出題校にインタビュー!
頌栄女子学院中学校
2020年12月掲載
頌栄女子学院中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.安易な部分点はねらわない
インタビュー3/3
生徒が説明する方が他の生徒も理解しやすい
授業の様子を教えてください。
河野先生 教員が説明しすぎないように心がけています。私は生徒に説明してもらうことも取り入れています。私がよどみなく説明するよりも、生徒がつまずきながらでも説明する方が、他の生徒たちにとって腑に落ちやすいように感じます。よどみない説明は、聞いている生徒の頭の中を“よどみなく”通過してしまいます。わかったつもりになりますが、「なぜだろう?」と考えるポイントを素通りしがちです。
生徒が説明すると、「ここまではわかったけれど、この先はわからないから、みんな教えて」と呼びかけたり、「私、わかったからやってみせるね」と応えたものの「ここ、おかしいよね」と気づいたり、「それ、どうして?」と聞かれて答えに窮したりします。でも、その方がわからないところがあぶり出されて、生徒にとってプラスになるように思います。問題数はこなせませんが、そのくらいのペースの方が理解するにはちょうどいいのかもしれません。
頌栄女子学院中学校 グローリアホール
根拠が説明不足ならわかったことにならない
中学受験ではひと言付け加えるのは難しくても、中学・高校ではそれができるようになるために、どのように鍛えているのですか。
河野先生 定期テストは全学年、記述問題を出題しています。式の羅列では得点できません。学年が上がって問題がより複雑になっていくと、説明せざるを得なくなります。そうして説明できるようになっていくように思います。やらされる学習では通用しないことは感じるのではないでしょうか。
数学ではよく判別式を使いますが、何のために使っているかわからない解答は点数をあげません。たとえ使うのが合っていても、その根拠を説明していなければわかったことにならないからです。記述問題は部分点でかせごうとしますが、安易な部分点ねらいに走らせない、逃げないようにしています。
一方、答えだけで正誤を判断する問題も出しています。答えまで出せる、正解できる力もきちんと評価しています。
やり取りがある授業には発見がある
新型コロナウイルスの影響で、授業の形式や生徒さんの様子など何か変化はありましたか。
河野先生 オンライン授業を経験したことで、本来の学校の学びの長所を再認識しました。それは教員だけでなく生徒もでしょう。だからこそ、生徒に説明してもらうと、コロナ前よりも生徒が積極的に参加してきます。
塾でも動画配信をしましたが、何も伝わっていないことにしばしば気づかされました。
河野先生 スムーズに進むため、終わったときは“いい感じ”と思うのですが、後日確認すると、できるようにならなかったということが少なくありません。
対面でもオンラインでも、やり取りする場面を設けて、子どもが自分で考えるようにしなければいけませんね。
河野先生 やり取りがあると発見があるから、おもしろいですよね。授業は“生もの”だとつくづく感じます。
一方、オンライン授業がプラスに働いた教科もあります。例えば美術は、ウェブ上で作品を見せると、即座にコメントを入れることができます。リアルな授業ではそれはできません。自分のペースで進んだ方が理解が深まり、通常よりもいい結果が出ている教科もあります。
頌栄女子学院中学校 校舎内
学校は失敗する場所。失敗が成長につながる
今年度は学校行事も大幅に変更されたのではないですか。
河野先生 毎年6月に開催する合唱コンクールは中止になりました。9月の研究発表会(コ・ラーナーズ・デイ)は内部のみで行いました。ただ、探究学習の要素を加えた個人研究として、これまでとは違う形式で発表しました。運動会も今までと形を変えて実施するなど、工夫をしながらできることはできるだけやるようにしています。
学校は、うまくいくための場所ではなく「失敗する場所」です。失敗した数だけ、それを乗り越え、次に向かうことができます。合唱コンクールは人間関係のトラブルの連続です。部活動も目標に対する部員の温度差が生じることはよくあります。そうした良くも悪くも「いろいろなこと」が、生徒の成長には欠かせません。これも登校して生徒が集まる学校だからこそできる経験でしょう。
小さな失敗の積み重ねは、大きな失敗の予防にもなります。親御さんには、「ご自身の失敗談をお子さんに話してください。『自分だけではない』と安心しますから」と促しています。本校は生徒に寄り添い、問題解決していくスタンスです。ただし、面倒見はよくても、すべて手取り足取りしてしまってはいけないと肝に銘じています。
頌栄女子学院中学校 グラウンド
中高6年間で生涯学び続ける土台を作る
中高6年間でどんな数学の力をつけてもらいたいと思っていますか。
河野先生 本校の卒業生はそれぞれ自分が思い描いた道をつかみ取っていきます。教員はそれを全力で応援します。社会人になって数学を直接的に活用することがなくても、考える基盤としての数学、教養としての数学を全員に身につけてもらいたいですね。
これからは生涯学び続ける必要があります。そのための土台となるのは高校までの学習です。高校まである程度しっかり学んでいれば、社会人になってから1から勉強するよりも、土台の上に容易に組み立てることができるでしょう。人生を前向きに、豊かに歩んでいくための力を自分のものにすることが、6年間の目標です。
インタビュー3/3