シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

頌栄女子学院中学校

2020年12月掲載

頌栄女子学院中学校【算数】

2020年 頌栄女子学院中学校入試問題より

頌子さんがクラスメイト10人におこづかいをいくらもらっているか調査をしたところ、調査結果は次のとおりでした。

500円、500円、500円、500円、500円、500円、1500円、2000円、3000円、10000円

現在おこづかいが500円の頌子さんは、この調査をもとに「みんなは自分よりもっとおこづかいをもらっている。調査した10人の平均を考え、(ア)円へ値上げしてほしい」と家族に願い出ました。
母親からは、「10人だけの調査でみんながたくさんもらっていると言うのはおかしい」と、値上げに反対されました。
父親からは、「調査結果から(イ)だから、500円がちょうどよい」と説明され、値上げに反対されました。
この様子を見ていた姉は、「極端(きょくたん)に多い金額の人を除いて出した平均を考慮(こうりょ)して、(ウ)円に値上げしてあげてはどうか」と言ってくれました。

(問)(ア)と(ウ)にあてはまる数、および(イ)にあてはまる文を答えなさい。なお、(ア)と(ウ)には、次の値から一番近いものを選んで答えなさい。

500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この頌栄女子学院中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(ア)2000 (イ)(例)人数が最も多いのが500円 (ウ)1000

解説

(ア)500×6+1500+2000+3000+10000=19500(円)・・・・・・10人のおこづかいの合計
19500÷10=1950(円)・・・・・・10人のおこづかいの平均
選択肢のうち、1950に一番近い数は2000なので、(ア)に入る数は2000となります。

(イ)「500円がちょうどよい」という意見に合う理由を考えます。
調査結果を見ると、「500円」が全体の半数以上の6人いるということを理由にしたと考えられます。よって、(イ)には「人数が最も多いのが500円」という趣旨の説明が入ります。

(ウ)「極端に多い金額」とは「10000円」のことを指していると考えられます。
19500-10000=9500(円)・・・・・・10000円の人を除いた、9人のおこづかいの合計
9500÷9=1055.5・・・(円)・・・・・・9人のおこづかいの平均
選択肢のうち、1055.5・・・に一番近い数は1000なので、(ウ)に入る数は1000となります。

日能研がこの問題を選んだ理由

「おこづかいを増やしてほしいの!」
頌子さんのそんな叫びが聞こえてくるようですね。頌子さんは、クラスメイトのおこづかい事情を調査・分析して、両親に働きかけています。すごい行動力です。
頌子さんは、クラスメイト10人のおこづかいの平均を、おこづかいの値上げが正当であることの根拠にしています。それに対して、頌子さんのお父さんとお母さんは反対の姿勢で、お姉さんは頌子さん寄りで値上げを応援しています。4人全員が感情的ではなく、調査結果をもとにして理知的に会話していることも、この問題のおもしろさの一つといえそうです。

この問題の背景にあるのは、統計学の考えです。
登場人物4人の考えには、平均値、最頻値、サンプル数、外れ値といったものが隠れています。もちろん、この問題に取り組むときに「統計学とはどのような学問か」や「最頻値とは何か」ということを知らなくても、問題に取り組んで答えを導くことができます。むしろ、問題に取り組みながら、最頻値やサンプル数、外れ値といった発想が自然と実感できるつくりになっています。
統計学の考えは、情報化が進む現在では、より重要度が増してきています。そこで育めるのは、いくつものデータをさまざまな角度からとらえ、課題を見つけたり、解決したりしていく力です。新学習指導要領の中でも、算数・数学で統計学がより重要視されています。
この問題は、「おこづかいの値上げ交渉」という子ども達に身近な題材で、統計学という高等教育での学びを実感できる問題ということができそうです。
このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。