シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2020年12月掲載

頌栄女子学院中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.パターンで解くことにこだわりすぎない

インタビュー1/3

「自分で考える」が当たり前にできる

河野先生 この問題は、「パターンでは解けない問題」をイメージして作問しました。「知らないからできない」ではなく、知っていることを活用して自分で考える、それが当たり前にできるかどうかを試しました。

受験勉強が“こなす”“やらされている”学習になっていないでしょうか。それでは勉強するのが苦しくなります。よくわからないままパターンで覚えるのではなく、身につけたことを活用すれば解けることに気づいてもらいたいですね。

進路指導部長 数学科/河野 敏子先生

進路指導部長 数学科/河野 敏子先生

日常会話とは違う算数的な表現が求められる

正答率はいかがでしたか。

河野先生 それぞれよくできており、全問正解もかなりいました。想定していたよりできていたと思います。

貴校は(イ)のような文章記述の問題を出していますね。

河野先生 例年、短い文章を書かせる問題を出題しています。無答は全体でも1名のみでしたから、伝えようとする姿勢を感じました。

具体的にどんな解答がありましたか。

河野先生 (イ)の解答は会話の中に入れる文章です。言い回しはそれぞれ違い、国語的に言葉尻を気にした答案も見られました。
説明不足できちんと伝わらず、部分点に留まった解答もありました。この場合、単に「多い」だけでは不十分です。2人でも多いと受け取れなくはないので、「最も多い」などとしてほしいところです。つまり、「最頻値」ということがわかっているかどうかです。「過半数」と表現した受験生もいました。どんな言い回しであれ500円が最頻値であるとわかっていることが伝われば正解にしました。

日常会話では算数的な表現はあまり意識しないかもしれません。

河野先生 子どもは「みんな○○だから」と言いがちです。そんなところも作問のヒントになったかもしれません。
他者にきちんと説明できないと、本当に「わかった」ことにはなりません。それは授業をしていても感じます。手は動いているのですが、条件反射的に式を書いているため、なぜその式を立てたのかわかっていないことがあります。「なぜ」を言葉で表現することは大事だと感じます。

誤答の傾向はありましたか。

河野先生 (ア)の誤答で一番多かったのは「1500(円)」でした。おそらく、500円からどれだけ多いかを要領よく計算しようとして、正確に処理できなかったのでしょう。

頌栄女子学院中学校 正門

頌栄女子学院中学校 正門

生徒も親も「平均点」を意識しすぎ

河野先生 この問題はデータを正しく理解してほしいという思いもあります。生徒や親御さんは定期テストの成績に関して「平均点」をとても気にします。でも、平均点と比べてもあまり意味はありません。平均値のトリックに引っかかって間違った判断をしているのではないかと気になっています。

平均値は日常的によく使われます。例えば、日本人の平均年収436万円(2019年)といっても、一部の高所得者が平均値を押し上げています。

河野先生 数字からはそのようには見えませんよね。大人でもだまされます。
大学入試の成績データも、ありとあらゆる学校の生徒をひっくるめて出されます。そうしたデータが、果たして自分にとって必要な情報でしょうか。そうしたところをきちんと見極められる、生きる力にも通じる力を身につけてもらいたいと思っています。

親御さんも意識を変えてほしいですね。「平均点を超えられなかった」と、平均点だけを成績の基準にすると、平均点を超えることが目的にすり替わってしまいます。平均点は変動しますし、平均点が同じでも点数の分布が違うこともあります。テストの難易度や点数の分布を見極めた上で、どのように力を伸ばすのかを考えるのがいいでしょう。

頌栄女子学院中学校 校舎

頌栄女子学院中学校 校舎

インタビュー1/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。