シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2020年12月掲載

頌栄女子学院中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.数学は実は覚えることが少ない教科

インタビュー2/3

大問1は難しい問題を出しているつもりはないけれど…

算数の入試問題ではどんなことを大切にしていますか。

河野先生 入試問題は、入学してから勉強していくための土台が備わっているかどうか、一緒に勉強していけることを確認するためのものととらえています。また、「中学生になったら、もっといろいろなことを勉強したい!」という意欲のある、のびしろがあるお子さんに入学してもらえるような問題づくりを心がけています。

大問1の小問集合問題から、なかなか難しい問題がありますね。

河野先生 大問1はできてほしい問題を入れているつもりです。でも、答案を見ると想定通りにはいかないと感じます。
考えもせず機械的に答えられる問題は出したくありません。難問を出しているつもりはありませんが、ちょっと複雑なところまでやりきれる受験生が減っているとは感じます。

40分の入試時間は算数としては短いですね。

河野先生 面接があるので、これ以上長くできないという事情があります。じっくり考えてもらうには40分では厳しい。そうなると、差をつけるには大問1の難易度を調整する必要があるのかもしれません。

頌栄女子学院中学校 礼拝堂

頌栄女子学院中学校 礼拝堂

途中式や考え方を書かせる問題を出題

毎年「答え方の求め方も説明しなさい」という出題もあります。受験生のどんな力を見ているのですか。

河野先生 本校では問題を解く過程を説明する力を大事にしています。中学入試でも、どのように解こうとしているのか、自分の考えを他者に伝える記述力がどれだけあるかを見ています。
「○○が××だから△△で~」というように、なぜその式を立てたのか説明してもらえるとうれしいのですが、時間の制約もあり、そこまでは到達できないだろうという前提で出題しています。説明するひと言がなくても、こういうことを求めようとしたのだろうと、こちらが読み取ることができれば部分点をあげています。

過去問を見ると、難しいから記述にしているわけではないと感じます。どのように記述問題を選定しているのですか。

河野先生 記述問題は後回しにしがちですが、難易度が高いわけではありません。受験生が説明できるレベルのものを記述問題にしています。
どうやって問題を解いたのか、途中式や考え方の一部でも書き記してくれればと思います。ただし、公式に当てはめただけ、説明なしの図をかいただけでは説明とはみなしません。

受験生の取り組み具合はいかがですか。

河野先生 時間が足りずに手がつけられなかった受験生もいますが、何とか伝えようとしている受験生もいます。

「記述だから難しい」と思い込まずに、取り組んでほしいですね。

頌栄女子学院中学校 校舎内

頌栄女子学院中学校 校舎内

女子は立体図形が苦手?

大問2の立体図形(三角すいに内接する球)の問題は、必要なところに焦点を当てた印象的な問題でした。受験した子どもも「頭に残った」と言っていました。

河野先生 立体図形の切り出しは入学してからかなり取り組みます。

よく「女子は立体図形が苦手」と言われますが、これを否定するデータがあります。ただ、立体図形が話題になるのは女子校の入試問題です。女子は「苦手だけれど、やらなければ」と思っているのかもしれません。

河野先生 ということは、入試に出さないと勉強しなくなるかもしれませんね。図形をイメージする力は大切にしたいので、空間図形の問題は出したいですね。
IT機器があっても、何とかしようと頭を使い、手を動かして紙に書く、そうした力は身につけてもらいたいと思います。

頌栄女子学院中学校 校内

頌栄女子学院中学校 校内

「できた」という体験を積ませたい

河野先生 今の子ども達は、教わったことを「やらなければ」という意識が強いのか、教わったこと以外はやろうとしない傾向があります。なぜそうなるのか、考え方を広げたり深掘りしたり、自分の感性で、自由に発想してほしいですね。
苦手な生徒は問題集をこなすことに終始します。真面目なので、できなかったところを何度も繰り返し解くのですが、それでもできないということは、わかっていないということです。けれど、そうした学習方法から抜け出せません。解法のパターンを覚えるけれど応用が利かない。そんな自分を放置しているのです。

数学は使う材料は限られていて、必要なところに必要なものを使えばいいので、実は覚える労力が少なくて済む教科です。ところが、「覚えなければ」という考えにがんじがらめになっている生徒が多い。そうした考え方は、中学受験の勉強でも邪魔をしているかもしれません。
「ここに気がつけば使えたんだ」という「できた」経験をできるだけ積ませてあげたいと思っています。

インタビュー2/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。