シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

明治大学付属明治中学校

2021年01月掲載

明治大学付属明治中学校【社会】

2020年 明治大学付属明治中学校入試問題より

現在キャッシュレス決済が普及してきており、今後「現金」が使われなくなる時代が来ることも考えられます。そのような中で、キャッシュレス決済に関する課題が残されているのも事実です。そのことに関して、次の文中の「  」の語句について答えなさい。

(問)キャッシュレス決済の消費者にとっての「利点」、およびキャッシュレス決済に関する「課題」をそれぞれ1つ挙げなさい。また、キャッシュレス決済が普及していく中で、上で挙げた「課題」を社会全体において解決していくために、どのような「方法」が考えられますか。あなたの考える具体的な「方法」を30字程度で述べなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この明治大学付属明治中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(利点)現金を数える手間が省け、すばやく買い物ができる。
(課題)データでやりとりされるため、個人情報が流出してしまうおそれがある。
(方法)パスワードをかけることを義務づけるなど、セキュリティ対策を強化する。

解説

買い物をする側の立場で利点や課題を書くこともできるが、小売店など売る側の立場に立って書くこともできる。また、この出題は新型コロナウイルス感染症の流行前に作成された問題であるが、現在であればキャッシュレス社会が感染症予防にもなることにふれる解答もかけるだろう。方法についても、解答例では決済のシステムを提供する側がすべきことが書かれているが、買い物をする側の立場にたって、「パスワードを人に推測されないようなものにする」「何にどれだけ使ったのか自分の情報をチェックする」などの書き方もできる。

日能研がこの問題を選んだ理由

クレジットカードやデビットカード、交通系の電子マネー、スマートフォンのQRコードを使った決済など、現金を使わずに、支払いをすることは今や私たちの日常になりました。受験生である小学6年生も、交通系電子マネーは低学年のころから使っているので、なじみがあるようです。このような世の中の変化を受け、中学入試問題でも、このようなキャッシュレス決済についてはもちろん、貨幣や銀行、身の回りのお金の流れ、お金の歴史などに関する出題が増えてきています。

今回、とり上げた明治大学明治中の問題は、キャッシュレス社会の課題とその対策を問うています。利点や課題をあげるだけであれば、比較的取り組みやすい問題かもしれませんが、課題解決の方法も同時に考えるとなると、どうしたらよいのだろうか?と手が止まってしまった受験生もいたことでしょう。課題解決のためには、政府や企業が取り組まなければならない制度的なことや技術的なことはもちろん、買い物をする側、キャッシュレス決済をする側の立場でできることもあります。「社会全体において解決していくために……」「あなたの考える具体的な方法を……」という問いかけが、受験生が自分自身の行動もふくめて思考することを促し、日常の中にあることがらを社会全体の課題としてとらえるしかけにもなっていたと考えます。社会科は、社会のことがらやできごとについて思考し、探究していく教科なのだということを、入試問題を通じて伝えてくれているともいえます。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。