に解決していけるか?」とか「社会の一員として、社会全体として考えられるか?」がポイントです。解答の中には「自分さえよければよい」というような記述もあったのですが、社会科では「社会の一員として何ができるか?」、「みんながより幸せになるために、社会全体を良くするためにはどうしたらよいか?」を考えさせたいと思い、このような出題となりました。

社会科/平田 裕貴先生

社会科/平田 裕貴先生

世の中で話題となっているテーマに切り込んだ問題

キャッシュレス決済について、子供たちの中には使ったことの無い子もいると思うのですが、どういう観点から題材に選ばれたのですか?

平田先生 そもそも「社会全体がどういう動きをしているか?」というのを捉えているかというところに主眼を置いています。自分が使っている、使っていないという点はさておき、社会がその方向に進んでいるのであれば考えなければいけない問題です。また自分だけが使えればいいというのではなく、例えばお年寄りなどではどうなのか?「社会全体で」という視点も持ってほしいという思いから、今ちょうど話題になっているキャッシュレス決済を題材にしてみました。

問題を作る際には、自分がニュースを見ていて「これ、課題だよな」「こういうところを小学生に伝えたいな」というものを題材にすることが多いです。この年の入試問題では新紙幣や消費税といった話題もあったのですが、一方でキャッシュレス決済もあり、「現金を新しくすると言っていながらキャッシュレスにするって、これからどういう社会になっていくんだろう?」と自分自身も疑問に思っていたので、そういうことを一緒に考えていきたいと思いました。

最近は小学生でもPasmoやSuicaなどで決済しますし、意外と浸透しているのかも?と思うところはあります。
ただし一方で、キャッシュレス決済を使っている受験生は計算能力が落ちるのではないか?というような考えも中にはあるのですが、そのあたりはいかがですか?

平田先生 「計算力が落ちるのでは?」というのが課題かもしれませんし、今進んでいる社会の動向に対して「本当にこれでいいのか?」という意見があるかもしれません。中にはキャッシュレス決済よりも「現金のほうがよいかもしれない」といった意見があってもいいとは思いますが、とにかく疑問を持つ視点が大事だと我々は考えています。

明治大学付属明治中学校 校門

明治大学付属明治中学校 校門

個人の主観でなく社会全体においてどうとらえるべきかが重要

結構この問題は難しかったのではないですか?

平田先生 比較的出来ていましたね。キャッシュレスという言葉を知っていれば「パッと払える」などの利点の部分は書けると思っていました。課題や方法に関しては難しいから書けないかもしれない、とも思いましたが、結構多くの受験生が対策したり調べたりしてきていて驚きでした。例年時事問題は出題しているので、皆さん対策してきているのだ、と感じる内容でした。

この問題にはいろいろな答え方があるのですが、「自分だけが使いすぎないように気を付ける」といった、自分さえよければ良い、といった個人の観点からの記載だけだと良い解答とはいえません。ポイントは「社会全体」として考えられているかどうかです。

子どもながらにセキュリティの観点から答えを書いている子もいたのでしょうか?

平田先生 中には書いている受験生もいました。「使い過ぎてしまう」だったり「いくら使ったかわからない」といった解答を書いている受験生は結構多かったように思います。自分自身もちょうど問題を作っているタイミングでキャッシュレス決済を使い始めたのですが、「いくらでもお金があるように感じてしまう」と感じていて、実際そのことを書いている受験生もいました。
その受験生は「残金を必ず表示させる」といった解決策を書いていました。

明治大学付属明治中学校 図書館

明治大学付属明治中学校 図書館

具体性のないものや人任せとなるような解答は良くない

今現状は存在していなくて「世の中でこうあったらいいな」という発想のものでも良いのですか?

平田先生 机上の空論で「全く無理だろう」というのは良くないですが、課題を解決しようとする「姿勢」をまず大切にしています。ただ、実現可能性や具体性が大事なので、「環境を整える」といったような抽象的な表現だけでは良くありません。また、「政府に何とかしてもらう」といった人任せのものや、自分の参加する意識が無いものも良くない解答であると考えます。

3つ全部を埋められなかった子もいますか?

平田先生 中にはいましたが、比較的みんな書いているという印象でした。もう少し空欄が多いかなと思ったんですが、時事問題をしっかり勉強してきているという印象がしました。

ここにたどり着くまでに時間の足りない受験生は正直いると思います。どのような構成にするのか、問題の量はどれくらいがいいのか、といったことは本校でも議論になる部分ですが、地理・歴史・公民と幅広く出題するように心がけています。

その中で時事問題は、最後のメッセージとして「今まで解いてきたことをふまえて聞かせてね」という流れになっています。解く順番として、最後の問題をはじめに解いてもいいとは思いますが、最後に見返してもらうと改めてメッセージが伝わるという思いで作問をしています。

新聞やニュースは日頃からしっかりチェックしておこう

問題構成について時代を先取りしている感がありますが、「最先端」の情報をどのように子どもたちに伝えていけばよいとお考えですか?

平田先生 やはり新聞やニュースを見て自分なりの考えを持つこと、日常の社会のやり取りに疑問を持ったり、世の中変わってきているな、と感じたりすることが大切です。

「社会はこういう風に動いているんだよ」と知っていてほしいと思いますし、将来は現金がなくなってキャッシュレス決済しかなくなるということもあるでしょう。中には「世の中が進んでいく上でやっぱり現金のほうが良い」という意見があってもいいとは思います。子供たちが未来を考えていく上で「こうした動きがあるのでではどうしますか?」と、まさにこれから小学生が生きていく時代の中で重要な問題ともいえるのではないでしょうか。

この問題の正答率は高かったですか?

平田先生 そうですね。もっと空欄が多いかと思っていましたが予想以上に出来ていました。

明治大学付属明治中学校 掲示物

明治大学付属明治中学校 掲示物

自分なりに課題を持ち、解決方法を考える

何か印象に残った答えはありますか?

平田先生 「スマホの充電が切れてしまったら使えなくなってしまう」とか、「パスワード」について解答している受験生も何人かいたので、よく勉強して課題も考えられていると思いました。

「利点」「課題」「解決方法」とラベルを付けていた意図って何なのでしょう?

平田先生 一番には「解答しやすい」というのがあります。他には利点だけでなく、自分なりの課題や解決方法も考えられるようにしてほしいという点もあります。きちんと疑問を持ったり短所を見つけたりすることは大事ですし、課題ばかりではなく良い面も見なければいけないので、両方の側面を見ていきましょうということです。そして「課題があるなら、それを一緒に解決していきましょう!」という視点を持ってほしい、という意図が含まれています。さらに加えて、「入学した後も一緒にこういう問題を考えていきましょう!」というメッセージも含んでいます。

進んでいく一方で疑問を持たなければならないですし、逆に進んでいることに批判だけするのは良くないと思っているので、課題があるなら解決する方法を考えることが大切です。中には批判だけして解決方法が出ないという人もいるので、いいところはいいところで取り入れていく、時にはブレーキを掛けることも必要であると思います。

このように考える工程は、入学してから本校の様々な委員会活動でやる工程と同じなんですよね。
コロナ禍で「校内限定で文化祭の開催をどうやってやるか?」といった時にも、Zoomを使ったり校内同時中継をしたりといったことを生徒主体で考えていきました。解決能力の入り口として、こういった資質を持ってもらいたいと思っています。実際、教員が驚くような展開をしてくる生徒は社会科に限らず結構いますよ。

インタビュー1/3

明治大学付属明治中学校
明治大学付属明治中学校1912年に旧制明治中学校として神田駿河台の明治大学構内で開校した。戦後は、1947年の新制明治中学校、1948年の新制明治高等学校の発足に伴い、推薦制度による大学までの一貫教育の方針が確立された。2008年に調布市へ移転。中学・高校の多感な時期に、男女が協力し合って生きていくことの意義を学ぶことが重要であるとの考えから、明治大学直系付属の共学校となった。
明治大学への内進率は約90%で、国公立大学進学希望者は、明治大学への推薦権を保持したまま併願可能。私立大学も併願受験の対象となる場合があるが、学部・学科ごとに条件が異なるため、受験には予め明治大学からの許可が必要。7時間目に週1回ずつ英・数の補習講座を設定し、ていねいに基礎力を固めている。「探究」にも力を入れており、高3の「小論文演習」をはじめとして、大学の先生による「高大連携講座」や、法曹入門講座などのサマー・スプリングセミナー、大学の単位として認定される「プレカレッジプログラム」など、付属校としての魅力ある講座も豊富。
1450名収容のホール、2つの体育館、蔵書約6万冊の図書館など、充実した施設がそろっている。英語科教員が1冊ずつ読んで独自のレベル分けをした英語の多読本が約5800冊あり、積極的に活用されている。「質実剛健」「独立自治」という建学精神のもと、紫紺祭(文化祭)、体育祭、東京六大学野球応援、球技大会などの行事や、中学でほぼ100%、高校で90%以上の生徒が加入するクラブ活動も盛んである。