シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院女子中等科

2021年01月掲載

学習院女子中等科の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.算数や数学では手を動かすことを大事にしよう。

インタビュー2/3

授業では生徒同士で学び合う場面も

この問題は、入学後に学び合いをしていく、というメッセージなのかなと思ったのですが。

豊泉先生 今はコロナのことを考えて行っていませんが、確かにお互いに話し合うということはしています。

コロナ前はどのような実践をしていたのですか。

野本先生 先生によって、あるいは分野によって異なると思います。個人的には学び合いをかなりやっているほうだと思います。今も、必要な時には「相手のほうをあまり見ないで、下を向きながら話し合いましょう」と言って実施することがあります。その中から「ここはなぜ違うのか」という話がおのずと出てきて、1人の生徒が「ここはこうじゃない?」ということを言うと、「そうか」という声がかなり聞こえてきます。
本来、数学の学習は、教員がただ教えるよりも、生徒たちで解法を生み出すべきだと思うので、コロナ禍ではありますが、注意をしながら、うまくそれを活用しながら学びを深めていけたらなと思っています。

豊泉先生 私は昨年、中1の幾何を担当していました。グループ学習のような事例でしたら、図形の平行移動・回転移動のところで実施しました。1人でも解ける問題、1人で解くのは難しいけれどもみんなで話し合えば解ける問題…と、問題のレベル設定を段階的に与えた上で、5、6人のグループで話し合い、解決するという学び方です。

数学科/豊泉 伸之先生

数学科/豊泉 伸之先生

正多面体を製作するなかでも活発に議論

豊泉先生 ここ数年、中1の幾何で毎年実施しているのが正多面体の製作です。教科書にも書いてありますが、自分で作ると、その過程の中で気づくことがあるので、プラバンを買ってきて、生徒全員に配って、3、4時間かけて全種類の正多面体を作ってもらっています。私は、それをグループ活動で行いました。

完成できますか。

豊泉先生 二十面体だったら三角形が20個必要です。B4の紙に三角形、五角形など、多面体を作るために必要なものを用意するところまではこちらで行っています。生徒はそこにプラバンを乗せてなぞって、切り取って、貼る、という作業を行います。作っていく過程の中で、1つの頂点に何個の三角形を集めるとどんな多面体ができるのか。それを見つけてもらうということをしています。また、自分たちで作ったものを見ながら性質を読み解いたり、オイラーの多面体定理のような難しいところまでつなげたりしました。

盛り上がりそうですね。

豊泉先生 例えば、1つの頂点に三角形を6枚集めると、360度になるので空間ができず、多面体は作れそうにないとか。そういうことを自分で発見し、共有するなかで、活発に議論していると思います。

学習院女子中等科 授業製作物

学習院女子中等科 授業製作物

立方体を切断して規則性を話し合う学習も

堀江先生 中1では、メラミンスポンジを実際に切断して、立方体の切断面の形を見たり、どういう規則性があるのか、という話し合いをさせたり、ということもしています。それは、オープンスクールで受験生に披露したこともあります。

豊泉先生 結構スパッと切れますよね。

オープンスクールでは個別に行うのですか。

堀江先生 そうです。受験生同士が知り合いではないので、受験生と保護者で取り組んでいただきます。

豊泉先生 その年に入学した中1がサポートします。

堀江先生 その中1の生徒に保護者の方が学校の様子をお聞きになるなど、会話が弾むこともよくあります。

学習院女子中等科 授業製作物

学習院女子中等科 授業製作物

授業では具体的に見せる工夫をしている

私は授業を担当していて導入の部分が難しいと感じているのですが、先生方はいかがですか。

野本先生 個人的な考えですが、おそらくそこが一番大事な部分ですよね。私は今、高2に微分を教えていますが、文系の生徒は微分法を理解することが難しいようです。そこでタブレットを使い、BがAに近づく動きを目で見てわかるように、という準備をしています。

野本先生は情報科のご担当でもあるので、そういうことはお手のものなのでしょうね。

野本先生 (笑)得意ではない、とは言えないですね。コロナ禍に、なるべく率先して動画を作ろうと思い、パワーポイントを駆使して何十個か、動画を作りました。

動画撮影では生徒の声を生かして改善を重ねた

動画は配信するだけですか。

堀江先生 豊泉先生は、フィードバックをさせていましたよね。

豊泉先生 そうですね。学校として登録しているスタディサプリというアプリにアンケート機能があるので、動画を配信した後にアンケートを取りました。自粛期間中は、配信した動画を視聴することを課題としていたんですね。次につながる内容を扱っていたこともあり、フィードバックが欲しかったので、アンケートに答えてもらうということをしました。

動画は好評でしたか。

豊泉先生 生徒は私が見るとわかっているので、あまり悪い意見はありませんでしたが、当初は2種類の動画を作っていました。ホワイトボードに手で書いたものを上から撮影した動画と、野本先生の話にあったパワーポイントを駆使した動画です。
最初、手書きの動画を配信していたら、「暗い」「画質が悪い」「先生の影が入っていて見えない」などという指摘があり、その声を次の動画撮影に生かしました。「先生の漢字の書き順が違う」などという指摘もありました。そういうところも気をつけなければいけないと、私自身も勉強になりました。

学習院女子中等科 正門

学習院女子中等科 正門

教員の動画作成スキルが上がった

最初は、動画作成についてあまり詳しくない先生もいらっしゃったのでは?

堀江先生 私などもそうですが…。

豊泉先生 いろいろな先生の話を聞きながら進めています。

野本先生 それが功を奏して、普通の授業ができるようになってからも教員がタブレットを教室に持ち込んで、必要なところで動画を活用しています。

堀江先生 私も最近は授業にiPadを持っていくことが増えました。グラフの動きなど、黒板では表現できないものを表現できるのでいいですよね。

野本先生 私は、テスト前に問題集の難しいところ、よく生徒が質問にくるところを動画にして、それを見てもらう、ということをしています。「これは動画にならないのですか?」と言ってくれる生徒がいるとうれしいです。

インタビュー2/3

学習院女子中等科
学習院女子中等科1847(弘化4)年、京都で開講された公家の学習所がその起源。1885(明治18)年に華族女学校開校、創立130年を越える。1906年学習院と合併し、学習院女学部となる。1918(大正7)年に学習院から女学部が分離して女子学習院となる。1947(昭和22)年、宮内省の所管を離れ、私学として現校名に。1999(平成11)年から高校募集停止。
重要文化財でもある鉄製の正門を入ると、四季折々の自然が望める6万6千m2の広大な敷地に女子中・高等科と女子大学の校舎がある。理科・芸術科・家庭科は科目ごとの専用教室があり、コンピュータ室や、2つの体育館、温水プール、テニスコートなど施設も充実。沼津游泳場など校外施設もある。官立から普通の私立として再発足してから70年を越える歴史をもつ。「広い視野、たくましい創造力、豊かな感受性」を教育目標とし、世界的視野に立って、広く国際社会に貢献できる積極的な女性の育成をめざす。同窓会には皇族妃殿下が名を連ねるが、校内は気取らず明るく活発な雰囲気。
実験や実習を多く取り入れた授業を展開。特に創造性に富む表現力、情報を的確に伝える論理的構成力を育てるため、国語の作文、理科や社会のレポート作成などに力を入れる。中1の国語(古文・表現)、中1の数学(数量)・中2の数学(図形)・高1の数学Ⅰ、中1の技術家庭では1クラスを2分割。中1・中2の保健体育(水泳)、中2の技術家庭、中3の社会(公民)では1クラスに2人の教員が入るT.T.の形をとっている。また、英語はすべての学年で少人数制の授業。帰国生を除き、中1・2では均等分割をして基礎力を強化し、中3からは習熟度別授業を行う。高等科ではドイツ語・フランス語も履修できる。高2で文系・理系のコース制を導入。高3では卒業レポートを作成。60%程度が学習院大学・学習院女子大学へ推薦入学するが、最近は国公立大や早慶上智大への合格者も伸びている。海外の大学への進学者も増えている。
校長を科長、ホームルーム担任を主管と呼び、あいさつは、常に「ごきげんよう」である。「ことば」の尊重とともに芸術教育も盛ん。道徳の時間には、正式な作法教育も取り入れている。林間・臨海学校、運動会、文化祭、学芸会、スキー教室など行事も多い。クラブは文化部20、運動部11、同好会3と活発。特にテニス、ブロックフレーテ・アンサンブルは好成績を収める。運動部1と文化部1、または文化部2の合計2つまで入部可。オーストラリアの姉妹校メソディスト・レディーズ・カレッジで英語を学ぶ研修旅行や中3・高2希望者対象のイギリス・イートン校でのサマースクールがある。