シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院女子中等科

2021年01月掲載

学習院女子中等科の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.問題を解く時は、答えを導き出すプロセスを大切にしよう。

インタビュー1/3

「どのように」を説明できない受験生が多く見られた

まずはこの問題の出題意図からお話いただけますか。

野本先生 本校の入試は算数でも「書かせる」というところが特色だと思います。それがなぜ必要か、というと、状況を把握し、それに対してどういう解決策を講じるか、ということは、何にでもつながる能力だと思うからです。自分はどう考えたのか、ということを明確にするために、入試でも「書かせる」ことを大切にしています。
この問題は、他の人が書いた答案を明確に読み解く能力を問う問題でした。どんな問題にも自分の考えと違う方法があります。今回は単純な計算問題ではありますが、大きく2通りの考え方を示しました。その理由は、2通りあればどちらかは自分の考え方と違うと思ったからです。

「最初にどこでどのように」というところに下線が引いてあります。指示通りに、きちんと答えられていましたか。

野本先生 受験生の皆さんの答案を見ると、どこが違う、というところはほぼ皆さんわかっていらっしゃる。ただ、どのように間違えているか、というところはいろいろな解答がありました。どのように、を説明できない受験生が多く見られました。

数学科・情報科/野本 悠太郎先生

数学科・情報科/野本 悠太郎先生

実際の仕組みをしっかり考えてほしい

野本先生 違うことが書いてある行をまるまる解答用紙に書いている受験生がいましたが、問うているのは、そこがどのように違うのか、ということです。その説明ができていても、説明の仕方(書き方)はいろいろでした。
例えば、Aさんの時間が違う、というところは、「単位の換算が違う」と書くのが一番書きやすいと思いますが、「本当は0.3×60だから18」という解答が多かったです。よく書けていると思ったのは、「1時間を100分だと思ってしまっている」というところまできちんと考えて説明できている答案です。

Bさんのほうはいかがでしたか。

野本先生 目がいくのは、掛け算になっているところです。本当は割り算なんですよね。単位まできちんと書けている受験生がたくさんいました。3.6kmと60分だから分速はいいとして、「3.6kmなのに最後がm(メートル)のままです」というところまで書けていた受験生が、こちらの想定よりもたくさんいらして、そこまで読み解けているんだな、と思いました。

採点していて気づいたことはありますか。

野本先生 想定していたよりもきちんと答えられていて、うれしかったです。ただ、普段の型にはめた数式の計算をするだけで、実際の仕組みをしっかり考えていない、ということが少しあるのかなと思いました。

Bさんの考え方で解いている受験生が多かった

解答欄の下の余白スペースは使われていましたか。

野本先生 はい、使われていました。少し意外だったのは、Bさんの直しに使われている受験生が多かったことです。個人的には、後半まで正しく解いている「Aさんの考え方」を利用して計算する方が多いだろうと思っていました。0.3時間を18分にして、「18分前」と答えるのが早いかな、と思ったのですが、多くの受験生が「Bさんの考え方」で、もう一度速さを出すことからやり直して、時間にする方法で解いていました。

普段、子ども達を見ていると、分速に直して計算する子が多い印象です。整数のほうが身近なのかもしれません。道のりをkmに直す子も少ない印象です。

堀江先生 時速だとkmで、分速だとm。そういった感じでしょうか。

そうかもしれませんね。時速をmで表現することが、問題集にあまりないからかもしれません。

堀江先生 Bさんは、時速と分速の関係を間違えていました。そこはたぶん一生懸命勉強して来ているところですよね。だから、Bさんのほうが見つけやすいのかもしれません。

学習院女子中等科 図書室

学習院女子中等科 図書室

問題集の解答を読み解く力をつけよう

今回のような他人の解答の間違いを説明する、という問題は、かつて出題されていないと思うのですが、出題に至るきっかけがあったのでしょうか。

野本先生 数学科全体として何かあった、というわけではありません。ただ個人的に、問題集には解答がありますが、本校の生徒に「解答の意味がわかりません」という子が増えてきたような気がしていました。問題集の解答は、最短距離での答えが出ているので、理路整然とつながっていくはずなのですが、つながらない生徒が意外と多いなと感じたことから、他の人の解答をしっかり読み解くことはとても大事な能力なのではないかな、と考えたことがきっかけです。

堀江先生 ずいぶん前に奇数、偶数の説明をさせる問題を出したことがありますが、説明させる問題を出すと、採点が大変なんですよね。ただ、野本先生の話の通り、生徒の力を伸ばす上でも何かを説明させることは必要だと思います。

式と式との行間がわからないということですか。

野本先生 そういう場合もあります。自分で問題集の問題を解いて、解答を見て答え合わせをします。その際、解答とプロセスが違った時に、自分の間違いを見つけられずに持ってくる生徒が多いのです。解答を読む力は大事だと思います。

採点側が読み解けるレベルであれば問題ない

記述式の問題では、答えが間違っていたとしても、プロセスが合っていれば部分点をもらえるのでしょうか。

堀江先生 はい。

逆に答えは合っていても、プロセスが間違っている場合はいかがでしょうか。

堀江先生 2回間違いが重なって、たまたま正解になっている場合は、正解でもあまり点数を差し上げていません。

答えだけを書いているというケースもありますか。

堀江先生 「プロセスを書いてください」ということは普段から申し上げているので、何かしらのことは書いています。よく、受験生の保護者の方からご質問を受けるのは、「どこまで書かなければいけないですか」ということです。それは小学生ですので、問題集の解答のようなきちんとした説明は求めていません。私たちが読み解ける答案であれば、それが式であっても筆算であってもよいということです。私たちはかなりよく読んでいますので、自分の考えを伝えるという意識をもって書いていただければ大丈夫です。

野本先生 時々数式だけを書いてくる受験生がいます。どこで間違えているのかわからないことがあります。今回の問題でも、ここでこういうことをしている、ということを書いてくだされば、ここで間違えたんだな、ということを見つけられます。Aさん、Bさんの解答が、伝えるサンプルとしても役立つかなと思って、今回、この問題を作ってみました。

数学科/堀江 克人先生

数学科/堀江 克人先生

入試問題は問題用紙3枚に収まるように作成

大問の数は決まっていないのですか。作図もある時とない時がありますよね。

堀江先生 分野は広く全般的に出したいと思っています。ただ、一般入試では問題用紙3枚というところを崩していません。その紙面に収まるかどうか。50分で解けるかどうか。時間は厳しいところもあるのですが、その2点を前提に何問出せるかを吟味しています。
また、作図を出すにしても、出さないにしても、何かしら手を動かしてもらう問題が入っていることが多いのではないかと思います。

受験生はすべての問題に手をつけているという印象ですか。

堀江先生 手はついていますね。なるべくやさしい問題から順に出題したいと思っているのですが、紙面の関係などで、多少入れ替えることもあります。

インタビュー1/3

学習院女子中等科
学習院女子中等科1847(弘化4)年、京都で開講された公家の学習所がその起源。1885(明治18)年に華族女学校開校、創立130年を越える。1906年学習院と合併し、学習院女学部となる。1918(大正7)年に学習院から女学部が分離して女子学習院となる。1947(昭和22)年、宮内省の所管を離れ、私学として現校名に。1999(平成11)年から高校募集停止。
重要文化財でもある鉄製の正門を入ると、四季折々の自然が望める6万6千m2の広大な敷地に女子中・高等科と女子大学の校舎がある。理科・芸術科・家庭科は科目ごとの専用教室があり、コンピュータ室や、2つの体育館、温水プール、テニスコートなど施設も充実。沼津游泳場など校外施設もある。官立から普通の私立として再発足してから70年を越える歴史をもつ。「広い視野、たくましい創造力、豊かな感受性」を教育目標とし、世界的視野に立って、広く国際社会に貢献できる積極的な女性の育成をめざす。同窓会には皇族妃殿下が名を連ねるが、校内は気取らず明るく活発な雰囲気。
実験や実習を多く取り入れた授業を展開。特に創造性に富む表現力、情報を的確に伝える論理的構成力を育てるため、国語の作文、理科や社会のレポート作成などに力を入れる。中1の国語(古文・表現)、中1の数学(数量)・中2の数学(図形)・高1の数学Ⅰ、中1の技術家庭では1クラスを2分割。中1・中2の保健体育(水泳)、中2の技術家庭、中3の社会(公民)では1クラスに2人の教員が入るT.T.の形をとっている。また、英語はすべての学年で少人数制の授業。帰国生を除き、中1・2では均等分割をして基礎力を強化し、中3からは習熟度別授業を行う。高等科ではドイツ語・フランス語も履修できる。高2で文系・理系のコース制を導入。高3では卒業レポートを作成。60%程度が学習院大学・学習院女子大学へ推薦入学するが、最近は国公立大や早慶上智大への合格者も伸びている。海外の大学への進学者も増えている。
校長を科長、ホームルーム担任を主管と呼び、あいさつは、常に「ごきげんよう」である。「ことば」の尊重とともに芸術教育も盛ん。道徳の時間には、正式な作法教育も取り入れている。林間・臨海学校、運動会、文化祭、学芸会、スキー教室など行事も多い。クラブは文化部20、運動部11、同好会3と活発。特にテニス、ブロックフレーテ・アンサンブルは好成績を収める。運動部1と文化部1、または文化部2の合計2つまで入部可。オーストラリアの姉妹校メソディスト・レディーズ・カレッジで英語を学ぶ研修旅行や中3・高2希望者対象のイギリス・イートン校でのサマースクールがある。